はじめに
戦略ファームでのコンサルタント不足の傾向は、長く続いている問題です。
現在、私は戦略ファームで中途採用を預かっておりますが、その立場としても引き続きコンサルタント不足に悩むと予測しています。
しかし、以前ほどの逼迫した状況は落ち着き始めているのではないかという肌感覚も同時に持っています。
これは、私個人が先行指標として監査法人系や総合系のコンサルティングファームにおけるコンサルタントの稼働状況をヒアリング等を通じてモニタリングした結果です。段階としては、少し余裕が出始めている様子だと言えるでしょう。
コンサルティングサービスの需給ギャップが生じている原因は、短期的目線、長期的目線の二階建ての構造で成り立っていると見ています。
短期的目線で見た原因は、デジタル対応やサステナビリティ対応といった経営イシューの変化です。
こうした経営イシューの変化による需給バランスの変動は、過去にも「中国・インドへのオフショア対応」「シェアードサービス化」「J-SOX対応」といったタイミングで発生していました。
そのため、歴史を紐解いても自然と経営イシューに基づくコンサルティングニーズへの対応は落ち着いてくると考えています。
もちろん次の経営イシューが生じた際は、短期的にはコンサルティングサービスの供給より需要の方が超えます。しかし、その経営イシューが限定的な領域や機能に留まらない、かつ今回のデジタル対応といった多くの人工を必要とするテーマでない限りにおいては、そこまで深刻な需給ギャップは生じないと見立ててはいます。そして、この短期的な目線において不足している人材は人工となる若手人材となります。
長期的な目線での需給ギャップの原因
一方、長期的な目線での原因はどのようなものが考えられるでしょうか?
私は、一定以上のケイパビリティを備えたマネージャー以上の層の育成が追い付かないことが最大の原因だと考えています。
近年の人材不足に拍車を掛けている要因として、
●一定規模まで拡大したコンサルティングファームが、組織規模を維持しようとする慣性力
●働き方改革によるマネージャー以上への負担増加
という要因があります。
以前より一定以上のケイパビリティを備えたマネージャーが存在すれば、どのような若手人材が入ったとしてもなんとかなりました。言い換えると、どれだけ優れた若手人材がいたとしてもマネージャーのレベルが低いとクライアントの期待を超えることのハードルは高かったということになります。
それだけプロジェクトにおけるマネージャーの重要性は高いものでした。
しかし、高級人材派遣と揶揄されるようなモデルを「PMOと似たようなプロジェクトだよね。」(本当はPMOと高級人材派遣は全く違うものですが)と、コンサルティングと呼称してから一定以上のケイパビリティを備えたマネージャーが存在しなくても、なんとかなってきた体験を積んだ新世代のマネージャーが増えてきました。
その結果、現実問題として多くのマネージャーは端的に言うとクライアントのイシューを解けなくなってきています。以前だとマネージャーと言えないようなレベルのコンサルタントが新世代のマネージャーとして存在しており、以前のマネージャーが解いていたイシューには対応できない状況となっています。
つまり、絶対数では役職者としてのマネージャーは増えているものの、以前のマネージャーというレベルに当てはめると、横ばい、あるいは微増という感覚です。
そして、一度膨れ上がった組織規模の維持という慣性力から、実力のあるマネージャーが担当するプロジェクトは加速度的に増えています。クライアントから仕事を頼まれるパートナーからしてみても、実力のあるマネージャーにお願いをしたいので必然の結果とも言えます。
そして、業務量が一定以上の状態が続き、負荷に耐えかねたマネージャーが業界を去っていくことも珍しくありません。
最後に
需給ギャップの原因を短期的・長期的目線で見て行きましたが、解消の処方箋があるかと言うと非常に迷う話ではあります。
難しい意思決定ですが、コンサルティングファームが成長を目的とするか、それともクライアントへの価値提供を目的として存在するかの問いにどう答えるかしだいとも言えます。しかしどちらにせよ、マネージャー層をどう"辞めたくない"と思わせる状態にするかがポイントだと私は考えています。
このように新世代のマネージャーであったとしても、マネージャーレベルになれば業界から引く手あまたの状態になるコンサルタント業界ではありますが、皆さんも興味があればチャレンジしてはいかがでしょうか。