はじめに
以前より、公務員からコンサルティング業界へキャリアチェンジされる方をちらほらと見かけました。
ただし、かつての公務員からコンサルティング業界へのキャリアチェンジといえば、採用時の試験区分によって分類される幹部候補グループ(いわゆる、"キャリア")の方がほとんどでした。
キャリアチェンジをされる方の中には、国費による海外留学を経て転職をされるケースも珍しくなく、入社時に提供される特別サインナップに、国費返済が含まれている戦略ファームも存在します。なお、一国民の立場としては、国の将来を担う優秀な方々が戦略ファームへキャリアチェンジすることに思う点はありました。
一方、最近は"キャリア"ではない公務員の方のキャリアチェンジも見かけるようになりました。特に、地方創生や地域自治体でのDX関連の業務に携われていた方のキャリアチェンジが多い印象です。
以前のように元公務員の方でキャリアチェンジをされた方はほぼ"キャリア"という状況から、多様性が出てきているのが現在のコンサルティング業界です。
このような状況の中、公務員といっても"キャリア"と他公務員ではコンサルへ転職したい場合、まずやるべきことというのは少し異なると考えています。
もちろん、応募者により異なることは承知していますが、今回は"キャリア"と他公務員とで、コンサルティングファームとして見る視点が若干異なる事も事実ではあるので、その点も踏まえてお伝えできればと思います。
コンサル業務視点から見た"キャリア"と他公務員出身者の違い
既に戦略ファームにおいては、"キャリア"と他公務員で、明文化されているか否かは別問題としてあるものの、肌感覚としてはある程度の違いを理解しています。
まず、2つの違いが一番大きいのは、知識・経験面での特性です。
"キャリア"の方は政策動向を含むマクロ動向に強い傾向があります。また、現状を把握するために、何をチェックするべきかを理解されている方も多いのが特長です。そのため、他公務員の方よりは基礎調査といったジュニアコンサルタントのワークでの立ち上がりは早い印象を持ちます。
次に、知識・経験面ほど大きなスキルの差はないものの、マインド・姿勢面での違いが大きいのが資料作成スキルです。
資料作成スキルの面では、正直、キャリア/非キャリアに関わらず素人に近い印象を持ちますが、マインド・姿勢面では、
・仕事への時間軸の考え方("キャリア"は期限から逆算してやるべきことを考え、他公務員は積み上げで考えていく方が多い)
・精神的なタフさ
の面で違いを感じます。
最後に、あまり違いを感じないのはコミュニケーションの側面です。
これに関しては、出身に関わらず公務員の方はコミュニケーションスキルが高い傾向にあると言えるでしょう。ただし、アントレプレナーシップ精神に基づく新しいものごとへの能動的なチャレンジと言う点ではパッとしない印象を持ちます。
このように、コンサルタントはキャリア/非キャリアの違いを、知識・経験、資料作成スキル、マインド・姿勢といった観点で理解をしています。
そのため、まずやるべきことは何かという最初の問いに戻ると、今挙げたようなコンサルティングファームが一般的に抱く印象を良い意味で超えていく準備に取り掛かることになると考えます。
例えば、良い意味で期待を裏切るような経験や実績を具体的に語れると魅力的です。また目指そうと考えた時点では経験や実績がなかったとしても、未経験の分野に対してチャレンジし、キャッチアップをして軌道に乗せていったといった過去の経験の棚卸しを行うことが重要になります。
なお、先ほど述べたコンサルティングファームが公務員に持つ印象は粒度粗く書いています。そういった意味だと、志望するコンサルティングファームが"キャリア"と他公務員に対して、どういう印象を持っているかを把握していくことを最初のステップにしても良いかもしれません。
何よりも大切なのは、相手の判断基準や事前に抱いている考えを把握し、そこを超えていくという極めてスタンダードなアプローチを徹底することです。
入社後の留意点
転職に向けた準備としての観点でお伝えしていますが、入社後のことにも少し触れたいと思います。
基本、"キャリア"であろうが他公務員であろうが、即コンサルティング業務で戦略になるとは考えていません。そのため、"キャリア"であろうが他公務員であろうが、入社後にやることは同じです。
コンサルティングファームへの入社後は、今まで学んできたことをアンラーニングし、愚直に新しいお作法を吸収し、日々成長に向けた努力をし続けるだけになります。
その点を理解し、"キャリア"だから出来るとか、そういった考えは捨てた方が無難です。出身により先輩コンサルタントたちはマネジメントのスタイルは変えるかもしれませんが、クライアントへの価値創出と言う観点では平等に扱います。
最後に
先ほど、過去の経験の棚卸しを行うことが重要と述べました。このことは棚卸しを通じて、自分にはコンサルティング業界は向いてないな、といった前向きな判断をする上でも有効な手法です。向いてない場合は無理にコンサルティング業界へ転職しても不幸になるだけです。
また、コンサルティング業界にいる身としては、公務員として活躍されている方にコンサルティング業界を目指して頂けることは嬉しい反面、国のための仕事という重責において活躍していただく事も非常に嬉しく思っています。