はじめに
コンサルティングファームにおける働き方改革の取り組み状況は過渡期と言えるのではないでしょうか。
皆さんにとってはイメージ通りかもしれませんが、残業代のために残業するという発想はコンサルティング業界には、ほぼありません。
また、「長時間労働=生産性が低い、能力が不足している」という捉え方をする方が大多数となります。
そのため、付加価値の高い業務に自身の時間を集中的に使用し、自身の役割や立場に見合う時間当たりの生産性を最大化する。そして、その結果として労働時間が減少していく。この一連のメカニズムを実現させる"働き方改革"に対して、ポジティブに捉えるコンサルタントを多く見てきました。
意外かもしれませんが、皆さんが思う以上に働き方改革は意識され、実行されているのが現実ではないかと思います。
一方、コンサルティング業務においては、短期間で質・量ともに膨大な成果物を生み出す"馬力"を必要とする場面が出てきます。働き方改革の結果、比較的少なめの労働時間で仕事を続けているコンサルタントたちを見ていると、有事における長時間労働をいとわない粘り強さや、やり切る底力が落ちつつあるな、という印象も持ちます。実態として、有事の発生が見込まれるプロジェクトへアサインするかどうかをコンサルタントが慎重に選んでいるケースが増えてはいます。
上述の話は1例ではありますが、働き方改革は、短期的にはQOLを上昇させるものの、中長期的にはネガティブな影響を与えていくのではないか、というのが私個人の見立てです。あくまで私個人の見立てではありますが、今回は、この働き方改革の先にあるコンサルティング業界の将来像、そして働き方のイメージアップが皆さんとできればと思います。
コンサルタントの経験が変わる
実務上、働き方改革の実現には、プロジェクトマネージャーのソフトパワーが重要な役割を果たします。
つまり、プロジェクト初期段階の仮説、並びにスコーピングを実施し、プロジェクト中盤には手戻りなくワークプランを設計し、適切なレビューを実施する力です。
そして、プロジェクト後半にかけて、クライアントの期待値を把握した成果物を創出することで、余計な手間や感情的なもつれが発生することがなく、プロジェクトが終了していきます。
そこには、その良し悪しは別として、以前のコンサルティングファームで見られた、修羅場体験を通じた短期間での爆発的な成長は存在しません。成長スピードも並みのまま、言われたままに上手くプロジェクトを遂行し続ける量産型コンサルタントが増えていくことが想定されます。QOLは非常に良くなっているでしょう。
コンサルティング内容が変わる
量産型コンサルタントは、曖昧なイシューを解いていく能力を磨くような経験を持つことが少なくなります。そのような良質な経験が少なくなっていくことに伴い、オーダーメイド的にイシューベースでクライアント状況をみつつ、プロジェクト設計や能力を持つ人は少なくなります。
結果、ファームとしてはソリューション・オファリング・ツール、等々と色々な定義はありますが、そのような画一的なサービスを増やさざるをえなくなる状況となります。
つまり、誰が取り組んでも同じような結果を生み出すサービスの開発です。そして、このようなサービスを弊社は揃えているので、今回適用したいサービスを選んでくださいといった、ビジネスになっていくことが想定されます。
クライアントの接し方が変わる
適用したいサービスをクライアントが選んでください、というスタンスでサービスを展開し始めると、クライアント自身に変化が生れることが想定されます。
コンサルティングサービスを、イシューベースで依頼する流れではなく、先ずはクライアント内でイシューを特定し、適切なサービスメニューを持つ、コンサルティングファームを選択していく流れになっていくことが想定されます。
ファーム内でのマネジメントの仕組みが変わる
そして、クライアントがコンサルティングファームに期待する役割が変わると、その役割を更に効率的に運用するためにファーム内部のマネジメントの仕組みが変化していく可能性があります。
採用される人材像、評価の観点、報酬水準、教育内容、そして働き方といった観点で、現在のコンサルティングファームとは異なる事業運営になっていくことが想定されます。
最後に
そして、マネジメントの仕組みが変わることで、益々、量産型コンサルタントが強化され、上述のサイクルが強化されることとなります。少し、極端な話のように聞こえたかもしれませんが、現在も拡大し続けるコンサルティング業界の一部では既に起きています。そのため、全くの妄想という話ではなく、コンサルタントによっては目の前で起きている現実となっています。
働き方改革自体は悪いとは思いません。行き過ぎた働き方や、無理・無駄は省いた方が良いかと思います。しかし、その先にある上記のような可能性を考慮しつつ、上手くコンサルティング業界ならではの働き方を再考していくことが重要と考えています。現在、ある意味岐路に立つコンサルティング業界ではありますが、皆さんがコンサルティング業界のキャリアを選択する際にはこのような時勢の影響も参考にしていただけると良いかと思います。