はじめに
基本、コンサルタントごとに感じている「やりがい」は異なる、というのが実際のところと思っています。もし、いろいろな「やりがい」の根底にある共通項を挙げるとしたら、コンサルタントの社会的な存在意義の分かり易さを挙げることができるのではないでしょうか。この存在意義の分かり易さが、個々人が働く上での活力であり、自尊心の充足、他人・社会へ与える影響から得られる自分の居場所の再確認、といった「やりがい」へ繋がる"欲"を満たし易くしていると理解しています。
つまり、もう少しかみ砕いて書きますと、皆さんもご理解の通り、多くの事業会社は、一定規模の組織の中で機能分業を行い、お客さんへ商品・サービス提供をしています。生産する場所と営業する場所、そして経営や管理をしている場所が地理的にも離れていることも多くなります。蛇足ですが、面接で良く聞く志望動機の1つである「もう少し広い視野で・・・、何かが決まったHOWの段階でなく、何かを決めるWHATの段階から仕事に関われず悔しい思いをして・・・」からも事業会社の状況を聞いてはいます。
一方、コンサルティングファームは比較論となりますが、1人又はチームで、営業(何を価値提供するか)から始まり、サービス提供(どのように価値を提供するか)、そして納品(何を価値としてクライアントへ提供したか)までを、一貫して役割として求められます。そこでの役立っている感や成果としてクライアントや社会に対して与えるインパクトを直に感じることが出来る点は、決して機能分業による生産性を求めてきた一般的な事業会社では、中々に得られない「やりがい」と言えるのではないでしょうか。
上手い"やりがい"のマネジメントがファームとしての差異化の源泉
それでは各コンサルタントが夫々に感じている「やりがい」には、どのようなタイプがあるでしょうか。今回は、私の普段のコンサルティングワークの1つとなる、プロジェクトマネジメントの観点と絡めてお伝えしたいと思います。各コンサルタントが、どのポイントに「やりがい」を感じるかを見極めてチーム組成・マネジメントをしていくことは、ファーム運営上も非常に重要な話となります。
当然ですが、プロジェクトにおいては100%の能力発揮を各コンサルタントに求めており、またクライアントに対しては100%の能力発揮を約束します。このベースの状態に加えて、個々人が「やりがい」を感じるタイミングでは自然と100%以上の能力発揮をして頂けることが多くなります。
個人コンサルタントとは違い、組織・チームで価値提供を行う戦略ファームでは様々なイシューに対して個々人の能力の組み合わせを考えた価値提供を実現している点が魅力の1つとなります。イシューに適したケイパビリティの組み合わせに加え、個々人の「やりがい」を含めたチーミング(チーム組成のこと)を通じて、100%以上の能力発揮を実現させることが、個人コンサルタントや競合ファームとの差異化の源泉の1つになると考えているからです。
"やりがい"のタイプ
各コンサルタントが持つ「やりがい」の分類パターンは、各プロジェクトマネージャーで異なりますが、今回は一例として私の分類を伝えたいと思います。大きく3タイプの分けており
「調査型:知らない情報を知った時にやりがいを感じるタイプ」
「思考型:考えてイシューを解いた時にやりがいを感じるタイプ」
「影響型:成果物が受け入れられて納得を得られた時にやりがいを感じるタイプ」
のどれに当てはまるかを検討の上で、プロジェクトやクライアントの特性に対して適した各コンサルタントのチーミングを実施します。また、これは私の中での話だけかもしれませんが、この分類をベースに、各コンサルタントが将来どうキャリアを描けば良いかのデベロップメントプランを考えることもします。
最後に
最近のコンサルティング業界は、需要過多な状況が継続していることから、個々人の「やりがい」のタイプまでを考えたチーミング設計の上でのサービス提供機会は少なくなっています。セレンディピティとして思わぬ能力開花に繋がることもありますが、「やりがい」を感じずに業界を去る方の方が多いのではないかと感じている次第です。但し、一人ひとりのコンサルタントが競争力の源泉であり資本であるコンサルティング業界は、個々人の成長に対する関心は高いとも感じています。皆さんも、そのようなコンサルティング業界に興味を持たれたのであれば、是非挑戦してみる価値はあるかと思います。