はじめに
人生100年時代と呼ばれる今日、長期間にわたって働くことが求められる世の中になってきました。キャリア権という概念も注目され、個々のキャリアプランを考えるだけでなく、組織としても個人のキャリア形成を支援する基盤を提供する必要性が浮上しています。
このような背景を踏まえ、コンサルタントのキャリアプランを考えてみると、コンサルタントは単に所属ファームの指示に従って業務を遂行するだけではありません。実際には、多くのコンサルタントは自らのキャリアを主体的に築いています。
2015年頃から、「銀行よりも処遇が良く、風通しが良さそう」という理由でコンサルティングビジネスに就職する人が増えたことで、キャリアプランに対して他律的な姿勢を持つコンサルタントに出会う機会も増えました。しかし、多くのコンサルタントはファームから提示される安心・安全なキャリアプランを期待しているわけではありません。
つまり、ほとんどのコンサルタントは自らのキャリア開発の責任を自覚しており、所属ファームから提示されるキャリアプランに依存することはありません。私も業界に入った際に、パートナーから「自らのキャリアを骨太く描いていくことを意識して欲しい」と言われました。
その言葉の真意は、コンサルタントはプロジェクトを経てキャリアを築く中で、現在の状況に囚われず将来を見据え、困難な出来事にも立ち向かう精神を持つことが重要だということだと理解しています。
コンサルタントのキャリアプランを実現させていく上での難しさ
コンサルタントのキャリアプランを実現させる上での難しさについて触れましたが、コンサルティングファームにおけるキャリア形成は、他の事業会社とは異なる面があります。
具体的には、プロジェクトを通じて得られる経験や人との出会いが、事前に完全に予測できないという点です。
事業会社の部門であれば、経理や研究開発などのキャリアは、上司の行動や部門の動向を見ることで、将来の方向性や必要な経験がある程度予想できます。しかし、コンサルティングでは似たようなプロジェクトが存在しても、相手の状況やコンテクストによってプロジェクトが異なるため、すべてのプロジェクトが予測通りに進むわけではありません。
例えば、M&Aの経験を積みたいと思っていても、担当するプロジェクトがその経験を得られなさそうだと感じた場合、別のプロジェクトを希望することもあります。しかし、後になってそのプロジェクトでM&Aが必要だったという事態もよくあります。
そのため、自らのキャリアを築くために他のプロジェクトを希望する姿勢でいても、その選択が将来のキャリア形成にどう影響するかは予測が難しい状況にあります。むしろ、アサインする側に「アサインするプロジェクトが制限される面倒なコンサルタント」といった印象を持たれると、ここぞというプロジェクトにおいてアサイン希望が通りにくくなり、キャリアプランを描くうえで遠回りになるといったこともありえます。
また、非常に生々しい話をすると、最終的にキャリアプランを実現させていく、あるいは大きく変化させていく要素は、プロジェクトで一緒に修羅場を経験した上司を含む同僚のコンサルタントたちとのネットワークだという話を多く聞きます。プロジェクトがどのような経験になるかは分からないため、普段選ばないようなプロジェクトに参加することも、将来のキャリア形成に影響を与える可能性があります。
最後に
コンサルタントがキャリアプランを立てる際には、所属するファームの特徴も重要ですが、最終的にはどのようなプロジェクトに参加し、どのような役割を果たしてきたかが重要になります。
キャリアプランを細かく考えすぎて、事前に可能性を制限するのではなく、各プロジェクトで偶然出会うテーマや経験、学びを楽しむ姿勢が重要です。