はじめに
コンサルタントという仕事は、高いスキルや知識を求められるだけでなく、厳しいスケジュールや「高い費用を払っているんだ!」というクライアントからのプレッシャーにも耐えなければなりません。そのため、コンサルタントのメンタルヘルスは、仕事の質や生産性、さらには人生の幸福度にも大きく影響します。
しかし、コンサルタントの多くは、自分のメンタルヘルスに十分な注意を払っていないのが現状です。自分の感情やストレスを抑え込んだり、仕事に没頭したりして、自分の心の声に耳を傾けることを忘れてしまっているのです。
この記事では、コンサルタントのメンタルヘルス対策として、ストレス管理の実践法を紹介します。ストレスは適度な量であればパフォーマンスを向上させる効果がありますが、過剰になると心身の不調や疾患を引き起こす原因になります。そのため、ストレスをコントロールすることはコンサルタントにとって必須のスキルと言えます。
とはいえコンサルティング業界も昨今の働き方改革やD&Iの影響を受け、大きく変わってきています。特に大手コンサルティング会社においては今やメンタルヘルスの維持に繋がるワークライフバランスの重要性をアピールしていない会社はないでしょう。また、産業医等を通じた定期的なケアもされているなど、従業員のストレスに対する会社の配慮は(ある程度)なされており、筆者がコンサルティング業界に入った2000年代の労働環境とは雲泥の差を感じます。
一方で、仕事の内容が高度化・複雑化している側面もあり、ストレス自体は依然として高い職場であることは間違いありません。そうした意味でストレス管理法はやはり重要です。
ストレス管理の実践法には大きく分けて、ストレスの発生源に対処する方法とストレスの影響に対処する方法の2種類があります。以下ではそれぞれの方法について、具体的な例を挙げて説明します。
ストレスの発生源に対処する方法
ストレスの発生源に対処する方法とはストレスを引き起こす状況や要因を変えるか、自分の対応や見方を変えることで、ストレスを減らす方法です。以下にいくつかの例を示します。
● 仕事の範囲や期限、優先順位を明確にする
・仕事の量や内容が曖昧だと不安や焦りを感じやすくなります。そのため自分の仕事の範囲や期限、優先順位を明確にすることで、ストレスを軽減できます。また、これはストレス対処法でもあり、そもそもコンサルタントとして求められるスキルでもあります。自分の仕事に対する期待値や目標を現実的に設定することも重要です。自分に無理な要求をすると、ストレスが溜まりやすくなります。
● コミュニケーションをとる
・仕事に関する悩みや不満を抱え込んだり人間関係にトラブルがあったりすると、ストレスが高まります。そのため仕事に関する悩みや不満は上司や同僚、友人や家族など信頼できる人に相談することで、ストレスを解消できます。
最近ですとメンター制度等でコミュニケーションをケアする会社が多いようです。基本的には飲み込まず(適切なマナーで)吐き出し、ため込まないことが重要です。
● ネガティブな思考をポジティブに変える
・コンサルタントは他人のせいにせずに内省することが重要ですが、過度に自分を卑下しネガティブになりすぎる必要はありません。
特にコンサル未経験者の方にこの傾向があります。例えば、「自分はダメだ」「仕事がうまくいかない」「誰も自分を理解してくれない」といった思考に囚われ、自らを追い込んでしまいます。しかし、ネガティブになっても意味はなくむしろどうしたらこの状況を解決できるのか、といった前向きな思考に変更していくことが必要です。
「ここまではできたからあとはこれだけ」「あの人に助けてもらえば解決する」「このタスクで挽回する」など、物事を分解し、良い方向にもっていけるのもコンサルタントならではかもしれません。
ストレスの影響に対処する方法
ストレスの影響に対処する方法とは、ストレスが心身に及ぼす影響を緩和する方法です。以下に、いくつかの例を示します。
● リラックスする
・ストレスを感じると自律神経やホルモンのバランスが乱れて、心拍数や血圧が上昇したり筋肉が緊張したりします。そのため、リラックスすることで心身の状態を安定させることが重要です。
リラックスする方法は人それぞれですが、最近だとマインドフルネスや座禅、サウナなどを自分のリラックス法として教えてくれる人たちが増えてきています。なんにせよ、自分に合ったリラックス法を見つけて、定期的に行うことが大切です。
● 運動する
・運動することは、ストレスに対する効果的な方法の1つです。運動することでストレスホルモンの分泌を抑えるとともに、気分を高めるエンドルフィンの分泌を促します。
また、運動することで体力や筋力を向上させることができます。これも筆者周辺に限った話かもしれませんが、マラソンやトライアスロン、筋トレなどハード且つ結果や成長がわかりやすい運動をする人が多い気がします。これもコンサル業界ならではの傾向なのかもしれません。
● 睡眠をとる
・睡眠はストレスに対する最も基本的な対処方法です。睡眠中には、心身の回復や修復が行われます。
そのため、睡眠不足はストレスに対する耐性を低下させるだけでなく、心身の不調や疾患のリスクを高めます。一昔前は徹夜して働くことがコンサルタントの証のような風潮もありましたが、働き方改革やリモートワークが進む現在は、質の良い睡眠をとって(ストレスを解消し)質の高いアウトプットを出すことの方が重要です。
終わりに
この記事ではコンサルタントのメンタルヘルス対策として、ストレス管理の実践法を紹介しました。ストレスは、コンサルタントの仕事に欠かせない要素ですが、過剰になると心身の健康に悪影響を及ぼします。そのため、ストレスをコントロールすることはコンサルタントにとって必須のスキルと言えます。
特にコンサルタント未経験でこの記事を読まれている方にお伝えしておきたいのは、仕事がプロジェクト単位であることのありがたさです。どんなにストレスフルなプロジェクト(仕事の内容、人間関係、などの面で)でも、必ずプロジェクトには期限があり、終わりが来ます。そこでいったんリセットできれば、また次の新しいプロジェクトに進むことができます。ストレスコントロールと、コンサルならではのプロジェクトという働き方、この2つを組み合わせて、適度なストレスを楽しめるようになっていただければ幸いです。