ベインキャピタルを転職先に選んだのはなぜ?
まずは簡単な自己紹介とベインキャピタルに転職した理由を教えてください。
【金井】2015年に新卒で野村證券に入りました。M&Aアドバイザリーなどの投資銀行業務を経験し、約4年経って転職しました。私の場合は、もともとPEファームに興味があり、投資銀行をファーストキャリアに選びました。ベインキャピタルを選んだのは、当時から国内PEの中で一番アクティブに投資案件を実行しており、良い経験ができると思ったからです。また、野村證券時代にベインキャピタルと一緒に仕事をしたことがあり、そのときの仕事ぶりを見て、良い印象を持っていました。
【山下】私は、2012年に新卒で三菱商事に入社しました。化学品の国内営業、海外の事業投資を経験して、2016年にBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)に転職しました。経営コンサルタントはプロジェクト毎で経営の中の一つのテーマに絞って改革していく仕事で、それはそれでエキサイティングでおもしろかったのですが、企業経営の全体像があまり見えていないなと感じていました。ちょうど1年間の欧州オフィスへのトランスファーからの帰国のタイミングで、キャリアチェンジを検討していたときに、PEのことを知るようになり、魅力を感じて2020年にベインキャピタルに移りました。ベインキャピタルには元BCGの先輩がいらっしゃって、勝手に親近感を持っていました。
ベインキャピタルでのこれまで
難しさや課題、会社の雰囲気
入社からこれまで、どんな仕事をされてきましたか?
【金井】入社した2019年3月から2年半程度経験を積んでいますが、最初はWorks Human Intelligenceの案件を担当しました。私は投資銀行出身なので、モデリング、ファイナンシングなどを担当しました。投資後1カ月間は投資先で財務の見える化などを担当しました。その後、新規案件として昭和飛行機工業の投資検討チームに入りました。祖業である製造業に加え不動産も保有しているユニークな会社ですが、事業及び不動産のバリュエーションや投資ストラクチャーの検討、ファイナンシングなどを担当しました。2020年4月に投資実行して以降は、昭和飛行機の中に入り、財務の見える化や組織改革など、投資先の皆様と協働し様々なプロジェクトを担当しました。直近では、投資先の日本風力開発と共に、洋上風力発電事業の経済性分析や公募案件の検討に従事しました。
どの案件を担当するかは、個人の希望と会社のリソース配分の中で決まります。毎週のミーティングで、やりたいプロジェクトがあれば希望することができるのですが、個人の希望も一定程度通る印象です。1つのチームにアソシエイトが2~3人アサインされ、1人が複数の案件を同時に担当することが多いです。これは、新規投資及び既存投資先含め新しい案件がどんどん始まるのと、同じ案件にあまり長い時間アサインが続いてしまうとPEプロフェッショナルとしてのスキルが偏ることへの配慮、からだと思います。
【山下】去年2月の入社で、最初の数カ月は、ソーシングや投資検討の仕事をしました。ビジネス面の分析やファイナンシャルモデルの作成なども担当しました。去年6月から、関西を中心にドラッグストア事業を展開するキリン堂ホールディングスの案件に参加し、本格的にデューデリジェンス(DD)を実施し、同年10月に投資を実行しました。その後は、半年ほど、投資先の経営支援に従事しました。MDやVPを含む5人くらいのチームで、会社として目指す姿、成長戦略の方向性、具体的な100日プランや各種施策を作り、それらの最初の立ち上げ及び特に商品開発・マーケティング、店舗運営の効率化等のプロジェクトの実行推進をしました。現在は、この案件の他に複数の新規案件に関わっています。
身に着けたスキルが生きたこと、逆に、これは難しいな、わからないな、という体験を教えてください。
