はじめに
コンサルタントという職業は、多くの業界や企業において重要な役割を果たしています。顧客の課題を解決し、ビジネスの成長を支援するこの仕事は、知的刺激が多く、やりがいを感じやすい一方で、その分だけプレッシャーやストレスを伴うのも事実です。そのため、モチベーションの維持が非常に重要となっています。
また、やりがいやモチベーションは立場によって異なります。本稿では、コンサルタントのキャリアにおいて、特に読者の皆様にとって関心が高そうなアナリスト、(タイトルとしての)コンサルタント、マネージャーの各タイトルにおいて、どのようなやりがいを感じることができるのか、またモチベーションを維持するための方法について述べます。これらタイトルはファームによって多少名称は異なりますが、メンバーからプロマネのエントリーレベルまでとご理解ください。
1. アナリストのやりがいとモチベーションの維持方法
アナリストは、コンサルタントのキャリアの初期段階であり、主にデータ分析や資料作成、リサーチ業務を担当します。クライアントの抱える課題を理解し、最適な解決策を見出すための基盤となる情報を提供する役割を担っています。
■ やりがい
[知的成長]データを分析し、様々な業界や企業の状況を深く理解することで、広範な知識が急速に蓄積されます。
[チームの一員としての貢献]プロジェクトの成功に向けてデータやインサイトを提供し、チームに貢献できることは大きな達成感を生みます。
[実践的なスキルの習得]ExcelやPowerPoint、データ分析ツールなど、実務で役立つスキルを習得できます。
■ モチベーションの維持方法
[学習の継続]業界トレンドや分析手法の習得を継続することで、自身の成長を実感しやすくなります。
[目標設定]短期的なスキル習得目標を設定し、到達することで達成感を得ることができます。
[フィードバックの活用]先輩や上司からのフィードバックを積極的に受け入れ、改善に努めることで、自身の成長を実感できます。
前述の通り、アナリストは、コンサルタントのキャリアの初期段階であることから、やりがいやモチベーションに事欠くことはないと考えられます。一方で、大量のインプットを短期間に処理することを求められることから、その業務量に戸惑いを覚える人もいます。また、特に事業会社からコンサルに転職してきた人は、新卒からコンサルの2.3年目のアナリストの業務スピードと自分とを比較して自信を失ってしまうこともあります。
そうした場合、アナリストは、コンサルタントとしての"型"を徹底的に鍛える期間として捉えるのが良いでしょう。アウトプットの"型"もそうですし、考え方の"型"も重要です。例えばよくアナリストが指摘されるのは、「構造化ができていない」ということ。物事の全体像を捉え、整理するためにはどのような構造が適しているか、をきちんと考えられるようになると、アナリストに期待されるタスクの大半はスムーズに進められるようになります。自分自身のスタイルも重要ですが、まずは"型"を身に着け、自分のスピードに合わせて成長の実感を得ていくことがこの期間におけるやりがいに繋がるのではないでしょうか。
2. コンサルタントのやりがいとモチベーションの維持方法
(職種名とタイトルが同じなのでややこしいですが)コンサルタントは、アナリストよりも主体的にプロジェクトに関与し、クライアントと直接やり取りする機会も増えます。分析だけでなく、戦略の立案や提案など、より高度な業務を担当することになります。
■ やりがい
[クライアントへの直接的な貢献]自分の提案がクライアントの意思決定に影響を与えることで、実際のビジネスに貢献している実感を得られます。
[問題解決の醍醐味]複雑な課題に対して戦略的な解決策を見つけるプロセスそのものが、知的刺激を与えます。
[ネットワークの構築]クライアントや社内の上司・同僚との関係を築くことで、将来的なキャリアにおいて貴重な人脈が得られます。
■ モチベーションの維持方法
[成功体験の積み重ね]プロジェクトごとに成功体験を積み重ねることで、自己効力感を高めることができます。
[ワークライフバランスの調整]忙しい業務の中でも、適度に休息を取ることで、持続的なパフォーマンスを維持できます。
