はじめに
コンサルティング業務の特徴として、
①コンサルティングは労働集約ビジネス
(その為、プロジェクト別に毎回カスタマイズが発生)
②コンサルティングはサービス業
(その為、ある程度はクライアント都合を優先した働き方が発生)
③コンサルティングは無形で正解がない
(その為、やろうと思えばいくらでもやることが発生)
といった点が存在することから、長時間労働を生みやすい業界構造であることは確かです。
その上、プロジェクトごとに個別の事情(緊急かつ短期間での対応が必要、地方の営業支社・支店や現地工場でのインタビューが求められる、等)により、時には睡眠時間を犠牲に働かざるをえない状況も生じます。特に出張が多いプロジェクトにおいて移動時間に作業が出来ない場合は、作業時間の絶対数がなくなります。結果、作業は夜からというのも"コンサルあるある"という状況もしばしば発生します。
その為、採用面接の場面でもたびたび聞かれますが、コンサルタントを続ける上で「どの程度の体力が必要か?」「体力勝負か?」と聞かれると、"続けていくため"には一定以上の体力があった方が良いと、私としては答えています。
疲れると思考力低下や集中力散漫といった状態になります。つまり、100%の成果物を提供できない状態に陥ることになり、それはプロフェッショナルとして避けるべき状態です。一定以上の体力がない場合、そのような状態になる頻度が高まります。
但し、コンサルティング業務に対応できる最低限の体力を持つことは、"続けていくため"に必要な状況であり、業界で成功することを意味しません。ある意味、コンサルティングのスタートラインに立つ上での最低条件と言えます。
言い換えると、コンサルティング業界には本当の意味での「体力勝負」の世界が存在すると私は考えています。それはキャリアを重ねてパートナークラスを目指す上で避けては通れない「体力勝負」の領域です。本日は、普段の採用面接の場ではお伝えしない、更なる高みを目指す上で必要となる「体力勝負」の現実をお伝え出来ればと思います。
パートナークラスになるための出世競争はあるのか?
前提の確認ですが、コンサルティングファームはプロジェクトの集合体として成り立っています。そのため、プロジェクト数に比例してデリバリーに必要な人材と数値(売上/利益)が変動します。そして、多くの人材と共に数値という結果を出し続けることが出来ればパートナーとなります。
政治的な側面によりランクアップの時間に個人差は生じるものの、つまりはパートナークラスという役職には"席"の限りはありません。そのため、コンサルティング業界以外で良く見かける、例えばXX部門の部長席は1つなので新卒での入社年月前後3~5年以内の同僚と席を争うといった出世競争(同組織内での相対比較の競争)は生じません。
このように、理論的にはパートナークラスになるというウィル(意思)とそれを支える能力があれば誰でもパートナークラスになれます。しかし、現実には誰もがパートナークラスになっている訳ではありません。(社内での相対比較での競争に勝ち続けるのではなく)絶対値としての成果を出し続ける厳しさが存在するためです。しかも、1度成果を出せばよいという話ではなく、成果を出し続ける必要もあります。そのため、自分の気力と戦い続ける、際限のない「体力勝負」の世界が待っています。
蛇足ですが、多くのコンサルティングファームを見ていると、役職が上の人ほど忙しく働いているファーム(または、そのパートナークラスが責任を持っている組織)であるか否かは、そのファーム又は組織を見極める重要な観点となります。端的に言うと、シニアクラスがあまり働いてないファーム又は組織は、ガバナンス構造もしっかりとしておらず、シニアクラスのレベルが低いケースが多いことから避けることをお勧めします。
際限のないケイパビリティ・ディベロップメント(能力開発)
クライアントの経営課題は日々刻々と変化し、また経営課題に対するアプローチ(例えば、デジタル)も日進月歩で進化し続けています。そのため、パートナークラスになったとしても、常に自分自身のケイパビリティ・ディベロップメント(能力開発)が必要となります。通常の業務に加えて、業務時間外を使った机上の学習の時間や、学習したことを初めてプロジェクトに適用する場面においては試行錯誤の時間を必要とします。結果、ここでも「体力勝負」となります。明らかに過去と比べて経営課題やアプローチの入れ替わりのスピードは早まっていることから、学習しなければならないことの量も増えています。ジュニアの中には、シニアのそのような姿を見て、自分では出来そうもないと、早々に自身のキャリアを見極める方もいます。
最後に
タイトル「コンサルは体力勝負?」への結論としては、普段通りにコンサルティングをする上でも必要であり、コンサルティング業界内で高みを目指す上では、更に「体力」が重要な要素になります。皆さんももしコンサルティング業界を目指される場合は、日頃から適度な運動を通じた体力づくりをしておいた方が無難かもしれません。