はじめに
コンサルティングにおいて求められるスケジュール管理能力を言い換えると、「何か不測の事態が起きたとしても、期限までにクライアントとの約束を守る能力」と言えるかもしれません。以前より記事でお伝えしていることと被るかもしれませんが、スケジュール設計の基本思想は「終わりから考える」となります。つまり、達成したい事項と、その期限を左記に設定し、何が何でも設定したゴールに間に合わせる管理能力が求められます。
この「終わりから考える」という基本思想で設定されたスケジュール管理に必要な能力は、一般的な事業会社で散見される担当の能力をベースに標準作業時間を予測しつつ設計していく「積み上げ型のスケジュール」を管理する能力とは別物となります。
スケジュール管理能力を更に一歩具体的に考えてみると、これは「WBS設計力」×「PDCA力」に分解することが出来ます。つまり、イシューを絞り込み(優先順位、捨てる作業の見極め)、作業のQCDを最大化するタイミングでタッチポイントを設計(=「WBS設計力」)し、ドライブ感を持ちつつ手戻りを最小化して進める(=「PDCA力」)能力の掛け算と言い換えることが出来ます。
ここまでかみ砕いてみていくと、きっとあの人ならこのタイミングで出来ているだろうという予測の下で作成した「積み上げ型のスケジュール」を管理する能力とは異なる能力が求められると、漠然とですが感じて頂けたのではないでしょうか。
本日は、この2つの内、「WBS設計力」にフォーカスした解説を通じてコンサルタントのスケジュール管理能力についてお伝えできればと思います。(基本、「PDCA力」については、事業会社経験者の方が優れている印象を持つ為、今回は省きたいと思います)
スケジュール管理能力:WBS設計力
皆さんも1度はWBSという単語を聞いたことも、作成したこともあるのではないでしょうか。縦軸にタスクを設定し、横軸に日程・マイルストーンを設定して作成する作業計画を管理する表です。作成は簡単そう思えますが縦軸・横軸の設計にコツと経験を必要とします。実際、他業界からの転職者へWBS作成をお願いし、最初から上手く出来たアウトプットを見た経験はありません。
分かりやすくする為に、1つ事例を設定し説明したいと思います。例えば、市場調査プロジェクトでWBSを作成する状況を想定して下さい。先ず縦軸のタスク設定に関して、コンサルタントならではのスケジュール管理を実現する上でのポイントを説明したいと思います。
良くある縦軸のタスク設定のされ方は
1..AAA市場関係者へのインタビュー
1-1. インタビュー対象者のリストアップ
1-2. インタビュー内容の作成
1-3. インタビュー実施
1-4. インタビュー結果の取り纏め
と実施項目ベースでの設定となります。この設定方法だと、タスクの進捗管理は可能ですが、そのタスクを通じて、インタビューを通じて把握をしたかったイシューに係る情報を得れたか否かは管理出来ません。つまり、コンサルタントのWBSはインタビューを通じて何を解きたいのか?ベースで設定される方が望ましく、例えば
1..AAA市場の成長率は今後もこれまでと同水準か?
1-1. これまでの成長ドライバーは?
1-2. これまでの成長ドライバーが変化する可能性は?
1-3. (もし変化しない場合、)これまでの成長ドライバーに影響を与えるイベントはあるか?
1-4. 今後、どの程度の成長率になるか?
といった様に、インタビューを通じて把握したいイシューベースで設定をします。もちろん、この時点である程度の情報を把握する場合は、更に具体的に設定、又は自明のことなので、わざわざタスクとして設定しない、という判断をします。
次に、横軸の日程・マイルストーンの設定に関してポイントを説明したいと思います。基本、安全バッファを織り込んだマイルストーンとして、クライアントに出す前に2回、クライアントとの確認を2回取る形で設定をします。1回目で大きな方向性やイメージ、仮説を提示し、2回目に1回目のマイルストーンでのフィードバックを反映した最終版として提示していきます。
やはり1回のミーティングで1つのイシューが片付くことは少なく、安全を見ると2回目で最終化していくプロセスをとれるように設計します。尚、2回目の確認時は1回目に提示した際の精度による部分があり、軽く説明して終わる場合もあれば、深く討議する場合もあります。この安全バッファを織り込んだマイルストーン設計が出来ない場合、遅延による"炎上"またはゴールポストを動かすといった状況になりやすいのではないでしょうか。
最後に
今回は、良くあるスケジュール管理でのコンサルタントならではの工夫を紹介出来たかと思います。1つ1つのスキルも、コツと経験次第で短期間で、"使える"スキルに昇華することも可能です。このような成果に対して猛烈なスピード感とプロフェッショナル意識を持って取り組むコンサルティング業界に興味を持たれたら、是非積極的にコンサルティング業界へチャレンジをしてみてはいかがでしょうか。