はじめに-「コンサルタント」は使い勝手の良い名称
以前はネガティブ系ニュースにおいて、ビジネス版の詐欺師を少しオブラートに包んだような「自称経営コンサルタント」という表現でのみ「コンサルタント」という名前を認知する機会を持っていた記憶があります。
しかし最近では、コンサルティング業界の諸先輩方の方々での活躍のおかげで、ネガティブ系ニュース以外の接点でも「コンサルタント」という職業を認知する機会が増えてきています。結果、イメージも改善し、新卒の認識就職先ランキングでも上位に見かけるようになりました。
一方、「コンサルタント」という表現が市民権を得たことにより、様々なコンサルタントに出会うようになりました。粒度や切り口が異なる気持ち悪さは横に置いて、よく聞く「○○コンサルタント」を羅列していくと
● 戦略コンサルタント
● 経営コンサルタント
● 新事業コンサルタント
● マーケティングコンサルタント
● 中小企業コンサルタント」ソリューションコンサルタント
といったように、世の中の全ての職業をコンサルタントという表現に出来るのではないか、と思えるぐらい挙げることが出来るのではないでしょうか。
多分、「コンサルタント」はラテン語の「consiliarius」を語源とし、「協議する」という意味であるため、非常に使い勝手の良い名称であったことも、多種多様なコンサルタントを生み出してきた一因かと思います。
そのため、当然ではありますが、えっ!と思うような不思議なコンサルタントにも出会うことがあります。
本日は、「なんでもコンサルタント化現象」の良し悪しは皆さんの判断に任せるとして、今まで私が見聞きした中で、驚いたコンサルタントを紹介できればと思います。
旅行先の旅館で従業員と話していたおばちゃんとお姉さん
何年も前の話です。当時、クロスボーダーのM&Aプロジェクトのフェーズの切れ目で休暇ができたので国内旅行をしていました。
旅館のラウンジでコーヒーと共にくつろいでいた時、少し離れたラウンジのテーブルでそれは始まりました。
旅館の方と、ビジネス向けの格好をしたおばちゃんが、同じくビジネス向けの格好をした若い女の子を連れて話をしています。
おばちゃん「今日は後任の紹介で参りました。」
旅館の方「いつもありがとうございます。今日もいくつかご相談したいことがあって。」
若い子「本日より担当します、コンサルタントのXXと言います。宜しくお願いします。」
旅館の方「よろしくお願いします。ではさっそくですが、HPに載せるプランについてなのですが・・・」
うろ覚えですが、このような会話が耳に入ってきて、正直、私は恥ずかしながら非常に衝撃を覚えました。"コンサルタント?、HPに載せるプラン?、イシューは?。つまりは、あのおばちゃんはシニアコンサルタント?"。
今の私であれば、受け止められたかもしれませんが、当時の私は未熟でした。
「『英語を使いこなし、特定業界の知見を寝食惜しんで知見を深め、そして洗練されたプレゼンテーションを通じて、複雑に絡まり合ったイシューを解いていく』・・・それがコンサルタントでしょ!」と、勝手な自己イメージを肥大化させていた当時の私にとって、この会話は非常に衝撃的でした。
そこからは気になってコーヒーを飲むふりをしつつ聞き耳を立てていました。
やがて、コンサルタント2人組が何者かもわかりました。宿泊サイトを運営する某旅行会社の社員です。
これまではカウンターに座って宿泊の手配をしていた方がEC強化の方針に従って法人対応をすることとなり、コンサルタントという肩書がついた模様です。
当時、地方再生の名の下で一定額の国の予算が付き始めていた時期で、私もプロボノ的にいくつ地方案件には関わっていました。2人が所属していたのは、その際にほぼ100%に近いぐらい名前が出てくるような旅行会社でした。そのため、なんとなく2人組が現在何をしているのかも推測がつきました。
地方における再生主体となる地方行政や旅館組合、街おこし団体におけるKPIには大抵ビジット率(訪問率)が設定されおり、その指標達成に向けては「集客手段=宿泊サイト更新」が紋切り型の手段として取られていました。
結果、地方再生の主体となる団体は、旅行会社とプロモーション・コンサルティング契約(HP作成+集客+よろず相談。合計:何百万円)を締結するケースが散見されていました。
地方案件の相談が来るタイミングでは既に上記プランは契約済であったことから、実際のビジネスシーンでお会いしたことはありませんでした。しかし、このオフの日に初めて出会ってしまったのです!
旅館の方と2人組の会議が終了した後、旅館の方が感謝している姿が印象的でした。そして、2人組が去る頃には、「コンサルタントとは相対するクライアントのイシューに対応し、様々な領域で活躍される方がいる裾野の広い産業になりつつある。」と、改めて1つ学んだな・・・と一生忘れない記憶として刻まれたのでした。
最後に
大事なことはコンサルタントという表現の一般化に伴い様々なコンサルタントが生まれてきている中、「コンサルタントになれる!」という肩書に惑わされずに、自身でなりたい「コンサルタント」になれるキャリアを選択することかと思います。皆さんのキャリア選択の際に参考にして頂ければと思います。