[メンター制度の活用]経験豊富な先輩やマネージャーからのアドバイスを受けることで、視野を広げることができます。(もちろん、アナリストからメンター制度は活用できますが、自身のコンサルティングという仕事への解像度向上に合わせ、より有効になるのではないか、ということです)
上記のように、コンサルタントはアナリストよりも自身のタスクに対する裁量が増えます。アナリストをメンバーとして、プロジェクトにおけるサブ・モジュールのリーダーを担ってタスクを設計したり、クライアントに対する提言機会が増えたりと、新たな期待役割から自身の成長を感じることができるようになります。
一方で、アナリスト気分を脱却しないまま、コンサルタントにプロモーションしてしまう人も中にはいます。リサーチや分析は非常に優れているものの、そこからクライアントへの示唆を導き出せないと、コンサルタントとしての価値は認められません。また、自身のタスク遂行はもちろんのこと、メンバーのタスクに気を配り、レビューをすることも求められるようになります。アナリストの延長線上にコンサルタントがいるわけでないことを理解し、新たな期待役割を楽しめるようになることが、やりがいやモチベーションにおいて重要ではないでしょうか。
3. マネージャーのやりがいとモチベーションの維持方法
マネージャーは、プロジェクト全体を統括し、チームをリードする立場にあります。クライアントとの関係を構築しながら、チームメンバーの成長を支援することも求められます。
■ やりがい
[リーダーシップの発揮]チームを率いてプロジェクトを成功に導くことにより、大きな達成感を得ることができます。
[ビジネスへのインパクト]クライアントの経営戦略に深く関与し、大きな影響を与えることができる点は大きな魅力です。
[人材育成の喜び]チームメンバーの成長を支援し、彼らが成果を上げることで、マネージャーとしてのやりがいを感じます。
■ モチベーションの維持方法
[長期的なキャリアビジョンの設定]自分自身の将来像を明確にし、それに向けたスキル習得を進めることで、モチベーションを維持できます。
[成功の共有]チーム全体で成果を祝うことで、仕事の喜びを分かち合い、モチベーションを高めることができます。
[適切な delegating(権限移譲)]すべてを自分で抱え込まず、チームメンバーに業務を適切に任せることで、負担を軽減しながらチーム全体の成長を促せます。
個人的には、マネージャーが最もコンサルタントとしてやりがいやモチベーションを得られる時期(タイトル)ではないか、と考えています。自分自身でプロジェクトを設計し、仮説を設定し、クライアントに提案する。チームを組成し、スケジュールとクライアント要望をコントロールしながらデリバリーを完遂する。これらを最初から最後までリードできるのがマネージャーであり、プロジェクト型の仕事の醍醐味を味わうことができます。もちろん適宜シニアのアドバイスを受けることはありますが、現場でプロジェクトをリードしていくことを求められるのがマネージャーです。
"自身にとってのクライアント"を意識し始めるのもマネージャーからだと思います。マネージャーとメンバーとでは、クライアントからの視線も変わります。これまでシニアにされていた相談が直接自分に来るようになると、(職種名である)コンサルタントとしての成長を実感するのではないでしょうか。クライアントと二人三脚となり、プロジェクトを通じて事業や会社の改善に自らのリーダーシップで貢献していくという、コンサルティング事業における一番のやりがいを是非味わっていただきたいです。
終わりに
コンサルタントの仕事は、キャリアの各段階において異なるやりがいがあり、それぞれのフェーズで適切なモチベーション維持の方法を見つけることが重要です。アナリストとしては知識の吸収とスキル習得の楽しさ、コンサルタントとしては問題解決の醍醐味やクライアントとの関係構築、マネージャーとしてはリーダーシップの発揮が、それぞれのやりがいとして挙げられます。
長期的に成功するためには、自己成長を意識し続けること、そして自分の仕事の価値を見出し続けることが不可欠です。各キャリアステージでのやりがいを見つけながら、モチベーションを維持し続けることで、コンサルタントとしてのキャリアを充実させることができるでしょう。