【山下】コンサルのスキルが役に立ったのは、論点・フレームワークを以て物事を捉えたり、常にbig pictureを押さえたりするといった基礎的な部分です。また、商社の国内営業時代の、リアルビジネスの世界でいろんなキャラクターの方と接してきた経験や現場で起きていることに対する肌感覚の理解は今も活きていると感じます。
逆に難しさを感じたのは、ビジネスDD。というのも、コンサルタント出身ですが、ビジネスDDのプロジェクト経験もなく、そもそもビジネスDDが何かすら知りませんでした。いつもキャッチアップの努力をしています。座学で勉強するというより、VPの方と仕事をしているときに横で見て、学ぶイメージですね。わからないときは、わからないので教えてくださいと正直に言います。皆さん親切なので、聞いて、教えるのを断られたことはありません。
【金井】投資銀行スキルとして、モデリングやストラクチャーに関する知識、M&Aのプロセス運営スキルはそのまま使えます。
一方で、投資先ビジネスの分析に関してはキャッチアップが必要でした。例えば製造業における生産性の改善やコスト最適化などは一緒に働くポートフォリオチームのメンバーや投資先から学ぶことが多かったです。ビジネス以外にも投資実行時そして投資実行後には自身が経験を有しない新しい論点に日々出くわします。それらを毎回勉強し、アドバイザーや投資先の皆様から学び、キャッチアップすることが重要だと思います。
キャッチアップのため勉強をするといっても、通常業務が忙しい。特にベインキャピタルは案件を多く抱えているので、他のPEファームより一層忙しそうに見えます。社風は体育会系のような感じですか? また、ご自身はどう時間をやり繰りしていますか?
【金井】体育会系というイメージとは全く違うと思います。ディール期間中はハードですが、それはどこのPEファンドも同じだと思います。ベインキャピタルでは、様々な論点を細かく深く分析していく結果、ハードワークになることがある、そんな印象です。肌感覚で言うと、投資銀行はハードワークの度合いとしてMAXを10とすると、7程度がずっと続くのに対し、ベインキャピタルは10のときもあれば2のときもある、といった印象です。
投資銀行時代と比較すると、時間の使い方は自分である程度コントロールできます。様々なプロジェクトが同時並行的に走りますが、プリンシパルとしてスケジュールをコントロール出来る上、いつ忙しくなるかもある程度読めます。私は昨年来、MBA留学の準備をしていますが、業務スケジュールのタイミングをみて、勉強に使う時間も確保するようにしています。
【山下】ディール期間中はハードワークを求められます。コンサルティングとは立場が異なり、プリンシパルになりますので、相当なレベルの緻密さを追求しています。
コンサルでも本当に大変なときがありましたが、瞬間的にはどうしてもそれよりもハードワークを求められる場面もあります。一方で、ディールが終わると比較的余裕は出来ますので、メリハリがある働き方です。
そんなハードなときもある仕事をこなしながら、お二人はポジティブな精神を維持されているように見えます。仕事のやりがいは、どんなところに感じておられますか?
【金井】一言で言うと、数と深さです。ファームとしての過去の実績があるからこそ新しい案件を紹介いただくことが多く、常にディールフローが多い状態が続いている印象です。一方で、ベインキャピタルは、一件、一件を細かく見る。たとえばストラクチャー検討やファイナンシングなど、細かく何度もつめる。ディテールにこだわることがPEファームとしての差別化要因になっていると思いますし、また、PEプロフェッショナルとしても自分が鍛えられ、勉強になります。
【山下】PEのおもしろさという点で言うと、一つの会社のビジネスを幅広く色々な角度から見ることで、以前よりは経営・ビジネスを総体として見えてきている気がします。そこがシンプルに面白いです。付随して、スキルや経験も増えています。前職や前々職での経験が、点と点が線で繋がるように結びついてくることもあり、日々楽しんで仕事をしています。
ベインキャピタルに入社するなら
ベインキャピタルに転職するなら、若いときが良いでしょうか?また、どんな人に向いていると思いますか?
