はじめに
私自身も「コンサルタントになれば、つぶしは効くのではないか?」と、コンサルティング業界への就職を検討した際には考えていました。右も左も分からない状態で就職活動に取り組んでいた当時、社会を知らないが故に、何かを成し遂げたいという強い思いや商品・サービスへの思い入れを持つこともありませんでした。そのため、将来やりたいことを見つけ易い職業、且つつぶしの効きやすい職業ということでコンサルティングファームを選択しています。
もう少し補足しますと、採用活動中に出会う事業会社に所属される大手企業の社員の方は魅力的ではあるものの、よくよく聞いているとその方々と一緒に働けるかどうかは、人事のみ知るという状況も見えてきました。いわゆる、配属先の"上司ガチャ"とも言える状況に自分の人生を預ける気にもなれずに、能動的にキャリアを切り開く上では、つぶしの効くコンサルティングへの志望度は更に高まっていった記憶があります。
ここで使用している"つぶしが効く"を改めて定義しますと、2つの意味合いで使用をしています。
1つは、どのような状況や環境にも対応できる"絶対的な能力・スキル"の側面でのつぶしの効き易さです。
また、もう1つは、転職市場で会社を選ぶ際の"相対的な市場価値"の側面でのつぶしの効き易さです。
後者について現実面を補足しますと、ほとんどのコンサルティングファームは何ができるか?というよりは、どこの大学・会社を出ているか、で足切りをしています。限られた時間で大量の応募者の選定をしていく上では、その方が当たりはずれのボラティリティが低く抑えられるからです。つまり、いくら能力・スキルとして優れていたとしても、エントリーチケットをもらうには、"相対的な市場価値"が必要になるのが現実です。
本日は、この2つの意味合い"絶対的な能力・スキル"、"相対的な市場価値"の観点で、「新卒でコンサルになればつぶしが効く」かどうかの現実をお伝えできればと思います。
絶対的な能力・スキルの側面
結論から書きますと、新卒でコンサルティングファームを選択した方が、つぶしは効きやすいと思います。ここ数年における事業環境変化のスピード増と非連続な事業領域の転換を見ていると、益々、事業会社はつぶしが効きにくくなっているな、という印象を持ちます。
前提として、ここで言う事業会社は良く組織化された分業体制の下、個別の担当が割り当てられた大手企業を想像してもらえればと思います。前述の事業環境変化や技術革新に伴い、この分業して担当していた領域が以前と比較して10年後、20年後に残る可能性が低くなっています。
その結果、その領域で培った専門知見やスキルを身につけた人材も必要とされなくなります。社内で配置転換をされたとしても、異動先では、その道を同じように担当してきた人と比較すると専門知見やスキル面では通用しません。
一方で、社外に目を向けた場合、どの会社や業界でも通じる汎用スキルを鍛えていればつぶしは効きやすいと思います。しかし、現実では、ほとんどの大手企業の方は会社から汎用スキルを伸ばし続けることを求められている環境にはなかったことから、つぶしの効かない状況に陥るケースが多いと聞きます。少なくとも、転職に伴い処遇が上がったというケースは滅多に聞きません。
なお、担当する領域が将来有望な成長領域であれば、その事業会社におけるマネジメントへの道は開かれているのではないでしょうか。この状況は、先ほど"上司ガチャ"という表現を使いましたが、"配属先ガチャ"と言っても良いかもしれません。
一方のコンサルタントは、各種テーマを幅広く扱うことから領域として、つぶしが効かなくなるという状況はほぼありません。また、プロジェクト単位でイシューに基づくプロジェクトの企画、立ち上げ、デリバリー、納品といった一連サイクルを何度も経験することから、会社組織の中で生き抜くための知恵というよりは、成果を出すための汎用的なスキルが身につき易い環境にあります。さらに言うと、会社に頼らずに、何かしらご飯を食べていけるだろう、という感覚が掴めるようになりますので、つぶしは効きやすいと思います。
相対的な市場価値の側面
正直、これは事業会社であろうとコンサルティングファームであろうと職業というよりは、社名ブランドが効いてきます。そのため、新卒でどのコンサルティングファームに就職するかで、つぶしの効き易さは変化します。
例えば、現実の話を1つすると、最近コンサルティング業界内の転職で増えているパターンは、新卒で入り易い監査法人系、総合IT系のコンサルティングファームへ入社し、第二新卒として、1年もたたずに戦略ファームへの転職を志望して応募するパターンです。
彼ら/彼女らは、「入社してみると、戦略や経営といった上流の仕事に携われると思ったのに、PMOや決められた範囲内での業務ばかり」と、お決まりの転職志望の理由を説明してきます。
そもそもの能力・スキル面においても、本気で言っているのだとしたら戦略コンサルタントととしての素養は欠如していますし、転職のための安易な説明だとしたら、それが通じると思っている非常に世間知らずな候補者だなと感じています。しかし、それよりも重要なことは、戦略ファームの採用において監査法人系、総合IT系のファームの名前を見た瞬間に書類で落とすケースが多いということです。つまり、同じコンサルティングファーム間でも社名ブランドの格が低い場合は、つぶしが全く効かない状況に陥ってしまうということが生じます。
最後に
今回は、一般的なつぶしの効き易さをお伝えしました。結論としては、相対的にはつぶしが効きやすいというのは、まだまだ事実なので、私のように新卒時の悩みを抱えている方は、オプションを先送りする意味でもコンサルティングファームを選ばれるのは一案かもしれませんね。