コンサルティングの現場で役立つ実践的なチームビルディング

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チームの結束力と生産性を高めるためのヒント

はじめに

写真:コンサルティングの現場で役立つ実践的なチームビルディング

コンサルティングという仕事は、多様なスキルや知識を持ったメンバーが協力して、クライアントの課題を解決するというものです。そのため、チームビルディングはコンサルティングの現場で欠かせない要素です。チームビルディングとは、チームのメンバーが互いに信頼し、コミュニケーションを円滑にし、目標に向かって協働するための活動やプロセスのことです。チームビルディングを行うことで、チームの結束力や生産性を高めることができます。

実際、一昔前よりもチームビルディングの重要性は上がってきていると感じています。
理由の1つはコンサルティングファームの規模が拡大していること。コンサルティングではプロジェクトごとにチームを組成し、解散を繰り返していくのですが、ファームサイズが拡大していることで、必ずしも同じメンバーがチームとして維持されないことが増えてきました。新しいメンバーでチームを組成しても、チームとして機能させなければいけません。

もう1つは、リモート環境が増えてきていること。当然オンラインでもコミュニケーションは取りますが、対面よりも情報量は限られてしまいます。また、上記にもあるように、これまでリレーションがないメンバーとのやりとりも増え、意図的にチームビルディングを行わないとなかなか結束力は上げられないでしょう。

さらに上げるとするならば、働き方改革の影響も無視できません。長時間・ハードワークが前提であったコンサルティングの働き方を、成果を変えずに時間を短縮するためには、チームとしての生産性を高めるしかありません。

そもそも、チームビルディングは簡単なことではありません。チームのメンバーはそれぞれ個性や価値観が異なり、時には衝突や摩擦が起こることもあります。また、コンサルティングの現場では、締め切りや予算などの制約があり、チームビルディングに十分な時間や資源を割くことができないこともあります。

古い話で恐縮ですが、昔はハードワークの後でも飲み会に行ってお互い様々な話をすることで、チームの結束を高めていました(いたように感じていただけ、の可能性も高いですが)。もちろん今はこんな前時代的なやり方でチームビルディングをしようとしても、誰もついてきてくれないでしょう。

そこで、この文章では、コンサルティングの現場で役立つ実践的なチームビルディングのヒントを紹介します。コンサルティングにおけるチームとは、いわゆる部門組織のチームとプロジェクトごとのプロジェクト・チームがありますが、本稿ではプロジェクト・チームを対象として整理していきます。

コンサルティングの現場で役立つ実践的なチームビルディングのヒントとして、以下の3つを挙げます。
● チームの目標とルールを共有する
● チームのメンバーの強みと弱みを把握する
● チームのメンバーの成長を支援する
それぞれのヒントについて、具体的に見ていきましょう。

チームの目標とルールを共有する

チームビルディングの最初のステップは、チームの目標とルールを共有することです。
チームの目標は、通常はプロジェクトにおけるゴールがそれに該当するでしょう。また、目標をブレイクダウンし、各メンバーの期待役割や責任についても明確にすることも含まれます。チームのルールとは、チームが目標を達成するために従うべき方針や基準のことです。

とはいえそんなに難しく考える必要はなく、例えばタッチポイントの設定の仕方だったり、資料の格納方法だったり、用いるフォーマットだったりと、要はチームとして働きやすくするための決まり事、ぐらいに考えてもらうと良いかと思います。チームの目標とルールを共有することで、チームのメンバーは以下のメリットを得ることができます。
● チームのメンバーが同じ方向に向かって動くことができる
● チームのメンバーが自分の役割や責任を明確にすることができる
● チームのメンバーが互いに期待値や評価基準を合わせることができる
● チームのメンバーが問題や課題に対して効果的に対処することができる

重要なのは、プロジェクトの開始時にこれらを共有することです。クライアント向けのプロジェクト・キックオフを忘れる人はいませんが、チームでのキックオフはすべてのプロジェクトで実施されるとは限りません。プロジェクトワークが本格的に開始するとタスクに追われ、気が付けば目の前の作業に没頭せざるを得なかった・・・などという声を聞くことはよくあります。

例えばチーム・キックオフをする際には(主にプロジェクトマネジャーが)プロジェクト概要以外に以下のようなアジェンダと資料で整理することが考えられます。

● スコープ:
プロジェクトの目的、範囲、成果物、期限、関係者などを視覚的に表現したもの。スコープを提示することで、メンバーはプロジェクトの全体像を把握し、目標を明確にすることができます。

