はじめに
顧問契約とコンサルティング契約は、ビジネスにおいて重要な役割を果たす契約形態です。これに加えてアドバイザリー契約というのも目にすることがあるでしょう。
実はこれらの契約は、法的な契約種別としては、すべて同じ「業務委託契約」に分類されることが一般的です。
それぞれの契約において、クライアントあるいは提供するコンサルタントにとって何が違うのでしょうか。
この文章では、顧問契約とコンサルティング契約の基本的な概念とその違いについて詳しく解説します。
それぞれの契約がどのような状況で適用されるべきか、またその利点と注意点についても触れていきます。
顧問契約とは
顧問契約は、企業が特定の分野で専門知識や経験を持つ専門家を顧問として雇用する契約です。顧問は定期的に企業に助言を提供し、戦略的な意思決定をサポートします。この契約は通常、長期間にわたるものであり、顧問は企業の経営陣と緊密に連携します。
したがって、顧問契約に従事するコンサルタントも、経験豊富なシニアメンバーであることが一般的です。
少し個人的な感覚になってしまうかもしれませんが、ビジネス領域における顧問契約は、大手ビジネスコンサルティング会社よりも、独立したシニアのコンサルティング会社が結んでいるイメージの方が強いです。
● 顧問契約の特徴
① 定期的な助言提供
② 長期間の契約
③ 戦略的な意思決定のサポート
④ 企業との緊密な連携
⑤ 特定の分野における専門知識
顧問契約は、企業が持続的な成長を目指す中で、持続的なサポートを受けるために非常に有用です。特に、法務、財務、マーケティングなどの専門分野で頻繁に見られます。そのため、一般的にはビジネス領域というよりも法務・税務・会計といった士業に関連する顧問契約という方が多いかもしれません。
一方で、例えば企業の変革期において様々な課題を長期的な展望をもって解決しなければならないシチュエーションでは、幅広い範囲に対し、緊密な連携を取りながら議論をする必要があります。そうした場合にはビジネスコンサルティング会社との顧問契約が求められるでしょう。
コンサルティング契約とは
一方、コンサルティング契約は、企業が特定のプロジェクトや課題に対して外部の専門家から助言や支援を求める契約です。コンサルタントは、問題の解決策を提供し、プロジェクトの成功に向けた支援を行います。この契約は通常、短期間であり、プロジェクトが完了すると終了します。いわゆる日々のコンサルティングワークを行う対象です。
● コンサルティング契約の特徴
① プロジェクトベースの助言提供
② 短期間の契約
③ 特定の課題に対する専門知識の提供
④ 成果物の提出
⑤ 契約終了後の関与の少なさ
コンサルティング契約は、企業が短期間で特定の問題を解決するために非常に効果的です。特に、新規事業の立ち上げ、業務プロセスの改善、ITシステムの導入など、具体的なプロジェクトにおいて頻繁に利用されます。
クライアントにとって課題が明確であり、解決すべき道筋と求める結果が一定定まっている状況においては、コンサルティング契約を選択することが通常でしょう。
顧問契約とコンサルティング契約の違い
顧問契約とコンサルティング契約の主な違いは、契約の目的と期間にあります。
顧問契約は、長期間にわたって企業に対する継続的なサポートを提供することを目的としていますが、コンサルティング契約は特定のプロジェクトや課題に対する短期間の助言を提供することを目的としています。
● 関与の期間と範囲
顧問は企業との長期的な関係を築き、定期的に助言を提供します。これに対して、コンサルタントは特定のプロジェクト期間中にのみ関与し、成果物の提出後には関与が終了します。
● 契約内容の具体性
顧問契約は、戦略的な意思決定のサポートや継続的な助言を目的とするため、契約内容は比較的広範で柔軟です。
一方、コンサルティング契約は、特定の課題解決やプロジェクト完了を目的とするため、契約内容は具体的で明確です。
もう少し具体的に書くと、例えば顧問契約ではいわゆるSoW(Statement of Work、作業範囲記述書)を書くことは稀です。とはいえすべてを対応できるわけではないので、対応する時間等で区切ることが多いでしょう。
コンサルティング契約においては、SoWは必要不可欠なものですので、契約で明文化することが求められます。
● 報酬体系
顧問契約の報酬は、通常、月額固定費用として支払われることが多く、長期間にわたる関与を反映しています。
コンサルティング契約の報酬は、プロジェクトの規模や複雑さに応じて、固定費用または成果報酬として支払われることが一般的です。
加えて言えば、顧問契約の方が相対的にコンサルティング契約に対し支払う金額は低いケースが大半です。
上記契約内容でも少し触れましたが、顧問契約では対応する範囲は広いものの、助言が中心であり、具体的に手を動かすことはクライアント側が実施するケースがほとんどです。一方でコンサルティング契約にも助言は含まれますが、それ以外に調査・分析・実行支援など、コンサル側が主体的に動き、資料を作成するなどの対応が発生するからです。
● 専門知識の提供方法
顧問契約では、顧問は企業の内部環境を深く理解し、戦略的な視点から助言します。
一方、コンサルティング契約では、コンサルタントは外部の視点から特定の問題に対する解決策を提供します。ただし、この点に関しては純粋に契約による大きな違いはなく、どちらもクライアントに対し必要な知識を提供するものと考えられます。
終わりに
顧問契約とコンサルティング契約は、企業にとって重要な支援を提供するための異なる手段です。それぞれの契約には独自の特徴と利点があり、企業のニーズに応じて適切な契約を選択することが重要です。
コンサルタントとしての役割を果たす際には、これらの違いを理解し、クライアントの期待に応えるための最適なサービスを提供することが求められます。ビジネスの成功に向けて、顧問契約とコンサルティング契約のどちらが最も適しているかを適切に判断する能力も、コンサルタントの重要なスキルの1つです。