はじめに
皆さんのイメージ通りかと思いますが、コンサル業界内では転職話は珍しいことではありません。
コンサルタントとして活躍する方の多くは、
「所属するコンサルティングファームに関わらず、自分自身の能力1つでクライアントへ成果の創出ができる」
という自信を持たれているのではないでしょうか。
そのため、他業界と比較すると、コンサルタントの多くは
「所属先のファームに、絶対所属し続ける」
事にはあまりこだわりがありません。
余談ですが、私自身も20代の内に2回ほど転職経験があります。日本の中途市場における一般的な転職回数や他業界の動き方と比較しても「そんなに・・」と思われるかもしれません。しかし、コンサル業界では私の転職回数をそこまで気にする人はほぼおりません。
感覚としては、普段からプロジェクトごとにクライアントは異なり、またチーム組成・解散を繰り返すプロジェクトワークの延長として所属ファームも変わった・・・、程度の感覚に近しいのではないでしょうか。
その場合、このような疑問が別で出てくるかもしれません。所属ファームに関わらず、プロジェクトごとにクライアントは異なり、またチームメンバーも異なるのであるとしたら「なぜわざわざファームを変えるのか?」。今回は、その典型的なコンサルの転職理由をお伝えしたいと思います。
他業界への移動
今回は「なぜわざわざファームを変えるのか?」に焦点を当てることから、コンサル業界内での転職の話を中心にお伝えするので、他業界への移動は、少し触れる程度に留めたいと思います。
これもまた皆さんの想定に近しいかと思いますが「他の人より3倍速で成長をしたい」、「起業する為の実力と人脈を身につけたい」「海外MBAを取るためのステップとしたい」というように、元々、長くは続けない前提でコンサル業界に転職される方が一定数います。
一方で「忙しさとプレッシャーで疲れた」「役職と自身の能力との乖離に耐えられない(もうコンサルとして成長は難しいかも)」、あるいは「プロジェクトを通じて、やりたいことが見つかった」というように、思わぬ理由でコンサル業界から転職される方もいます。
個人的な感覚としては、意外と後者の方が多い感覚を持ちます。多分ですが、コンサル業界に入られる前から、やりたいことを上手く見つけられている方は少ないのではないでしょうか。その少なさが、多様な業界やテーマ(戦略立案、組織改革、M&A、物流改革、海外市場調査、等)等に触れられるコンサル業界への転職動機の裏に背景として存在しているかもしれません。
業界内での移動(ラテラル(Lateral)の転職)
コンサル業界特有の単語のため、耳慣れないかもしれませんが、業界内での転職をラテラル転職と呼んでいます。転職エージェントの方とは、「ラテラル人材を中心に積極採用しているので、よろしくお願いいたします」といった会話をする程、一般的な用語ではないでしょうか。
ラテラル転職においては、大きく理由は3種類程度に整理されます。
1つは「処遇・待遇面」を理由とした転職です。要はコンサルティングとは、どこに所属してもできるし、テーマやクライアントは異なるものの「クライアントのイシューを解く」という点では、どのファームでも同じと捉えて、転職をする方々です。最もコンサルティングの仕事を抽象度高く捉えており、同じ仕事なのであれば、処遇・待遇面の良いファームへ所属したい、と考えます。自分に自信のある人ほど、そのように考える傾向が強いのではないでしょうか。
次に、「成長・能力面」を理由とした転職です。
前述の「クライアントのイシューを解く」という点を一段具体化し「イシューをどのように解くのか?」という点でファーム間に違いがあると捉えて、転職をする方々です。ファームごとに得意とする解き方や、知見のある産業、テーマは異なります。その異なる得意領域を学び、更にコンサルタントとしての能力を磨くことを目的に転職をします。
例えば、コスト削減と言えばA社というように、業界内でも領域別に強いファームはある程度知られています。そして、もしコスト削減系のプロジェクトを得意としたい場合はA社を目指すことになります。尚、A社でコスト削減系を中心的に取り組んでいたチームが監査法人系ファームに移ってしまった・・・ということもあるので、常に最新の業界動向をエージェントと連携して知っておくことの価値は高いです。
最後に「人材面」を理由とした転職があります。
前述の「イシューをどのように解くのか?」と、少しは関係をしますが「誰と一緒に働くか?」はクライアントへの価値提供を考えると重要な要素となります。忌憚のない意見を交換できる慣れ親しんだ関係の中で、過去のこのプロジェクトに近いよね?あの資料ない?、といった暗黙的な共有された共通経験を持つ方が、クライアントへ価値提供の効率性は高まります。尚、この概念に基づき、一定役職以上のシニアと複数人のジュニアがひと固まりとなって転職する「チームムーブ」が行われています。
最後に
今回は、「なぜわざわざファームを変えるのか?」に焦点を当てて、お伝えしてきました。
改めて思うのが、プロジェクト単位でチーム組成し、そして解散することを繰り返すコンサルタントの考えや動き方は、他業界と大きく異なるのではないかという点です。何が良くて、何が悪いという軸で判断する話ではないのですが、皆さんも、そのようなコンサルタントの価値観やキャリア形成の仕方に興味を持たれたのであれば、ぜひ挑戦をしてみる価値はあるかと思います。