はじめに
新型コロナウィルスと共に変化してきた働き方も1年以上経ち、徐々にこの状態がニューノーマルとして定着してきた印象を持ちます。
2020年は止まっていたクライアント各社の動きも再開されて、現在ではコロナ以前よりもコンサルティング需要が旺盛なほどです。それに対応する形で、グローバル戦略ファームも採用には引き続き積極的な状況です。中には、人材数がファームの売上高の限界を決めるといったファームも見られ始めています。
このような状況下におけるコンサルティングファームの働き方はどのように変化してきているでしょうか。以前お伝えした時よりも、働き方の変化が及ぼす影響も見えてきました。
今回は、その点を中心に、withコロナ時代におけるコンサルティングの姿をアップデートしてお伝え出来ればと思います。
若手コンサルタントにとっての変化と影響
やはり若手にとっての大きな変化は、働く場所がフレキシブルに選択出来るようになった点です。そのおかげで、プライベートも充実してきているといった声もよく聞きます。
一方で、前回(withコロナ時代におけるコンサルティング:2020年10月5日掲載)も問題提起として挙げた
●「短期間での密な時間や雰囲気を一緒に過ごすプロジェクトを通じたOJT不足」
●「抽象化チャートの作成機会は減少」
といった問題は依然存在し続けています。
さらに、最近は開始から終了までクライアントと合わずにリモートで完結するプロジェクトも珍しくなくなりました。またプロジェクト以外での対面での同僚との接点も減ってきています。そのため、同僚との息抜きがてらのくだらない話やちょっとした悩みの相談、社内での自分より大変な状況に陥っている炎上プロジェクトを目撃するといった場がなくなり、ストレスマネジメントが難しくなったという話を聞くようになりました。
一方で、冒頭でもお話したようなコンサルタント不足の状況は続いています。そのため、ストレスマネジメントが上手くなくパフォーマンスが中々上がらない状況に陥ってしまった若手に対しての接し方も変わってきます。つまり、パフォーマンスの上がらない若手に対して以前の様に「早めに本人のキャリアを考えると次を・・・」といったコミュニケーションを取る事に躊躇うようになってきています。この事が本人にとっての良いか悪いかは分かりません。しかし、働き方改革とのダブルパンチでマネージャー以上のシニアとクライアントにとってはチャレンジングな事態になってきている事は確かです。
シニアにとっての変化と影響
以前も、「移動時間の考慮されない"テレビ番組表"のようなスケジュールを設定」という状況に陥っていましたが、この状況はさらに悪化しています。今は2つのリモート会議を平気で設定してくる時代になりつつあります。正確に書くと、保有デバイス(PC、携帯電話、等)の数だけリモート会議には参加可能という発想の下でスケジュールが組まれ始めているのではないでしょうか。
結果、基本は複数のリモート会議に参加しつつ、手元では時間がない為に他プロジェクトの資料作成を内職する状態がノーマルな状況になりつつあります。
当然、マネージャーは1つのプロジェクトへのシングルアサインが原則のファームもあります。そういったファームではその上のシニア層も結果として担当するプロジェクト数が少なくなる事から、複数のリモート会議に参加して発言をし続ける"聖徳太子"状態に陥る事は少ないです。
しかし、マネージャーが複数プロジェクトを掛け持ちしているファームのシニア層は、旺盛なコンサルティング需要に後押しを受ける形で非常にハードにワークする状況になっています。
実はシニア層まで残るコンサルタントにとって、ハードワーク自体は問題ではありません。私の周りのシニア層も「忙しくなったー。もう働けないなあ。」と言いつつ、ニコニコしながら「よーし、これから新プロジェクトの提案してきます。絶対、Winするぞ!」と発言と行動の同期がとれていない方ばかりです。もちろん、客観的には私もそのカテゴリーに分類されているでしょう。
では、何も影響がないのかと言うと、そんな事はありません。見過ごせない影響が出始めていると感じています。それは、「経験したプロジェクト数に比例する成長スピードの鈍化問題」です。
どういう問題かと言うと、コロナ以前は対面の打ち合わせではいかに付加価値を出すかにこだわり、毎回の打ち合わせをするたびに脳に汗をかく真剣勝負の場でした。結果、各プロジェクトは夫々に印象深いものとなり、またそこで得たインサイトは記憶に残るアセットとなっていました。
しかし、現在の"聖徳太子"状態での会議参加、並びに資料作成を内職する状況では、そのような真剣に考える修羅場経験の場が明らかに減ってきたと感じています。クライアント自身もリモート会議では、コンサルティングファームのシニア層に対してレポートを超えた、あるいはレポートを踏まえた付加価値を求めるコミュニケーションを画面越しでは取りづらくなってきている状況もあります。つまり、スコープで定められたスコープの範囲内でのレポート結果を淡々と報告していくといった場が増えてきている変化も見られます。
最後に
今後も、withコロナ時代の変化がどのような影響をコンサルティングファームに及ぼしていくのか注視して見て行きたいと思います。
私の予測では、最後に触れたように、シニア層と若手との実力を明確に分けていたインサイトや"面白い事"が言えるか、といった力がシニア層から落ちていくと考えています。結果、今以上に役職の地盤沈下(以前のマネージャークラスの実力を持つ人がシニアマネージャークラスになっている現象)が進み、パフォーマンスに見合わないフィーを請求するコンサルタントが増加していくと考えています。非常に悩ましい事態です。
とはいうものの、そのような中だからこそ新たな価値の出し方を模索するチャンスとも捉えられます。そのようなチャレンジをしたい方はコンサルタントを目指すのも、また楽しいのかもしれません。