はじめに
「終わらないプロジェクトはない」と、コンサルティング業界では良く言われています。
どんなにクライアントからのプレッシャーがきつくとも、マネージャーから厳しいフィードバックを受けたとしても、プロジェクトが終われば解放されるので大丈夫、という意味の言葉です。
もちろん、プロジェクトごとに全くすべてから解放される訳ではありません。一定の人間関係やプロジェクトを通じた本人へのレピュテーションは結果として残ります。
しかし、この言葉には「コンサルティング業界以外の会社で長期間勤め上げて形成される人間関係その他のしがらみと比較すれば、プロジェクトの終わりという区切りがあるコンサルタントは恵まれている」という隠れた前提があるので、言われたコンサルタントは「まぁ、そうだよな・・・。もうちょっと頑張ってみるか」と、なることは多いです。
なお「終わらないプロジェクトはない」の後に「けど、終わらない日はある」と冗談のように続けて言われたことがあり、その時は苦笑いをするしかありませんでした。
きついと感じる理由
コンサルティング業務に限りませんが、働いていてきついと感じる要素は、だいたい次の5つに分類できます。
中でも、この中で自分自身が重視していることでネガティブな状況に陥ると、よりきつく感じられます。
①「自分自身に関すること(金銭的/非金銭的報酬が満足しない、行動の自由が制限、等)」
②「仲間/同僚に関すること(お互いのリスペクトがない、仲間/同僚がやるべき事をしていない、等)」
③「会社に関すること(仕事の仕方があわない、倫理観が低い、等)」
④「クライアントに関すること(誠実に価値提供をしていない、成果物のインパクトが低い、等)」
⑤「社会に関すること(世の中のために貢献していない、社会へのインパクトが薄い、等)」
例えば、①「自分自身に関すること」だと、
●働き甲斐があっても、自身の労働時間や貢献価値に見合った報酬が貰えていないと感じる
●組織の方針に沿ったプロジェクト以外のことは、取り組もうとしてもストップをかけられたりする
などです。この状況が続くと、息苦しくきついと感じ始めます。
また、報酬が良くても、クライアントの言われたことを文字に落として資料化する仕事が続き、本人としてはフィーに対して成果物のインパクトが低いと感じるような場合(④クライアントに関すること)、朝起きてからクライアントオフィスへ出社することすら精神的にきつくなってきます。
状況的な問題か構造的な問題か
このようなきついと感じる理由に対してとれる手段は、正直なところでいうと限られます。
ただし、とるべき手段を間違えないために「このきついと感じている環境への自分なりの診断」が必要になります。
例えば、最近では戦略立案を支援する際に、
パンデミックによる消費者行動の変化を前提とした、長期的な戦略を立案するか
それとも、
この状況はここ数年の出来事で消費者行動自体は前に戻る、と考えて立案するか
といった見立てを検討します。
つまり、現在の環境が一過性の変化で状況的な問題なのか、それとも根本的に不可逆な構造的な問題で、何らかの変曲点が訪れない限りは変わらないと考えられるのかを見極める検討をします。
例えば、消費者行動は前者です。緩やかに変化はし続けるものの、外食といった飲食店での食事は引き続きパンデミック前と同様の状況に戻る可能性があります。
一方、サプライチェーンにおける経済安全保障の観点やブロック化の流れは後者です。一定の前提として、構造的に組み込んで検討せざるをえない状況になっています。
こうして環境を見極めてから、改善方法を考えていきます。
繰り返しになりますが、取れる手段は限られます。
構造的な問題で改善の兆しが見られない場合、ファーム内で改善する立場にいないのであれば転職をおすすめします。
その際に「きつい」と感じる理由が業界レベルの課題であるか、ファームレベルの課題であるかを考えてみましょう。
ファームレベルであれば転職先は他ファームが検討できますが、業界レベルの問題であればコンサル以外の別の業界に目を向けていく必要があります。
状況的な問題の場合は、まず一度「終わらないプロジェクトはない」という金言を胸に耐える期間があるかと思います。
もし、耐えられるレベルを超えている場合は、まず求められるのはアラートをあげることです。まわりの社員に「自分がきついと感じている」ことを理由と共に早急に相談しましょう。コンサルタントである以上、クライアントに対してチームとして価値提供をしていく必要があります。そのため「自分がきついと感じていること」も早期にプロジェクトメンバーへ伝え、その上でのリカバリーをどうするかを考えるのがコンサルタントとしての動き方です。
最後に
それでも、周りに相談、アラートをあげられないという方もたまに見かけます。
もし周りに相談もアラートもあげられない状況なら、それは構造的な問題として、今すぐ転職することをお勧めします。
ただし、相談、アラートをあげられない理由が、「恥ずかしい」とか「プライドが......」といった類の理由であれば、一歩踏み出して相談するのがコンサルタントとしての成長です。皆様が成長していくことを期待しています。