はじめに
コンサルタント業界に入る方には、いつも「アスピレーション(Aspiration)を持って骨太な生き方をして欲しい」と伝えています。誤解は解けつつありますが、まだまだコンサルティング業界は華やかに見えます。しかし、実際の仕事は辛いことの連続ばかりです。信念がないと「私は一日中エクセルとパワーポイントを触っていて、ロジックロジックと呟きながら何をやっているのだろう?」と人生を考えることが多くなるためです。
一方で、アスピレーションが大事だとメッセージをしていますが、私自身はやりたいことは見つかりませんでした。そして今も見つかってない結果として、コンサルティング業界に残り続けているだけかもしれません。もちろん、「早くマネージャーになりたい」「こういうタイプのプロジェクトをやってみたい」、「自分でコンサルティングのチームを作って、クライアントへの価値提供のインパクトを高めたい」といった希望はありました。今も「ファームをこういう方向で成長させたい」といった希望はあります。
しかし、日々接している経営陣の「こうしたい」という強い意思に触れていると、どうしても私自身として何をしたいのかという希望が非常にちっぽけに見えてしまいます。他人から見ると、「次から次にやりたいことをやって楽しそうですね!」と言われることが多いのも事実ですが、その比較軸を持つために「私はやりたいことが見つからない」という状態になっているのでは、とも思います。
このことからの教訓は、「やりたいこと」のレベル感は人それぞれである前提に立ち、ちょっとでも興味を持ったり取り組んでみたりしたいなと思うことを大切にすることが、「やりたいことが見つかれない」状態(アスピレーションを持たない状態)を避けることに繋がると考えています。しかし、この「やりたいこと」の芽が見つからないこともあるのも現実ではあるので、本日は「やりたいことが見つからない」時の過ごし方についてお伝え出来ればと思います。
やりたいことの見つけ方
「やりたいことが見つからない」時の過ごし方は大きく2つに分類されます。
1つは「見つからないことに悩む時間がないぐらいに一生懸命にプロジェクトに打ち込む」過ごし方です。オンの時間が長い忙しいプロジェクトは日常の悩みを考えさせる暇も与えません。
そして、これはコンサルティングあるあるとなりますが、一生懸命にプロジェクトをしていると、そのプロジェクトに関わるテーマや産業に関係する「やりたいこと」が見つかってくることが多いです。
プロジェクトは強制的に知る機会を作る(実態は、深く知らないとプロジェクトでバリューを出せない)ため、
「深く知らないと、やりたいことが見つからない」
↓
「やりたいことが見つからないから、深く知るといった行動もとりにくい」
という"鶏卵の状態"からの脱出がかなうことがあります。
もちろん身につけたケイパビリティや培ったネットワークも後押しの要素として存在しますが、コンサルタント出身の方で生き生きと「やりたいこと」を見つけて、取り組んでいる人が多いように外部からは見えるかもしれません。
もう1つは先ほど触れた「やりたいこと」の芽を見つける活動に取り組むことです。「やりたいこと」の芽を見つける観点としては、
・年齢に見合った業務や立場を考えてみる (世の中に求められる期待との対比から見つける)
→例えば、30代だと組織を率いるチームリーダーのポジション経験が求められる、等
・関係者(特にファーム卒業したアルムナイ)に話を聞きに行く (将来の姿との対比から見つける)
→例えば、コンサルタントのこの経験や出来事が今に繋がっている、等
・転職エージェントに話を聞きに行く (採用市場動向(現在やりたい事を見つけようとしている人たちが何を狙って動いているか)との対比から見つける)
→例えば、東南アジアでのスタートアップを希望する人が多い、等
といったようなものが筆者の周りのコンサルタントでは散見されます。それ以外にも読書をする人や、筆者の知る限りでは夜に港までドライブをして薄暗い倉庫街の中で閃いたという人もおり、色々なスタイルがあるかと思います。共通するのはいかに全体感を持って相対的に自分の状況を見られるかではないでしょうか。
最後に
コンサルタントの良い所は「やりたいことが見つからない」状態だったとしても、プロジェクト経験を重ねていくことで、キャリアの潰しがききやすくなるという点です。
難易度の高いイシューに対して高サイクルで学習して解いていく。そして実行に繋げる提言や時には実行のリードまで行う経験を積んでいる人材は引く手あまたであることは間違いありません。
極端な話、やりたいことがない人こそコンサルティング業界がおすすめという側面も存在するかもしれません。