はじめに
ここ10年のコンサルティングの変遷を見ていると、戦略と実行の橋渡しに関するテーマが増えてきたというのが特徴ではないでしょうか。
それ以前も戦略と実行の橋渡しに関するテーマは存在していました。しかし、デジタル環境の発展に伴い、これまで以上に実事業に踏み込んだコンサルティングが可能になりました。具体的には、F/S (Feasibility Study)よりも更に踏み込んだPcC (Proof of Concept)の実行支援プロジェクトといったテーマのように、実事業に片足を突っ込んでいるプロジェクトを実施しています。
また、当該デジタル系のプロジェクトの増加に伴い、PcC開発基盤の無償提供や先端系ベンダーとのエコシステム形成といったように、各コンサルティングファームもある程度の有形/無形のアセットを意図的に持ち始めています。結果、収益構造も変化してきており、「戦略立案phaseはほぼタダで支援するが、PoCや実行phaseで末永く支援する」といったプロジェクトも増えてきています。
言い換えると、「稼げる領域(PoC/実行phase)」と「稼ぐ領域にエントリーするための武器となる領域(戦略立案phase)」の両方を兼ね備えないと、ファーム間の競争に勝ち残れなくなってきているとも言えるでしょう。皆さんもTier1の戦略ファームのデジタル領域の子会社設立や総合系ファームによる戦略ファームの買収といったニュースで目にしているかと思います。
但し、企業の成長ライフサイクルにあわせてコンサルティングのイシューは発生することから、クラシカルなテーマがなくなることはありません。ここ10年のデジタル系の実行支援の前はグローバル展開の実行支援が流行っていた印象がありますが、そのテーマは今もなくなってはいません。
この歴史背景を共有したところで、本日は、2030年のコンサルタントはどのような仕事をしているのかについて、お伝えできればと思います。
2030年のコンサルタント
現在、社会装置としてのコンサルタントの機能は、「インテリジェンスの媒介」「新アイデア・観点の創出」「高級人材派遣」と私自身は捉えています。これに「コネクティング」の機能が明確に追加されるのが2030年のコンサルタントではないかと考えています。
昔から、戦略とオペレーション現場を繋ぐ、技術と経営を繋ぐといったコネクティングの機能は期待されていましたが、その場面は限定的でした。ここ10年では、リアルとデジタルを繋ぐ、戦略/計画と事業基盤実装を繋ぐといった新たな「コネクティング」の場面も増加してきました。
今後、クライアントの事業環境は業界間の領空侵犯・融合が進展する一方で、事業に必要な能力や専門性は高度化し、よりフラグメンタルな状況になっていきます。その為、コンサルティングファームはよりオープン化し、必要な時により専門性を持つ個人のコンサルタントや、きめ細やかでエッジのあるソリューションを提供するスタートアップを集めてプロジェクトを提供するスタイルへ変化せざるを得ないと考えています。
結果、あるイシューを解くためのスペシャルチーム組成を実現する「コネクティング」の機能が明確に期待されるようになるのではないでしょうか。
最後に
現在も提案時の体制に教授の名前や提携/資本関係を持つ企業の専門家を組み入れると、クライアントから評価されます。また、以前より、「それで、どこまで一緒に支援してくれるの?」「実行の際は資本を出し合ってリスクとリターンを共有するスキームに出来ないか?」といった相談を受けることもあります。
現在進行形でコンサルタントに求められる役割は刻々と変化をしています。皆さんもコンサルタントを目指される場合は、そのようなキャリアや将来の可能性への道も開かれつつあるということ認識して頂ければと思います。