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CFOの仕事術

会計士の財務責任者が手掛ける大型の資金調達

「まずはやってみよう」の精神で非常に振り幅の広い業務を行ってきたお2人。お2人に共通するのはデットも含めた大型の資金調達を成功させていることだ。
会計士の方が数十億円や数百億円の資金調達を行った事例はあまり聞かない。それぞれいかにして大型調達を実現したのか、語って頂いた。

【後編】監査マインドを捨てて営業マインドを取り入れる
~動く→学ぶのサイクルを繰り返して成功させた資金調達~

<直近の資金調達について>

【中川】次に、資金調達の話をお伺いしていきたいと思います。「会計士は資金調達には強くない」と言われることも多いと思いますが、実際はどうですか?

【中辻】そういう側面はあると思います。ただ、広範な知識を会計士試験や監査実務の中で学ぶので、知識・スキルは強みになる一方で、監査法人の経験が足かせになる部分もあります。どうしても保守的になってしまうんですよね。
資金調達では、相手が求めることや意図を汲み取ることが大事です。「Aは何ですか?」と聞かれたら、「A'をA''と答える」みたいな柔軟さが必要ですね。そのマインドさえあれば、会計士もバリューを出せると思います。

【中川】エクイティ調達の際に必要なファイナンスの知識も、会計士試験の内容に含まれるんですか?

【中辻】例えば資本政策などは出てくるわけではないんですが、基本的な知識は全て網羅していると思います。投資銀行・PE出身のCFOの方などは知識ゼロから学ばれてる一方で、会計士の場合は知識の上積みがありますし、地頭がいい方も非常に多いので、劣後していることはないと思います。どちらかというと、マインドセットや相手への見せ方が圧倒的に投資銀行・PE出身の方が上手いと思います。資金調達は営業要素に近いですね。

【佐藤】私も同じ考えです。最初に営業をやれたことで、相手の意図を汲んで伝えるという考え方を調達時に、アクションに落としやすかった。資金調達、特にデッドファイナンスやられる方は、営業を一度経験することを、個人的にはおすすめします。

【中辻】自分の場合、ピュアな営業経験はないんですが、会計士を辞めて1年ぐらい営業やってた方がよかったかなって思ったりしますもんね。

【中川】ちなみに、中辻さんはEYや大阪ガスでM&Aのお仕事をされていますが、その経験は資金調達には活きましたか?

【中辻】すごく活きてますね。M&Aをするのと資金調達をするのは似ていています。ですので、会計士が資金調達をするにあたって、FA(ファイナンシャルアドバイザー)やM&A関連の業務を経験していることは、とてもプラスになると思います。

【中川】資金調達をどのように進めたか、さらに聞かせてください。UPSIDERは、昨年10月にデットファイナンスで467億円、昨年5月にもエクイティの調達をされていらっしゃいますね。佐藤さん、どんな方針でいつぐらいから準備を始めましたか?

【佐藤】まず、UPSIDERのビジネスモデルを説明させてください。法人向けカードサービスでは、ユーザーさんがカードを使った際、立替えが発生します。一定期間は我々が立替えるので、決済額が増えれば、その分我々の立替額も増える。事業を伸ばすための採用や広告宣伝費も必要である中で、事業上必要な運転資金の確保という観点でもしっかりとキャッシュを持たないと我々の事業として成長できないというところもあり、調達の必要性は大きく、これまでは都度エクイティ調達を行ってきました。

一方のデットは、いつどのタイミングで実施するかは2022年の頭から検討していました。海外での先行事例をリサーチして、事業フェーズと調達の実行のプロセスを踏まえてプロジェクト化して、最終的に実を結んだのが2022年の10月でした。信用力の観点で、デット調達をご検討いただけるような金融機関さんが増えていったタイミングでもありましたね。

【中川】準備期間としては、エクイティとデットで結構違うんですか?

【佐藤】全然違いました。エクイティに関しては、ラウンドを刻みつつではありますが、結果として最初の着金までは2〜3ヶ月ぐらい、対してデットは9ヶ月近くかかっていますから。

【中辻】エクイティを2~3ヶ月ぐらいでクローズするってかなり早いですね。Baseconnectは、UPSIDER様の半分くらいのエクイティ調達で10ヶ月ぐらいかかりましたから。

【佐藤】そのぐらいのスピード感でVCさんの方にご協力いただけたんですよね。これがベストかというとそうではないのかもしれないですが。最初のクローズに間に合わないところはあるので、クローズを何回かに分けて実行しました。エクイティに関しては代表の宮城がメインでやっていたので、直接的な部分はあまり関わってはいないんですが、我々自身のKPIが説得力を持って見せられる状態だったことに加えて、海外で確実にこの領域が伸びているという状況もありました。海外のVCさんについても、我々のビジネスへの理解スピードが非常に早かったのが要因としてあると思います。

【中川】海外ファンドは、DSTGlobalやArena Holdingsが入られていますね。

【佐藤】はい。海外の先行事例と同じレベルのポテンシャルがあると評価されて調達に至った部分が大きいと思います。これを踏まえて、UPSIDERとしてどのように進めれば成功できるのか、各フェーズで何を考えなければいけないのかについての知見が欲しいという意図で海外のVCさんに入っていただいて、実際その辺りにアドバイスいただきながら事業を進めています。

