はじめに
コンサルティング業界全般やファーム全体で捉えてみると、現在コンサルタントとして働く方々は、不景気をあまり感じないかもしれません。ただし、専門領域別(自動車や家電といった産業軸やPMIやSCMといったコンピテンス軸、等々)では、ファームによっては案件が少ない状況と聞いています。しかし、全体感としてはコンサルティング業界は好調と言えます。
また、基本は好景気においては成長戦略、不景気においては事業再生といったように景気の浮き沈みに応じた案件ニーズが発生するのがコンサルティング業界です。もちろん、ファームによっては得意不得意があることから景気から受ける影響の程度は異なります。また、ファームが一定以上の規模の場合を除き、固定費は軽い構造なのでファーム自体が危機を感じる程の不景気を感じることは、よっぽど事業投資で失敗したとかでない限りは考えにくい状況です。
ただし、不景気な時期が存在しなかったかと言えば、そんなことはありません。2000年代に入ってから最近までに影響を与えた出来事は大きく3つあります。2008年のリーマンショック(サブプライム問題)、2011年の震災、2019年のコロナです。後半2つの出来事は一時的に落ち込むものの、変化に対応するために新たな需要(エネルギー対応、デジタル・SCM対応、等)も同時に生まれています。その結果、すぐに景気が戻り、むしろコンサルタントが足りなくなる状況となりました。
しかし、リーマンショックは企業活動に何か変化を与えるものではありませんでした。各企業によるコンサルティング依頼への引き締めが非常に強くなっていた記憶があります。蛇足ですが、この時期ぐらいからコンサルティングファームの各社が伝統的なコンサルティングビジネス以外の収益モデルの探索を進めていたのも記憶しています(成果報酬型コンサルティング、事業投資を通じたバリューアップやEXIT、BPO,等)。
今回は、そういったリーマンショックの際も好調であったコンサルタントたちの状況も振り返りつつ、不況期に強いコンサルタントの条件についてお伝えできればと思います。
コンテンツに入っていけるコンサルタント
コンサルタントは、ファームを卒業して事業会社へ就職したとしても繋がり続けている場合が多いのではないでしょうか。それは、一緒に辛い状況を乗り越えたという仲間意識や、事業会社へ入社した際の期待値から事業会社のプロジェクト型の業務に配属される事が多いためにコンサルティング起用が必要になりがち(故に、友人を通じて誰が任せてもよさそうな人が情報収集する)という実務上の理由が存在するためです。
そして、不景気で予算が限られている状況では頼むコンサルタントを慎重に選択します。有名なファームだから依頼するというよりは、あの人だから依頼するという発想になります。ファーム出身者であれば、昔の同僚を頭に浮かべて成果にコミットしてくれるコンサルタントへ声がけをします。ファーム出身でない方も、ファーム出身の方へ情報収集をします。
つまり普段からプロジェクトにコミットをしてコンテンツに入ってインパクトを出している人が不景気でもバイネームでプロジェクトの依頼が舞い込んでいました。賢明な読者の方は気づいたかもしれませんが、言い換えると、普段からプロジェクトにコミットせずにインパクトを出せないコンサルタントもいるということです。
例えばファームによっては、過去の経緯から案件の入口管理(問い合わせ窓口となりマネージャーへ丸投げ)のみをしているといったシニアクラスは一定数存在します。その姿を見て危機感を覚えた若者が戦略ファームへ転職を希望している現状もあります。一方で、転職して"コスパが悪い"と戻る方も一定数います。
ただし、プロジェクトにコミットせずに内部指向の方は、ある意味、自身がプロジェクトで価値を出せないことも分かっているため、社内政治に精を出して力を持っている場合もあります。結果、政治力を駆使して、ちょっとの不景気ではアウトされにくい、という事情もあります。
最後に
意外かもしれませんがコンテンツに入っていけるコンサルタントはジェネラリストに多く見られます。特定領域の知見を持っていることは不景気ではあまり役立ちません。なぜならクライアントは全体的に悪い景況感の中で脱出する一手を求めており、未経験での状況に対してチャレンジして乗り越えていけるコンサルタントを求めているためです。
そのため、ジュニアの頃からの幅広い産業やプロジェクト(戦略、実行系、等)を経験してきた人は、好む好まざるに関わらず、ほぼ毎回、新たな領域へ挑戦して乗り越えてきたケイパビリティを持っています。当時は、そこが求められているように感じました。
今後、不景気な状況になるかは分かりませんが、さまざまな取り巻く事業環境に対する将来の可能性を想定し、皆さんもキャリアを構築してみては如何でしょうか。