● ロール:
各メンバーの役割、責任、権限、報告関係などを表現したもの。ロールを整理することで、メンバーは自分のポジションや期待される業務を理解し、タスクマネジメントを設定することができます。

● チーム・コントラクト:
チームのメンバーが合意した目標やルールを文書化したもの。明文化されたルールにより、メンバーは悩むことなくタスクを推進できるようになります。

チームのメンバーの強みと弱みを把握する

チームビルディングの次のステップは、チームのメンバーの強みと弱みを把握することです。特に一緒に仕事をしたことがないメンバー同士が集まったチームにおいて、夫々のメンバーが何が得意で何が苦手なのかを把握することは、タスクマネジメントをする上で重要な情報です。メンバー間で補い合うためにも、プロジェクトマネジャーだけでなくチーム全体で強みと弱みを共有することは重要でしょう。

弱みという言葉に抵抗があるのであれば、例えばDevelopment needs(成長課題)のような言葉で言い換えてもよいかもしれません。参加するプロジェクトにおいて強化したい点、これから伸ばしたい点として提示してもらい、プロジェクトの状況を見ながらチャレンジしてもらうといったことも考えられます。

筆者の周りだと、こうした強みや弱みだけでなく"働き方のスタイル"を共有することもあります。例えば働き方が朝型/夜型だったり、ライフイベントにおける制約(子供の送り迎え、資格取得、通院等)を共有したり、働く場所の好みだったりと、事前にチームメンバーがどういった働き方であるかを認識しておくことで、メンバー間で適切なコミュニケーションを選択することができます。例えばそれ以外にも、MBTI診断(性格診断)をチーム全員でやり、その後自分のタイプをチームで共有することで、お互いの理解を深めたこともありました。

重要なのはチーム内の相互理解であり、そしてそれを理解したうえでのコミュニケーションです。メンバー間でそれぞれの「取扱説明書」を共有することで、適切な取り扱い方を選択していけばチームとしての生産性が上がる、という考え方です。

チームのメンバーの成長を支援する

チームビルディングの最後のステップは、チームのメンバーの成長を支援することです。プロジェクトの最終的なゴールはクライアントの課題解決でありますが、それと同時にプロジェクトを通じたチームのメンバーの成長も重要な要素です。あるいはメンバーの成長を支援することで、よりよい課題解決を目指す、ということなのかもしれません。

部門組織でのチームであれば、トレーニング等での成長支援もありますが、プロジェクト・チームにおいて実効性がある成長支援はフィードバック(FB)です。さらに言うならば、プロジェクト期間中のFBが、チームビルディングという観点においては最も重要でしょう。

プロジェクト終了後のFBは評価の観点からも必ず実施しますが、プロジェクト期間中にFBを行うことを定めているファームはそう多くはありません。期間中にFBをすることで、その期間中にも改善や成長を促すことが目的です。

FBの形式としてはプロジェクトマネジャーとメンバーの1on1でも良いですし、チーム全体でのFBセッションを定期的に持ってもよいかもしれません。筆者はメンバーに対するFBも実施しますが、同時にメンバーからプロマネである自身へのFBもお願いしていました。FBをネガティブな批判ではなく、チームを良い方向にもっていくためのツールとして活用することが重要です。

終わりに

この文章では、コンサルティングの現場で役立つ実践的なチームビルディングのヒントを紹介しました。チームビルディングはチームのリーダーであるプロジェクトマネジャーが中心になって進めるのが一般的ではありますが、メンバーの立場からも、よりよいチームビルディングのための提言は重要です。

また、コンサルティングは個々人がプロフェッショナルであることが前提ではありますが、1人では解決できないことをチームで補い、よりよい価値を出すことも重要です。すなわち、チームビルディングはコンサルティングの成果に大きく影響する要素です。言わずもがなの話かもしれませんが、嫌なチームではパフォーマンスは落ちますし、楽しいチームでは頑張ろうという気持ちになるのが人間なのです。1+1を2以上にするような、そんなチームビルディングを目指していただきたいと思います。

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Profile

プロフィール

写真:戦略コンサルタント

戦略コンサルタント

大学卒業後、HR系スタートアップにジョインした後、国内外のコンサルティング・ファームを経て外資系トップ戦略コンサルティング・ファームへ転職。現在、コンサルタントとしてのみならずファーム経営の舵取りも実施。


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