はじめに
コンサルティングにおいては、プロジェクト開始前の提案段階から大なり小なりの競合他社調査(ベンチマーク調査)を実施しています。それはクライアントの抱えるイシューに対し、「どう対応すればよいか?」或いは、「どのように考えればよいか?(アプローチすればよいか?)」という仮説立案をする際のヒントや根拠として使用するためです。
調査する競合他社は、"分かり易い"対象から、一見すると分からない対象まで存在します。"分かり易い"対象は、クライアントが分類される業界で先行する企業やグローバルプレイヤー、スタートアップ企業となります。少し離れた競合他社になるとバリューチェーン又やカスタマーエクスペリエンスにおける近接領域に存在するプレイヤーとなります。
しかし、クライアントは分類される業界、又は近接領域のプレイヤーについては、大抵は"知ってるよ"、"既に研究している"といった反応を示されることが多くなります。もちろん、クライアントの抱えるイシューに対して適切な事例(=示唆の導出)であるかという判断軸ではなく、少々、"マウンティング"にも近い行為ではあるので真に受けた反応をする必要はないのですが、コンサルタントととして悔しいのも事実です。
そのため、ポテンシャルの競合を含めた"少々分かり難い"対象をリストアップし調査することがあります。本日は、悔しさを避けるための"少々分かり難い"競合他社を見つけるコンサルティングのポイントをお伝え出来ればと思います。
アナロジーの効く企業の抽出
何をもって競合と定義するのかがポイントとなるのですが、平易な言葉で書くと「一般的には同じような商品・サービスを、同じような顧客へ提供している企業」を競合と見做しているのではないでしょうか。
一方の今回お伝えするポイントは、顧客のビジネスモデルに着目し、そのビジネスモデルがどのように機能しているのかを抽象化した上で、同じように機能するビジネスモデルを持つプレイヤーを競合と見做す方法です。(=アナロジーの効く企業の抽出)
当然、取り扱い商品・サービスも異なりますし、仕入れ先や売り先を含めたオペレーションモデルも異なりますので、直ぐには直接の競合とはなりません。しかし、本気で同様のビジネスを取り組もうとした際、脅威になる可能性を秘めているプレイヤーと言えるのではないでしょうか。また、潜在的な競合として良い点を学ぶという目的においては非常に役立つことが多いです。
事例
あまりイメージが湧かないと思いますので、過去事例を交えてお伝え出来ればと思います。
1つ目はITの運用・保守ビジネスを手掛ける企業へ提示した競合他社ベンチマークの事例となります。ITの運用・保守ビジネスは顧客のサーバやネットワークの性能保全や機能最適化/アップデート、並びに不具合の未然防止と発生時の速やかな回復を行う仕事となります。その会社はリモート監視を行い、不具合検知の際に必要に応じて回復のために現地へ駆けつけるサービスを提供していました。
色々な見方が出来ますが、当時はこのサービスを「通常時はリモート監視→インシデント発生時に対応→必要に応じてフィールドワーク出来る人が駆けつけて対応」と抽象化した機能で構成されていると整理しました。そして、類似機能を持つ会社はどこか?という視点で調査すると、警備業界の大手企業が1つの競合他社として浮かび上がってきました。
その会社はリアルな面での侵入等の危機をリモート監視し、異常検知の際は警備員が駆けつけ対応するサービスを提供していました。詳しくその企業の見てみるとITへ積極的に投資をしており、運用・保守ビジネスを開始しつつある状況で、"少々分かり難い"競合他社を早期発見出来たこと、そしてベンチマークを通じて近接業界の企業のみでは気付けなかった点を学べたことを非常に喜ばれた記憶があります。
最後に
皆さんの所属する会社においても同業界、並びに近接領域に競合と見做されている会社が存在しているかと思います。一方で、今回紹介した観点で見ていくと、他人事だと思っていた会社が実は競合であった、又は潜在的な競合であることに気付けるかもしれません。
また、普段の業務に活かすだけでなく自身の成長を考えた時に、このようなコンサルタントの思考法やテクニックに興味を持ち、更に学んでいきたい方はコンサルティング業界を目指されても良いかもしれません。