はじめに
これは筆者の持論ですが「経験をしているからこそ知識を上手く活用できる」、「知識があるからこそ経験に意味を見出すことができる」と考えています。
例えば、同じ書籍を別々の人が読んで知識を得たとしても、その知識から得られる解釈や現実のどの場面で活用可能かといった点で経験がものを言います。「社会人経験のある先生とか教授」といったワーディングも聞いたことがあるかと思いますが、そういったワーディングの裏には経験があるからこそ知識を上手く活用できるという考えが存在しているのではないでしょうか。
また、同じクライアントとの会議に出て討議をしたとしても、その会議を踏まえた気づきやクライアントに対して何をすればよいか、といったことを考える上では知識がものを言います。非常にプリミティブな話をすると、3C(Customer, Competitor, Company)という単語が分からなければ「3Cで考えると、こうも考えられないか?」とクライアントから発言があった時に、「確かにこういったことが考えられる」と思う人と、「横文字が出たぞ。どういうことだろう」と思うコンサルが存在することがあります。
なお、3Cは誰でも分かるだろうと思われる方が多いかもしれませんが、最近だとCCC(Cash Conversion Cycle)がサプライチェーンの議論で出た際に、参加していたコンサルタントの一人が「カルチュア・コンビニエンス・クラブ?ECが流行っているからTSUTAYAについて言及したのか?、けど意味が通じない。。」といったことをミーティングの後に発言していた記憶があります。
ただし、この「経験をしているからこそ知識を上手く活用できる」、「知識があるからこそ経験に意味を見出すことができる」は両方重要なものの、コンサルタントとして若手の時期かそれともシニアの時期かにより、どちらを重視するかは異なります。
若手の時期
若手の時期はとにかく知識のインプットを重視することになります。それは、若手であるが故に経験の場は限られます。そのため、経験に基づいて知識を上手く活用するよりは、少ない経験をいかに価値に繋げるかといったことの方がクライアントへインパクトがあります。
私自身、今では経験が蓄積されているので少なくはなってきていますが、新しいプロジェクトにアサインされた際は、相当に書籍を読んでいました。3か月程度のプロジェクト期間では平均して30冊以上は読んでいました。ただし、世の中の先端テーマのプロジェクトではテーマに類似する書籍の発刊は少ないです。そのため、当時はAmazonといったECではなく本屋を探索、あるいは国立図書館に通って該当ページを印刷といったこともしていました。
シニアの時期
一方、シニアになった時は、インプットの時間が減る(新しいことを勉強する気力も持たない)という事情もあり、経験を重視していく傾向にあります。そのため、いわゆる引き出しと言われる、経験に基づくアナロジーやインサイトの観点を武器に、限られた情報や知識を何倍もの価値のあるインパクトへ繋げていきます。
私自身、今では初見のイシューであっても過去の経験に照らした類似点から、プロジェクトに100%アサインされる若手よりも面白いことやブレークスルーに繋がる分析の示唆を出す機会が増えてきました。また、数年前までは周りではIT産業での経験の長いコンサルタントが自動車産業のプロジェクトに呼ばれて、一足先に起きていた経験(レイヤー構造への転換)を例に価値を出していました。
最後に
経験と知識のどちらを重視するかという問いに対して、突き詰めていくと、ケースバイケースであり、またどちらも重視すると言うコンサルタントは多いかと思います。
本日はコンサルタントとしてのキャリア形成に紐づく形でイメージが湧きやすいように若手-シニアという時期の観点で皆さんにお伝えしてきました。そのため、「若いころは経験は重視しない」といったことではなく、程度問題と受け取って頂ければとは思っています。