はじめに
人を相手にする仕事であることから、どうしても相性の問題は避けて通れません。私自身も、苦手なタイプのクライアントは存在します。コンサルタントを"魔法の杖"のような存在だと勘違いをしており、"杖を振れば"なんでも解決してもらえると考えているタイプです。
コンサルティングのプロジェクトにおいては、設定されたイシューとスコープが存在し、そのイシューを限られた期間の中で、可能な限り確からしい答えを出していくことが求められます。しかし、"魔法の杖"のように捉えているクライアントは、この提案時のイシューとスコープを軽く考える傾向にあり「コンサルなら、このぐらい出来るでしょ?」という言動で迫ってきます。「出来るけど、それって意味ないよね?」という考えを非常にマイルドな形でお伝えはしていますが、時には押し負けることもあります・・・。
一方、私が苦手とするこのようなタイプの経営者と上手く付き合うコンサルタントも存在します。冗談交じりに「これを対応するなら、+αでこれだけ人が必要になりますよ」、「今度対応するので今は勘弁して下さいよ(結局、"今度"が訪れることはないのですが・・・)」といったコミュニケーションスタイルと、それを嫌味に思わせない人柄を持たれるコンサルタントが上手くさばいている印象を持ちます。
つまり、各ケースまで言及すると「コンサルが苦手としやすいタイプの経営者」はコンサルタントそれぞれにより異なる、というのが結論ではないでしょうか。しかし、ここ最近は少し様相が変わっている印象を持つことも確かです。
最近、周りで"炎上"やコンサルタントが楽しくなさそうな顔で仕事をしているプロジェクトにおけるクライアントを見ていると、ある共通点が浮かび上がってきていると感じ始めています。その原因は、コンサルティング業界が人気就職先となってきたことによる"綺麗な"コンサルタントの増加にあると考えてはいますが、本日は、そのような点も含めて、最近の「コンサルが苦手としやすいタイプの経営者」をお伝え出来ればと思います。
最近のコンサルタントの傾向
以前と比較して、礼儀正しく、約束を守り、そして節度ある行動をとる"綺麗な"コンサルタントが、確実に増加をしています。口も悪く、手が出がちな破天荒なコンサルタントは、ほぼ絶滅してきています。そのような意味では良いことであるとは言えます。
一方で、"綺麗な"コンサルタント達は、そのような上司や同僚に揉まれることなく、"お上品"に過ごすことが出来ています。そのため、自身の要求を声高に主張することに忌避感を持ちがちで、また、そのような迫り方をしてくる方には嫌悪感を示して距離を置く傾向にもあります。結果、そのようなタイプとの付き合い方に慣れずに、自然と苦手なタイプが似通ってていると考えています。
苦手としやすいタイプの経営者
苦手としやすいタイプのクライアントを具体的に表すと、大きく次の2つに分けられます。
・1つ目は、「イシューやスコープを超えた、行き過ぎた要求をするタイプ」
・2つ目は、「明らかに定石を外した結論を直感で押し付けてくるタイプ」
です。
1つ目は、プロジェクトの途中で「あれも、これも」とどんどんスコープを広げて要求をしてくるタイプです。
このタイプは、上述の通り私が苦手なタイプとなります。職業柄頼まれたことは断り難い性格であることから、常に対応に苦慮します。結果、摩擦を生むのも面倒となり、意味のない作業を引き受けて、ワークロードに負荷が掛かることもしばしば発生します。
2つ目は、プロジェクトの経緯や検討結果を無視して、直感で信じていることを押し付けるタイプです。
私も経験があるのですが、明らかに検討結果と逆のことを結論と書けと圧力をかけてくることもあります。また、知り合いのコンサルタントは、このタイプのクライアントへのプロジェクトを"(結論ありきの)答え合わせプロジェクト"と表現する方もいました。この押し付けられた結論の跳ね返しに苦慮し、諦めた結果、辻褄を合わせの作業を受け入れる方もしばしば見るのも、1つの現実ではないでしょうか。
最後に
苦手としやすいタイプの経営者とのプロジェクトは非常に困難が伴います。しかし、そのような苦手なクライアントへの対応を通じて、シニアの力を借りる、会食の場で説得するといった、変革に向けた推進のスキルを学ぶことが出来るのも現実です。そのため、若い内から机上のお絵かきをするのみならず、変革に向けた推進のスキルを身につけたい方には良い機会かと思います。そのようなコンサルティング業界へ興味のある方は是非チャレンジをしてみてはいかがでしょうか。