はじめに
正直ベースに書いてしまうと、偏差値の高い大学を出ていることは必須ではありません。但し、ほぼ全てのTier1の戦略ファームは、足切りとして大学名を利用しているかと思います。更に踏み込んだ戦略ファームの中途採用担当の立場で話すと、各エージェントから紹介を受けるに際して、夫々のエージェントの得意不得意を見極めた上で、紹介して頂くに際して応募者に求める諸条件をオフラインで伝えています。
当然、この諸条件は各ファームの特色や"旬"なソリューションにより異なります。英語が必須条件となるA社、ダイバーシティの一貫で女性コンサルタントを比較的甘めに評価しているB社、デジタルでの事業経験があると優遇されるC社というような例が、パッと思いつくだけでも挙げることが出来ます。各ファームは、適宜、強化していきたい領域やテーマをエージェントへ伝えており、結果、各ファームが判断する以前にエージェント内で誰を紹介すべきか?のスクリーニングがなされています。明文化された契約は締結しておりませんが、戦略ファームの採用機能の一部を分担頂いている形となります。
また、エージェントによっても懇意とする戦略ファームは異なります。その為、複数のエージェントと関係を持ちつつ転職活動を進められている候補者の方は多いかと思いますが、応募の段階においては、どのエージェントを通じて応募すべかの見極めは必要となります。その選択次第で、普段であれば偏差値の高い大学を1つの足切り条件としている戦略ファームでのコンサルタントの道が開かれることも起きます。
誤解を招く言い方になると申し訳ありませんが、総合系・旧会計系のファームへの転職であれば、偏差値は条件として非常に緩く設定されていると思います。一方で、戦略ファームになると、クライアントからの見え方や受験競争を勝ち抜いた事実に基づくメンタルや学習習慣が身についているであろう・・・といった様々な理由から、その点はしっかりと見られている感覚を持ちます。
戦略ファームにおける採用の実態
それでは、1例として、偏差値の高い大学を出ていなくても戦略ファームにおいてコンサルタントになる上で可能性の高い道を紹介したいと思います。エージェントは正規応募者としてコンサルティングファームの採用システムへ登録する前に、懇意とする戦略ファームへカジュアル面談の打診を行う場合があります。このカジュアル面談が、ある意味大学におけるAO入試的な位置付けで運用されている側面もあることから、1つの道として可能性があるのではないでしょうか。
皆さんもご存知かと思いますが、カジュアル面談とは、評価は横に置いておいて、先ずはお互いにもっと良く知り合う機会を設定しましょう、という建前で行われています。戦略ファームにおけるカジュアル面談における特徴としては、戦略ファームの面接の代名詞ともいえるフェルミ推定を代表としたケース面接は実施せずに、応募者からの質問にコンサルタントが答えていく形式で行われている点にあります。
このカジュアル面談をエージェントが戦略ファームへ依頼する狙いは大きく2つになると考えています。1つはエージェントにとってのメリットとして、有望ではあるが応募の決心をし切れていない応募者にコンサルタントとして働くイメージを持ってもらう点となります。
もう1つは戦略ファームにとってのメリットとして、正規ルートという表現は誤解を招くかもしれませんが、採用システムへの登録から始まる選考プロセスへのせると学歴等を理由に足切りとなる異能の応募者を直接知り、戦略ファームとして一本釣り出来る可能性を提供する点にあります。
カジュアル面談では、学歴というよりは何に取り組んできて、どのような成果を出してきて、そして今後何をしていきたいかといったキャリアに関する話を中心に展開される場合がほとんどとなります。
その為、戦略コンサルタントは、応募者の人となりを良く知ることが出来ることから、普段のケース面談とは異なり、その応募者の特色や異能を知ることが出来ます。その結果、普段は足切りとして見られる条件を充足していない場合でも、選考プロセスに進めることが出来ます。
最後に
補足となりますが、コンサルティング業界における採用の波も1つの大事な要素として存在します。業界に長く所属していると、その時期に勢いのあるコンサルティングファームが大量採用を実施するケースが存在します。
例えば旧会計系のファームであると、E→D→P→Kの波が来て、更に現在はEの波が来ていると肌感覚として持っています。その大量採用の波を捉えて、コンサルティング業界のインサイダーとなり、その後、"わらしべ長者"のように転職をされている方も多く存在します。蛇足ですが、あの人はそろそろ旧会計系をコンプリートするね、といった会話も冗談半分で出たりします。もし、大学を気にされるようでしたら、そのような波を待ちつつ、キャリアを構築していく方向性もありますが、1度の人生ということで興味を持たれたタイミングで挑戦をしてみることも良いかと思います。