はじめに
皆さんもキャリアの"成長曲線"という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。横軸として年齢を設定した上で縦軸に自分の能力やケイパビリティを感覚で書いていくパターンもあれば、その他の表現パターンもあります。自身が成長しているか否かを感覚ベースとはなりますが"成長曲線"というフレームを通じて可視化した上で、これまでのキャリア形成の振り返りや今後の成長に向けた方向性やアクションを考える際によく利用します。
コンサルタントの"成長曲線"は線形な右肩上がりというよりは、フラットな状態が一定期間継続した後に一気に上昇するのを繰り返すパターンを描くと、よく言われています。
この一気に上昇するタイミングは、何か特別な経験によって生み出されるものではありません。日頃からの成長への努力を積み重ねた結果、唐突に花開くといったイメージの方が近くなります。なお、実際は唐突に花開くというよりは、あるプロジェクトが終わり、別プロジェクトにアサインされたタイミングで花開く感覚です。
つまり、「以前のプロジェクトで出来ていなかったことが、今回のプロジェクトでは出来た!」と感じるタイミングが、成長を実感するタイミングだと言えるでしょう。
また、ファーム内で昇格した後に初めてその昇格後の役割で関わったプロジェクトでは、「本当にクライアントへ価値提供が出来るか?」といった責任への重圧で非常に大変なものです。しかし、その次のプロジェクト、また次のプロジェクトといったように回数を重ねてくると、軽々とその昇格後の役割にも対応できるようになっています。
このように、新たなプロジェクトへアサインされた時、特に昇格後の1つ目のプロジェクトが終わった後の数回のプロジェクトで成長を強く実感するのが、コンサルタントの実際ではないでしょうか。
筆者の感じた成長を実感した出来事
筆者自身もマネージャーになった後の初めてのプロジェクトでは、会議前はプレゼンテーションの準備を入念に実施し、当日もガチガチに何を話すのかを考えて準備をして取り組んでいました。それでも緊張で上手く話が出来ずに苦労した記憶があります。
それが現在では、嘘のような本当の話ですが、クライアントとの会議で使用する資料をノーショー(no show)の状態で参加したとしても、パッと見て何を話せばよいか理解してプレゼンテーションすることが出来ます。もちろん、その内容は当時のガチガチに準備をした時よりも何十倍も良いものになります。なお、名誉のために書いておくとノーショーで会議に参加するのはよっぽどの場合だけで、基本はしっかりとレビューしメッセージを練り込んでのぞみます。
また、クライアントとの討議の際に、「こういうことも困ってませんか?」「こういうアプローチで考えると良いのではないでしょうか?」といったように発言し、クライアントから「分かっているね、まさに
その点も悩んでいてさ」と認められる瞬間に成長を実感します。コンサルタントが先ほどのように提案型の発言が出来る背景には過去の経験が存在しています。
皆さんもMBAの価値は過去事例に基づいた経営としての意思決定のケーススタディを千本ノックで取り組む点にある、といった話を耳にされたこともあると思います。コンサルタントも同様です。短期で繰り返される濃密なプロジェクト経験を通じて、「このような状況だと、このようなイシューが存在するのではないか?」と鼻が利くようになります。この鼻が利く瞬間に成長を実感します。
なお、さらに成長するとクライアントの所属産業が異なったとしても、アナロジーを利かせることが出来るようになってきます。例えば、商社業界向けのプロジェクト経験を踏まえて、現在、ビジネスモデルを転換中である建設業界向けにアナロジーを効かせた発言が出来ます。本社のコア/ノンコア機能の分離や、業務の内外政策(内製化するか、外注化するかの業務の切り分け)のあり方といったことについて、過去に商社業界で起きた出来事に基づいた価値あるコメントが出来るようになります。
最後に
コンサルタントの方は、そうそう!と思う、玄人好みの内容だったかもしれません。重要なことは、どこかのタイミングで突然成長するのではなく、コンサルタントも日々の積み重ねにより成長するということです。ただし、そのスピード感と濃密さが異なることから、コンサルティング業界以外の方から見ると突然成長したように見えるのかもしれません。このようなコンサルティング業界での成長に興味を持たれたら皆さんもチャレンジングしても良いかもしれません。