はじめに
コンサルティングの方法論や実績、あるいはクライアント側の使いこなし能力の向上につれ、コンサルティングの成果に対する不確実性も下がってきています。
その結果、コンサルティングに対する認知も、"虚業"、"詐欺師"といったネガティブ系のイメージから、社会装置として確立され、ポジティブなイメージへ移行し始めているのではないでしょうか。
そのような背景もあって、現在のコンサルティング業界は、それなりの大学を卒業した新卒、それなりの大企業から転職を考える中途の方にとっての1つのキャリアの選択肢として認知されてきています。業界や業界外からのイメージ変化に対する良し悪しは別で議論するとして、必然的に以前ほどは、個性のありすぎるコンサルタントが減ってきているとは感じています。
ここで使用する"個性"とは、クライアントへの価値の出し方を指しています。見た目や服装、振る舞いとして社会的な適合性の低い方も多かったのも事実ではありますが・・・。
本題に戻ると、その背景にはクライアントへの価値の出し方として方法論や実績が確立された結果、未知のイシューは事実として減ってきています。新興国への進出、グループ連結でのガバナンス構造の転換、デジタルトランスフォーメーションといった、当時は未知であり、エキサイティングなイシューは、コンサルティングファームにとっては、既に手あかのついたイシューとも言えるでしょう。
そのため、クライアントへの価値の出し方も、おのずとコンサルティング業界内では画一的になり、更に業界への認知度向上の効果が上手くかみ合わさり、相乗効果として個性あるコンサルタントの存在価値が薄れてきているのが現実となります。但し、絶滅している訳ではなく、地方での再生事業や海外現地での事業立ち上げ支援といった分野では、現役で活躍される方が多い印象を持ちます。
今回は、本人特定されない範囲で、私が出会った中で印象的であった個性的なコンサルタントを、お伝えできればと思います。
お守り系コンサルタント
競合に比較して自社にケイパビリティがなく、また創業者系のステークホルダーの多い中小企業は、戦略的側面、並びに実行の側面でデッドロック状態に陥っていることが多くなります。そのような企業群に対しては、正しい解を綺麗なスライドで説明するよりも、先ず第一歩目のアクションをとった上で、そのアクションに対する顧客・市場の反応を見て、更にテンポよく対応していく解き方の方が有効です。
そのようなクライアントは、第一歩目のアクションを非常に怖がります。そこを、"神通力"と言えば良いのか分かりませんが「この人が言うと、なんか良く分からないけど説得力がある」タイプのコンサルタントが登場して「やりましょう」という言葉と共に、クライアントを動かすことが出来るコンサルタントがいました。
その方が1人目の印象に残ったコンサルタントです。普段の場面ではバリューは全く感じないのですが、ここぞという場面にいると、必ず前に進めてしまう力を持っていました。
あらためて、当時のことを思い起こすと「クライアントのおかれている状況を良く観察・想像」し「前の人の発言趣旨を理解して上手く天丼のように重ねてメッセージを発信」し「クライアントへ説得力のあるコメント」をしていたのではないかと思ってはいます。
しかし、彼はスライド作成も、エクセルによる分析もできませんでした。どちらにせよ、現在のコンサルティングファームでしたら、彼のようなコンサルタントはジュニアの段階で転職を促されてしまっていたのではないかと思います。
ドライブ系コンサルタント
短期間で成果が求められるプロジェクトにおいては、ぐいぐいと前に引っ張っていく方がクライアント内にいなければ、上手くいかないケースが多いのではないでしょうか?
あたかもクライアントメンバーのボスのように振る舞い、時にはクライアントを怒鳴りつけ、時には全力で一緒に成功を喜ぶコンサルタントがいました。
後にも先にもクライアントに対して「やる気がないなら今すぐこのミーティングから出ていけ!」と、怒鳴りつけているコンサルタントは見たことがありません。
気になるそのプロジェクトの結果なのですが、徹夜続きのつらい状況の中、誰も諦めずにやり遂げ、最高の結果が出ました。
このタイプも現在のコンサルティングファームではおそらく二度と見かけることはないと思います。
ジュニアの段階では優秀で良いコンサルタントとしてみなされるかもしれませんが、マネージャー以上のタイミングからは、すぐに問題となりコンプライアンスを筆頭の理由として、転職を促されることでしょう。
最後に
私も教育の賜物(?)かは分かりませんが、スライドのメッセージには厳しめのことを書く傾向にあります(例えば「先送りの連鎖が現状況を招いた」といったメッセージを書いて、ボディに経営会議の議事録から拾った議題の日付を丹念に並べる、等)。
そのような意味で、一時代前のコンサルタントに比べると可愛いものですが、周りからは私自身も"個性的"なコンサルタントと思われているかもしれません。
一方で、個性の有無は別として、一時代前から変わらない「クライアントに対して価値を出すために全力で取り組む」という大事なポリシーも残り続けています。"個性"的な方々も、その点はぶれてはいませんでした。
皆さんも、色々な"個性"を持たれているかと思いますが、コンサルタントになられた際は一緒のチームとして、その"個性"を活かした価値提供を一緒に出来れば嬉しく思います。