はじめに
以前よりコンサルティング業務は、基本は場所に縛られることなく仕事ができるという特徴を色濃く持っていました。もちろんプロジェクトのイシューにより同じ場所で朝から晩まで一緒に過ごした方が良いタイプも存在します。つまり、価値創出を第一の目的として、「働く場所はその手段に過ぎない」という発想でコンサルティング業務は成り立っています。
最近では、新型コロナによって加速されたリモートワークに対するクライアントサイドのリテラシー向上やリモートでの忌避感の低減により、ますます働く場所を自由に選択できる環境になってきています。しかし、そのような中でもコンサルタントのUターン・Iターンは意外と動きとして変わっていない肌感覚を持っています。つまり、メディアで騒がれているほどの盛り上がりはコンサルティング業界においては見られず、以前より地方で働きたい人は地方を選択していくし、また都内で働きたい人は都内での働き方を選択していく比率は変わっていないのではないでしょうか。
言い換えると最近のトレンドを踏まえた働き方の変化や求められるケイパビリティの変化が起きている状況ではなく、以前からのUターン・Iターン事情とほぼ変わらないのが実態ではないかと思います。
2パターンのUターン・Iターンのコンサルタント
Uターン・Iターンのコンサルタントは大きく2パターンに分けられると思います。1つは地方内での活動を軸においたコンサルタント、もう1つは地方に居住して都会と地方を跨いだ活動を軸においたコンサルタントになります。
1つ目のコンサルタントは、そのままコンサルタントとして活動するタイプと、プロ経営者や事業承継による家業を継ぐタイプに分かれるかと思います。都内でコンサルタントとして活躍した後に地方の企業に就職するという方は私の知る範囲ではあまり見かけることはありません。
そのままコンサルタントとして活動するタイプの方は、傾向として"そこそこ"の活躍で終わり、都内に戻ってきている方が多い印象を持ちます。基本的には、地方で働かれていた方よりもベースのオペレーション処理能力は高く、事業の捉え方や高い視点を持っているコンサルタントが多くなります。しかし、実態としては"そこそこ"の活躍に留まっています。
地方でコンサルティングを行う中でも同じ場面に遭遇しますが、地方における仕事は必ずしも合理的な経済活動が前提となっている訳ではありません。しがらみ、好き・嫌い、貸し借りといった歴史や情緒面を考慮した判断で経済活動が成り立っているように感じています。この経済活動の前提を"非合理なモノ、古臭いモノ"と重要視せずに、今までコンサルタントとして評価されてきたロジックに重きをおいて活動をしがちな方が、受け入れられずに"そこそこ"の活躍になっているのではないでしょうか。
2つ目の都会と地方を跨いだコンサルタントは上手くやっている方が多い印象を受けます。これは、先ほどのつまずきにあった評価されてきたコンサルタントとしての動きが通じるスキルをベースに都内のクライアントへ価値提供している側面と、そこで得た知見やネットワークを地方へ価値として還流して価値提供している側面をバランスよくされているからではないかと見ています。
また都会と地方の懸け橋として還流するだけでなく、地方でのつながりや良さを都会へ輸出する役割も担っており、都会と地方を行き来する地域に埋もれない動き方をしている方がうまくやっていけている印象を持ちます。
最後に
昔からUターン・Iターンの動きは存在していました。そして一部の成功事例がメディアに華々しく取り上げられることで、都会で働くことに疲れたとしてもUターン・Iターンをすれば一つのキャリアとして成功する、という誤解を生む土壌が出来ていたかと思います。
しかし、その背後には多くの失敗事例があり、またそもそもとして成功しやすい、失敗しやすい動き方も存在します。本稿が解像度を上げて、ご自身のキャリアを考える助けになればと思います。