【中川】よくわかりました。中辻さん、Baseconnectの調達までの準備や着地について教えてください。

【中辻】エクイティ調達に動き始めたのが2021年の夏ぐらいで、完了は翌年の4月なので10ヶ月以上かかっています。日本郵政キャピタル様、ジャフコ様、ユーザベース様、Salesforce Ventures様、NTTドコモ・ベンチャーズ様、エン・ジャパン様、京都信用金庫様などに投資して頂いています。今回の調達にあたって、ターゲットリストを作ってアプローチを進めましたが、バリュエーションサイズが大きくなってきていたので、このバリュエーションで出資できるファンドは限定的でした。この点が辛かったですね。
デット調達は、2021年頃から、細々と準備をしていました。この1年間の準備期間が、目標調達額を獲得できた要因だと思います。私の場合はBaseconnectが2社目で、1社目は手探りでしたが、今回は大体分かっている上で進めることができました。1社目でやった時よりは効率は良かったと思います。

【佐藤】私は、デットファイナンスについては、知識ほぼゼロに等しい状態だったので、進め方についてまず学ぶところから始めました。これまで日本でデットファイナンスをされていた方をお繋ぎいただいて壁打ちをしてもらったり、ロングリストを作ってそこにタッピングをしていく中で、金融機関の方々のマインドや考え方も一つひとつ知っていくということを積み重ねていくような形で、知識を積み重ねていくことをずっとやっていました。

【中川】デット調達をうまくクローズさせたポイント等はありますか?

【佐藤】はい。交渉の過程で知識を積み重ねていくフェーズでは、資料の提出を求められたり質問されたことに回答したりと、受身になっていたので、UPSIDERとしては進め方がアンコントローラブルだったのが大きな反省ではあります。ただ、リソースも限られている中で、複数のパイプラインを同時並行で進めるのは難しいので、有力候補の方とのパイプラインを深く進めていくことで知識を得ていくのは、結果的に良かったのかもしれません。

それから、我々がデット調達を進めていたのが、米国の金利も上がってきているタイミングでした。その状況も踏まえて着地点を見出すのは、ハードな交渉でもありました。 金融機関の現場レベルからGOが出ても、本部では追加の質問やリクエストが来たりして、調達時期が目標としていた時期に間に合わない可能性がでてきてしまって。途中から一気にモードを変えて、我々がいかに主導権を握って物事を進められるかに切り替えたんです。先方が気にするポイントを全部把握したうえで、稟議書として使えるレベルの文章をお渡しして、「これができるか、イエス or ノーで答えてください」といった進め方に変えました。

【中辻】そういった背景があって、エクイティとデットの大型調達を成功させたんですね。

<大切にしている価値観・スタートアップCFOの楽しさ>

【中川】最後に、CFOや財務責任者になりたい方に向けてメッセージをお願いします。

【佐藤】事業会社の中での財務責任者は、その会社の動脈のようになれる存在だというふうに思います。資金調達だけでなくその会社の成長のために必要なアクションを選び、成否によって会社がより大きくなるかが決まります。最終的に成果が出せたときの達成感は大きいですし、会社という船がより大きくなるのは、これ以上なく嬉しいことです。そういった観点で、スタートアップの財務責任者の醍醐味を捉えていただけるといいのかなと思います。

【中辻】CFOや財務責任者の管掌範囲が年々広がっていって、ファイナンスやバックオフィスに限らず、フロント寄りの仕事にも踏み込まないと、良い資金調達もできなくなってきてはいると思います。そういった面ではすごくエキサイティングではあるものの、大変なことも多いです。キャッチアップすることが非常に多いので、自分の成長に繋がりますし、会社に対する影響度はとても大きいので、面白いポジションだなと思います。

【中川】お二人の熱量を感じられたのと、楽しんで仕事をされているのだと実感しました。今日はありがとうございました。

聞き手:中川英高(キャリア・インキュベーション)/構成:中釜由起子(テックタッチ)

プロフィール

写真:中辻 仁 氏

中辻 仁 氏
Baseconnect株式会社 財務責任者

公認会計⼠(⽇⽶)取得。アーンスト・アンド・ヤンググループ(EY)に参画後、会計監査、買収対象会社への財務DD、事業再編ストラクチャー検討などのM&A業務を経験。2013年から大阪ガス株式会社 資源開発事業部でガス・油田開発のM&AのFA、1000億円程度のアセットマネジメントなどに携わる。同社傘下のJacobi Carbons UK(英国)に出向し、経営企画、M&A、国際税務などを担当。帰国後、スタートアップにてIPOに向けた業務や資⾦調達を担当し64億円のデット・エクイティ調達を達成。2021年よりBaseconnectに入社。

写真:佐藤 英則 氏

佐藤 英則 氏
株式会社UPSIDER 元財務責任者・カスタマーサクセスマネージャー

2013年2月新日本有限責任監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入所。上場企業の会計監査業務に従事したのち、スタートアップ企業のIPO支援業務にシフト。
2021年4月財務責任者としてUPSIDERに入社。

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