【金井】キャリアの序盤にPEファームを選ぶ上ではベインキャピタルは最適だと思います。PEプロフェッショナルの若手として避けたいのは、ディールが経験できないことです。ベインキャピタルではお蔭様で多くの案件を経験でき、またディテールにこだわる過程が個人としてもトレーニングになります。
個人として必要なのは、責任感だと思います。PEの仕事で何が楽しいかというと、オーナーシップがあることですが、それには責任が伴う。文字通り踏ん張らないといけない場面や、物事が上手くいくように最後まで責任を持ってやりきる必要がある場面が必ず生じます。その際には責任感がものを言うと思います。
【山下】繰り返しになりますが、競合他社と比較するとディールフローがかなり違うと思います。PEプロフェッショナルとして経験を積みたい人には、ベインキャピタルのプラットフォームは非常に良いと思います。それに、VPを始め皆さん優秀です。入社前も、面接時に皆さん優秀だなと思いながら面接を受けていましたが、そういう人たちと日々一緒に働けている。常に刺激になりますし、そこは良いなと思っています。
この会社で、尊敬できる人を思い浮かべたときに、優しく素直な人が多いです。だからこそ自分も、素直かつ謙虚に働くことが大事だなと思います。たとえば、わからないことを認めて、聞きに行く。間違えたらすぐに謝る。誰しも初めての経験はわからないことも多いですし、そんな非常に基本的なことが、テクニカルなスキル、論理的な思考よりよっぽど大事だと思っています。
これからの抱負
最後に、PEプロフェッショナルとして目指すところや、これからの抱負を教えてください。
【金井】弊社で「クオーターバック」と言う、ディール全体を取りまとめる役割があります。VPが担当することが多いのですが、ディール全体のポイントを押さえて、アソシエイトを含めて全メンバーを動かしていくリーダー的な役割です。そうしたポジションを担えるようなスキルを持ちたい、と思っています。投資銀行出身者として持つスキルや得意分野はこの2年で鍛えられた一方、ビジネスDD等はまだまだです。それらをきちんとキャッチアップし、クオーターバックもこなせるようになるのが目標です。
【山下】私もクオーターバックが目標です。足りない部分は金井さんの裏返し。投資銀行出身者が強いところを貪欲に経験していきたい、と思っています。
プロフィール
金井 俊太朗 氏
アソシエイト
慶應義塾大学経済学部学士
野村證券のインベストメント・バンキングにて、コンシューマー・リテール業界のカバレッジおよびインダストリアルズ業界におけるM&Aアドバイザリーに従事
山下 紘司 氏
アソシエイト
東京大学経済学部学士
三菱商事株式会社にて化学品の国内営業及び海外事業投資に携わった後、ボストンコンサルティンググループの東京・ミュンヘン事務所にて、製造業を中心とする国内外の企業に対して、事業戦略立案、事業統合支援(PMI)、オペレーション改革等のコンサルティングに従事。
末包 昌司 氏
マネージングディレクター
東京大学工学部学士、ハーバードビジネススクール経営学修士(MBA)
ボストンコンサルティンググループにて消費財・通信・自動車・金融等の業界に対してのコンサルティングに従事。2006年ベインキャピタル日本オフィス立ち上げに参画後、ベインキャピタルボストン本社を経て現職。
西 直史 氏
マネージングディレクター
東京大学教養学部学士、修士(国際関係論専攻)。スタンフォード大学経営学修士
マッキンゼー・アンド・カンパニーの東京、フランクフルト事務所にて、主に製造業、ハイテク・通信を中心とする企業に対してグローバル戦略立案、業務改善をはじめとする様々なテーマでのコンサルティングに従事。
中浜 俊介 氏
マネージングディレクター
東京大学大学院工学系研究科(修士)、社会基盤工学専攻
マッキンゼー・アンド・カンパニー東京オフィスのアソシエイト・プリンシパルを経てベインキャピタルのポートフォリオグループに参画。マッキンゼーでは、多くの全社改革プロジェクトに従事。ベインキャピタルでは、これまで、ドミノ・ピザジャパン、すかいらーく、ベルシステム24、雪国まいたけ等の投資先の経営支援を行う。
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