最初に
コンサルタントという職業は、多くの人にとって憧れの存在かもしれません。高収入、自由な働き方、幅広い知識とスキル、多様なプロジェクトへの参加など、魅力的な面がたくさんあります。しかし、コンサルタントの仕事は決して楽ではありません。現場での苦労やストレスも少なくないことも確かです。
筆者が採用面接で最も質問されることの1つは、この苦労と達成感についてです。おそらく質問者の意図としては、達成感に重きを置いたものかと思われますが、苦労と達成感はだいたいのケースにおいてセットになっています。本稿では、コンサルタントの仕事のリアルを、現場での苦労と達成感の両面から紹介します。
コンサルタントの仕事で苦労する点
まず、コンサルタントの仕事で苦労する点について見ていきましょう。
例えばクライアントを含めた他業界の方から、コンサルタントは常に新しい業界/クライアントのことを勉強したり、初めてトライする業務にもプロフェッショナルとしての価値を求められたりすることが大変な苦労なのではないか、と質問されることがあります。
ただ、これらは苦労というよりも、我々の価値の源泉であり、必ず対応しなければならないものです。そのためここでは違った観点で、コンサルティングのリアルな苦労をいくつか挙げてみます。
● クライアントの要望や状況の変化
提案時に合意したプロジェクトの検討アプローチやゴールが、その後のクライアントの考えや状況の変化によって変わることは、実はそれほど珍しいケースではありません。コンサルタントは、クライアントのニーズに応えるために、常に柔軟に対応しなければなりませんが、当然ながら対応の変更は、予算、スケジュールなどに影響がでることを意味します。
したがって、クライアントの考えや状況の変化にすべて対応するのではなく、それが単なる思い付きや一時的なものなのか、あるいは本当に必要な対応なのかを見極めることが重要です。そのうえでタスクとスケジュールを再設計し、クライアントの期待値をコントロールしながら求められる成果に繋げていくのは、プロジェクトにおける最も骨の折れる対応の1つです
● クライアント関係者が非協力的
クライアントはわざわざ高い費用を支払っているのに、何故そんなことが発生するのか、と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、これも比較的よくあるケースです。
もちろんコンサルティングを依頼する直接のクライアントチームが非協力的なことは基本的にはありません。例えば業務改革の対象部署など、コンサルティングを通じて「変わる」対象となるクライアントの社員や関係者の中には、コンサルタントに対して敵対的な態度をとる人や、協力的でない人もいるのです。
コンサルタントは、そうした人たちとも円滑にコミュニケーションをとり、信頼関係を築かなければなりません。なぜなら、「変わる」対象である人たちとの信頼関係がなければ、その後の成果にも繋がらないからです。
● プロジェクト設計の甘さによる難航
プロフェッショナルとして本来あってはならないことですが、実は一番クリティカルな苦労の発生源がこれではないでしょうか。
設計の甘さには、
・ タスクの工数の見積不足/抜け漏れ
・ クライアントとの期待値の掛け違い
・ メンバーのスキルセットとプロジェクトの要求レベルとのアンマッチ
等、様々な要因があります。その甘さによってプロジェクトが思うように進捗しなかったり、クライアントの期待値に合わない成果物しか提示できなかったりすることで、プロジェクトチームはリカバリに多大な労力を必要とします。
設計の甘さによる苦労は当然クライアントには理解されず(そもそも理解する必要もないのですが)、下手をしたらクレームに繋がるようなものです。
また、自社起因のトラブルは、クライアント起因のトラブルよりもチームのモチベーションを大きく下げてしまいます。本来きちんと提案をリードするシニアメンバーがプロジェクトを設計していれば、しなくてもよい苦労だからです。
コンサルタントの仕事で得られる達成感
次に、コンサルタントの仕事で得られる達成感について見ていきましょう。コンサルタントの仕事は、苦労が多い反面、以下のようなやりがいもあります。
● クライアントの課題を解決
最もわかりやすい達成感はやはりクライアントの課題解決に尽きるでしょう。もちろんコンサルタントだけの力で解決されるケースはほとんどなく、クライアントや関係者の実行や協力あってのものと理解するべきです。
とはいえ、コンサルタントとして課題を分析し、最適な解決策を提案し、実行支援をすることで、クライアントが単独では解決できなかったものを、スピードや品質の点でも上回ることができた時には、プロフェッショナルとしての価値を発揮できたという達成感を味わえると思います。クライアントからの感謝の言葉や、継続的/新しい支援の依頼が、その明確な指標の一つではないでしょうか。
● 支援した結果の公表
上記課題解決の副次的なものにはなりますが、支援を通じて得られた成果をクライアントが世の中に公表することも、個人的には達成感に繋がるものと考えています。
コンサルタントを目指す方は、社会の改善・変革に対し貢献したいという意識を持っている方が多いですが、コンサルティングはあくまで支援の立場であり、最終的にはクライアントが実行主体となります。
したがって、業務の大半は縁の下の力持ち、ということが多いですが、IRや業界のニュース、もしくは大々的なプロモーションなどを通じて、自分の支援した結果が世の中に公表されることがあります。
コンサルティング会社がその場に同席したり、名前が世の中に出ることはあまりないものの、目に見える形で自分たちの成果を実感できることは、大きな達成感を感じられるのではないでしょうか。
● 自身の成長
コンサルティングを目指す方の主たる目標はこの自身の成長にあります。
最初はリサーチワークやドキュメントの整理しか任せられなかったところから、徐々にクライアントへのメッセージを提示したり、プレゼンを任せられたりするようになるといった、日々のワークや求められるロールの変化を感じるのがわかりやすい例でしょう。
また、アナリストやコンサルタントといった、肩書の(比較的早い)変化で自身の成長を感じる方もいるかもしれません。さまざまな業界や分野のクライアントと関わることで、自分の視野や視座が広がることを、実感することもあります。個人的には、そうしたさまざまな視点を活用してCxOとの会話をリードできるようになった時に、自分自身の成長を強く感じました。
多様なプロジェクトと、求められる高い要求水準を通じて、自身の成長を実感できることもコンサルティングを通じて得られる重要な達成感の1つです。
最後に
コンサルタントの仕事のリアルを、現場での苦労と達成感の両面から紹介しました。
コンサルタントの仕事は、魅力的な面だけでなく、困難な面もあります。コンサルタントになることを考えている人は、その両面をしっかりと理解しておく必要があります。コンサルタントの仕事は、自分の能力や努力に応じて、報われるものです。コンサルタントとしてのキャリアを目指す人は、現場での苦労を乗り越え、達成感を味わうことができるでしょう。