はじめに
近年、コンサルティング業界以外の企業でも「イシュー(課題)が大事」という認識が徐々に浸透してきていると感じます。
イシューと横文字で表現をしなくても、日本では以前より「目のつけどころが大事」といった言葉も使われていることから、概念としては慣れ親しんで来たものと言えるのではないでしょうか。
そもそも解く問いを間違えると、その後でどんなに頑張ったとしても結果に繋がりません。
プロフェッショナルの仕事においては、クライアントから見たら結果が出てなければ、いくら途中で頑張っていたとしても良い評価を得ることはありません。また、一定の区切られた期間内で結果を出していくことが求められるコンサルティングにおいては、一度間違った問いを立てて検討を進めると、間違っていたと気づいた後に再検討をしようとしても時間切れとなります。
そのため、コンサルティングにおいては解くべきイシューについては徹底的に議論をしています。
ともすると、解くべきイシューを設定するには、それなりに経験を積んだ人たちが一定の時間を費やして議論する必要があるという印象が強いかもしれません。
しかし、実際は本テーマである「課題設定力」とは一定の訓練を通じて身につけられる力です。
この身につけることが出来る課題設定力とは、どのような定義であるかを確認した後に、その身につけ方をお伝え出来ればと思います。
課題設定力とは
良い課題設定(=筋の良いイシュー、良い目のつけどころ)とは、
●設定された課題を解いた結果が成果に繋がる
●得られる成果がインパクトを持っている
の2点を最低限は満たしています。
色々と世の中に良い課題設定を解説した内容は出ていると思いますが、この2点は少なくとも共通しているのではないでしょうか。
言い換えると、良い課題設定とは導出したい成果から逆算して設定されていることがほとんどです。
たとえば、最近の企業はサステナビリティの文脈で様々な取り組みをしています。このサステナビリティへの活動を通じて企業としてどういう成果を得たいかによっては、
①未着手であるサステナビリティの取り組みをどの部署が推進していくのか?
といった課題設定もできるし、
②単なる企業スローガンとならない、自社ならではの事業と紐付いたサステナビリティの取り組みは?
といった課題設定もできます。
課題設定そのものの優劣よりも、得たい成果によって良い課題設定は異なることが重要だと考えてください。
①の課題設定は、企業として取り組むべきことは決まっている中で旗振り役がいないから適切な部署を決めたい、という前提なら良い課題設定と言えます。
一方で、「適切な部署を決める」という成果を得たいのに、②の課題を設定して「事業と紐付いた自社ならではのサステナビリティの取り組みとは?」というような問いを立てても、解いたところで意味はありません。
※余談ですが、コンサルティングの提案場面において、クライアントの目指したいところを理解せずに提案される競合の提案を見る機会もしばしばあります。後者の「単なる企業スローガンとならない、自社ならではの事業と紐付いたサステナビリティの取り組みは?」の方がコンサルティングの提案としては、それっぽいし格好良いのですが、組織議論がしたかったというクライアントに愚痴をこぼされながらお声がけされたこともあります。(そのクライアントはお抱えのコンサルティングファームがあったので、お声がけを頂いた時は非常にびっくりした記憶があります。)
課題設定力の身につけ方
それでは成果から逆算したとしても、実際に筋の良いイシュー、良い目のつけどころと言われる課題設定は、どのようにすればよいでしょうか。
先ほどの例だと、「未着手であるサステナビリティの取り組みをどの部署が推進していくのか?」と設定した後に、更にどの部署が適切かを考える上でのサブイシューに分解していく力となります。
私が良くするのは、ざっと粗めのリサーチをして全体俯瞰や理解をした上で、矛盾や対立に着目、例外に着目、過去と変わるところ/変わってないところの差に着目、類似事例(アナロジー)に着目して課題を設定していきます。
たとえば、先ほどのサステナビリティの部署の話だと、ざっと見ていると事業部の中の1部署として整理している企業とコーポレートに設置している部署に分かれていたと分かったら、その違いに着目して「どの管掌ラインに設置すべきか?」とか「プロフィット責任を負わせるか否か?」といったサブイシューを設定していくことになります。
最後に
例外や過去との変化点、類似事例から設定したサブイシューの分解もあるのですが、ここで面白い切り口で設定できると面白い結果も導出されます。
たとえば、ある資材販売向けのコンサルティングをしている際、その企業のビジネスモデルが、アパレルのビジネスモデルに近しい部分があることに着目して、アパレル企業での悩みをイシューの切り口として解いていくことで、その資材販売会社における業界では見ないが、一方で筋の通っている収益向上策や新規事業を立案し、非常に感謝の言葉を頂いたこともあります。
そのような業務にも興味がある方は、ぜひチャレンジしてはいかがでしょうか。