はじめに
「この1時間でクライアントに対して、いくらチャージしているか分かっているのか?」
「クライアントの立場になった時に、この時間でこの程度の成果物しか出ないとどう思うか?」
といった熱血指導はコンサルティング業界ではお馴染みの光景です。
これは、新人への洗礼でも、言い掛かりのようなお小言でもなく、高額フィーを受け取り仕事をするプロフェッショナルとしては本気の発言です。
全ての人にとって24時間という制約は平等に存在しています。そのため、プロジェクトにおいてイシューを解くために自らの価値を最大化する時間の使い方が求められます。コンサルタント個人としても、またプロジェクトマネジメントをする立場であればチーム全体の生産性を最大化する時間の使い方が求められます。
そして、コンサルティングファームでは昔から、マインドセットや仕事の仕方のノウハウ以外に、この生産性を最大化する仕組みが整備されてきました。
今回のテーマである「アシスタント」も、その仕組みの1つです。昔からアシスタントと上手に連携して、各コンサルタントの役職に期待される価値の最大化を目指してきました。今回は、その上手な連携の仕方についてお話できればと思います。
アシスタントとは
アシスタントからの支援業務にはいくつか種類があり、その整備対象・レベルもファームにより幅があります。
耳にしたことがあるかと思いますが「インドのリサーチセンターで安い人件費の人材が調査」といったリサーチ業務から、"ロジックマフィア"と言われていた某戦略ファームにおける「コンテンツ構成のストーリーロジックをチェック」といった高度なレベルでの支援まで種類が存在します。
ファームによってアシスタント業務の対応範囲やその分類・呼び方は異なりますが、役割でいうと大きく3つに大別されるのではないでしょうか。
1.アドミン業務:
スケジュール調整や印刷、各種郵送物の発送といった事務業務。例えば、常駐する場合の"常駐部屋セット"(プリンター、プロジェクター、タコ足ケーブル、ノート・筆記用具等)の配送手配といった業務も含まれる。
2.リサーチ業務:
デスクトップサーチや書籍のデータ打ち込みといったコンサルティング業務の基礎データ作成業務。例えば、以前であるとJETROや国会図書館に訪問して該当データをコピーするといった業務も含まれる(昔からいるコンサルタントにとっては、"あるある"の懐かしい業務)。
3.プロダクション業務:
手書きのメモや内容のスライド化、エクセルの図表化といったコンサルティング業務の納品資料に関わるドラフト資料の作成業務。例えば、既存資料を複数ファイル渡して、作りたい資料の構成を伝えれば、該当資料を抜粋するといった業務も含まれる(コンサルタントによる講演の資料ドラフトは、このように作成される場合が多い)
上手い連携方法
色々なアシスタント業務がある中、全ての業務に対応できるわけではありません。その期待役割の範囲内でできること、できないことをしっかりと見極めて上手く連携することが重要です。
例えば、あるテーマの過去事例を調べたい場合、
「XXのテーマを調べて、纏めておいて」
と依頼するよりは
「XXのテーマを調べたいけど、エクセルのフォーマットを作成したので、このデータソースを調べて、ここのマスを埋めていって。2-3時間でできる範囲までで大丈夫」
といったように成果物を定義した依頼の仕方をする方が望ましいです。
最大のコツは、アシスタントの判断や思考が極力少なくて済むように、依頼の際にひと手間加えるのを惜しまないことです。
この手間を惜しむと、求める水準の成果物は出てこず、無駄な時間が過ぎる、手戻りが発生するといった状態になります。
また、スケジュール調整の依頼といった一見簡単そうに依頼できる業務も、調整を見越してメールでのやりとりの最初からアシスタントを含めるといった工夫が必要です。
メールのやりとりに含まれていなければ、アシスタントは調整の背景や誰を優先したスケジュール調整をすればよいかといった判断ができません。
結局、自分で調整した方が早いし、質も高いといった状況になることもあります。
つまり、上手く連携できないのにアシスタントに頼んでしまうと、かえって生産性を下げる状況が生まれる恐れがあります。
そういった意味では、アシスタントに依頼する際は上記のような連携の工夫をするか、
もしくは、アシスタントに依頼する業務は
●スタンドアロンで業務が完結する
●前提やコンテクストの解釈が少ない
といった性質を持つものだけに見極めて依頼していくことが求められます。
最後に
徐々に、アシスタント業務も新テクノロジーを取り込んだITツールに代替されつつあります。例えば、翻訳業務はほぼ代替されてきました。今はITツールによる翻訳後に文脈の意味があっているかといったチェック・校正業務に役割は限定されています。
コンサルタントにとっては冒頭で述べた通り、単位時間当たりの生産性を最大化されることが活用の目的です。そのため、アシスタントであろうがITツールであろうが、常にその時代における生産性の最大化にこだわる働き方を模索し続けるのが、コンサルタントという存在と言えるのではないでしょうか。