はじめに
転職後はこれまで培った常識を捨て(アンラーニング)、新たな組織で価値を創出するために最適化された行動様式やスキルの習得(ラーニング)が必要になるかと思います。それは他業種からコンサルタントに転職する際も同様に求められます。
私自身、中途採用者の出社初日に開催するオリエンテーションの場で、コンサルタントの心構えをお伝えする機会があります。本日は実際に話している内容の要点を皆さんにお伝え出来ればとは思います。
話の導入として・・・
心構えをお伝えする際の導入パートとして、先程のアンラーニング・ラーニングの話と共に、一連の心構えを理解する上で目線を合わせておく必要があるコンサルティングの特徴についてお伝えしています。コンサルティングは製品のように目に見える有形なモノではなく、また定型的にプロダクトアウト的に提供するサービスでもなく、クライアントのイシューに則して毎回作り上げる無形な価値を提供する仕事であるという点です。
言い換えると、社内の誰かが開発・製造している製品でもなく、確立された会社名やブランド名で売れているサービスでもなく、自分自身で提供価値を創出しなければならない点に特徴を持つ仕事であることを意味します。極端な言い方をすると、自分自身を評価してもらう(買ってもらう)マインドの上に全てが成り立つことを理解して欲しいと伝えています。
昨今のコンサルタントのコモディティ化に伴い、コンサルタントの能力にバラツキは生じています。正直、ブティックファームの同ランクのコンサルタントであっても、個々人の実力差を如実に感じます。そしてクライアント自身もこの事象を理解しており、今まで以上に厳しくコンサルタント個々人を見極めて起用の判断する傾向が高まってきています。
そのため、自分自身を唯一無二のサービスとして価値を高め続け、クライアントに評価してもらう(買ってもらう)というマインドが欠如していると、どこかで所属する会社名や上長等によりかかるという心の隙間が生じてしまいます。それではプロフェッショナルとして大成しませんし、クライアントから受け取る高いフィーに見合う実力になることは難しいのではないでしょうか。
いわゆるUp or Outの精神をかみ砕いて説明した内容となるので、皆さんにとってはお馴染みかもしれません。しかし、このマインドを共通の認識として持たないことには、その後にお伝えする一連の心構えも表面的な教訓として受け止められてしまう可能性が高くなると考えています。
コンサルタントに転職する際の心構え
自分自身が唯一無二のサービスである前提に立った時、
①サービス開発(緩やかな境界線で区切られた専門領域の保有)
②パーソナル・マーケティング(売り込まなくても相談が集まる社会的認知の獲得)
③サービス提供(100%以上の価値提供がしたくなる仕組みの構築)
④サービス改良/革新(定石/論理への現場経験の反映による専門領域の差異化)
という観点で自分自身を成長させていくことが求められます。尚、観点や分類はメッセージを伝えるコンサルタントにより異なりますが、死ぬ気で成長し"続ける"ことが心構えの1丁目の1番地として重要であると伝えられるのが、どこのファームでも共通ではないでしょうか。
補足として①から④の内、表現として分かり難そうな①サービス開発(緩やかな境界線で区切られた専門領域の保有)と、③サービス提供(100%以上の価値提供がしたくなる仕組みの構築)は少し説明をしておきたいと思います。
①ですが、イシューを解くことが価値であるものの、ある程度の専門性がなければ初期仮説の精度も悪く、限られた期間内での価値提供の難易度は上がります。クライアントもフィーをコンサルタントに払いながら、業界知見に関してゼロから学習してもらう状態になることは望んでおりません。一方で、明確に専門性の境界線を定めるとクライアントへの価値提供に幅が出ません。そのため、ある程度は専門領域を持ちつつ、その専門領域の境界線を曖昧にして、いつでも超えていくことに抵抗を持たない心構えでいることが大事になります。
また④ですが、ファーム内にある既存の仕組みや制度等を是と思わずに、コンサルタントが正しく十分な能力を発揮できる環境へ変えていくことを指しています。常に正しいと思うことに模索し、誠実に行動し続ける心構えが大事になります。
最後に
コンサルタント業界では、自分以外に誰も自分自身のキャリアに責任を持ってくれません。ファームに所属しているだけでは成長しません。また、プロジェクトをなんとなく経験するだけでは成長はするものの、クライアントや周りが求める成長のスピードへの期待を満たすことはありません。
そのため、コンサルティング業界を目指す場合は、今回お伝えした心構えと共に何事にもプロアクティブに取り組むという基本的な姿勢を忘れずに持たれると良いかと思います。