お二人とも、民間ファンドでの実績を経て、これまで官民ファンドでご活躍をされてきました。まずは民間ファンドと官民ファンドの違いについて、思うところを教えてください。
【板橋】私は保険会社やコンサルティングファームを経て、2008年に外資系のPEファンドに参画しました。PEファンドではコンサルタントと異なり、株主という立場から当事者として企業経営に入っていくスタンスに魅力を感じ、とても充足感を持って仕事に臨むことができました。その後、2012年に旧産業革新機構(現INCJ)に参画し、今まで8年以上に渡り、投資活動を続けています。官民ファンドと以前在籍した民間ファンドとの明らかな違いは2つあります。1つは日本社会にダイレクトに貢献できるという点、もう1つは圧倒的な案件数の多さです。今回、JICキャピタルに参画した理由についても、国内産業の競争力強化への貢献と自身の成長の両面から、他では得がたい経験ができる場であると確信したからです。
【貫名】私は企業法務や国際取引における弁護士業務からキャリアをスタートし、日米の法律事務所を経た後の外資系投資銀行においてPEファンドと仕事をする機会が増え、その必要性を強く意識するようになりました。2007年に日系PEファンドに移り、PEのアプローチを上場企業投資に適用する今で言うエンゲージメントファンドの立上げに参画しました。ここでのファンドマネージャーの経験は、自分にとって大きな学びになりました。INCJに参画することを決めた理由は、板橋と同様、社会に対する直接的なインパクトの大きさに惹かれたからです。もちろん、民間ファンドにはない難しさも孕んではいますが、やはり「国のために」という目標を持てることにはやりがいを感じます。
【板橋】INCJとJICはそれぞれ、日本の発展や未来につながる産業を育成するという目標を掲げています。その一方で、国のお金を預かり、動かすわけですから、しっかりとリターンも上げていかなければいけません。この2つを両立することは、貫名も指摘するように、決して容易ではありません。池内も話していたように、高い志やアスピレーションの持ち主でなければ務まらないし、着実にリターンを上げる専門性も問われます。でも、だからこそ貫名や私のような人間にとっては、国内産業の競争力強化に貢献するというやりがいが力になっています。
【貫名】日本においてファンドが出来る役割を広げ、その社会的認知度を上げたいという思いもあります。かといってどんな案件でも良いということでもありませんし、板橋の言う「目標」ばかりを追いかけて、外部から「バラまきだ、無駄づかいだ」と受け止められてもいけない。その難しさを肌で感じてきた私たちではありますが、それでもなお官民でなければ、JICでなければ「できないこと」がある。そう信じています。
9月に設立されてすぐにJIC PEは営みを開始し、お二人も多忙を極めているかと思いますが、同時にJICキャピタルの組織陣容を固め、拡大していく採用局面にも携わっていますね?
【板橋】はい、特に今はアソシエイトの採用に注力しています。現状、JICキャピタルは貫名や私のようなINCJ出身者を中心に構成されていますが、早期にJICキャピタルのあるべき組織体制を確立したい。そのためにはジュニア層に参画していただき、しっかりと成長してもらい、JICキャピタルの将来を担う人材になってもらうことが重要だと考えています。
人材像としては、どんな立場からでも良いのでM&Aや投資活動に関わった経験を持っている方を歓迎します。更に財務分析、企業価値評価や戦略構築など、M&Aに関わる得意分野を持っている方であれば望ましいです。足りない経験は入ってからキャッチアップしてもらえればと思います。多くの案件フローがここにはありますので、皆さんに成長していただける場を提供できると自負しています。
【貫名】PEファンドは、よく総合格闘技に例えられ、複合的スキルが必須だと言われますが、逆に言えば、そういう世界だけに誰一人としてノウハウすべてに精通し、完成したスキルを持ち合わせている人間なんていないとも言えます。大切なのは現場で吸収していくことに喜びを感じられるマインドセットですね。
【板橋】特にパブリックマインド、先ほど私たちが申し上げたような、社会に役立ちたい、という強い気持ちを持つ方に参画していただきたいと願っています。またチームワークも重視しています。担当案件チームだけでなく、JICキャピタル全体で「One Team」として価値観を共有できることがとても重要です。
最後に、JICキャピタルへの参画を考えている方へのメッセージをお願いします。
【板橋】JICキャピタルには官民ファンドでしか手がけられない案件があります。産業構造自体を変えてしまうようなエポックメイキングなチャレンジに関わっていく機会も必ずあります。これから参画してくださる皆さんとそうした貴重な機会を共にしていきたい。互いに大きな成長を得ながら、JICキャピタルならではの投資というものもしっかりと築き上げてきたいと思います。
【貫名】他方で「民間ファンドが手がけるような案件」にも着手していきます。最終的には民間ファンドも官民ファンドも関係なく、この国の投資環境を進展させ、リスクマネーの還流を定着させるような場を、民間ファンドとともに作っていけたらと願ってもいます。そして、こうした大きな目標を追求する中で、JICキャピタルが優れた投資人材を育て上げていく場としても認知されるように、チームワークで奮闘していきたい。そう望んでいます。
プロフィール
板橋 理 氏
マネージングディレクター
一橋大学法学部卒業
東京海上火災保険、ボストンコンサルティンググループを経た後、外資系プライベートエクイティファンドを経て、2012年産業革新機構(現INCJ)に参画。国内外のバイアウト、業界再編、カーブアウト、グロースキャピタル等8案件に関与してきた。2020年、JICキャピタルの立ち上げに加わりマネージングディレクターに就任している。
貫名 保宇 氏
マネージングディレクター
上智大学大学院法学研究科修了 Columbia Law School LL.M./J.D. 日本国/NY州弁護士資格保有
日米の法律事務所で各種ファイナンス・キャピタルマーケット/M&A/企業間紛争処理業務に従事。モルガンスタンレー証券投資銀行部でのM&A/キャピタルマーケットに関わるアドバイザリー業務を経た後、アドバンテッジパートナーズにてPIPEs/エンゲージメントファンドのファンドマネージャーを経験。その後、2012年産業革新機構(現INCJ)に参画。国内外のバイアウト、業界再編、カーブアウト、グロースキャピタル等5案件に携わり、2020年JICキャピタルに参画。マネージングディレクターに就任している。
佐藤 あすか 氏
ディレクター
京都大学大学院理学修士 マサチューセッツ工科大学(MIT)科学技術政策修士
新卒でアーサー・D・リトルに入社。コンサルタントとしてIT・製造業・ハイテク、ヘルスケア業界を中心とする経営戦略・技術戦略の立案、および実行支援等に従事した後、渡米。2010年、産業革新機構(現INCJ)に参画。国内外のバイアウト、業界再編、ベンチャー、グロースキャピタル等6案件の新規投資実行、うち5案件はバリューアップ、Exitまでに一貫して携わり、2020年、JICキャピタルの立ち上げに伴い参画をしている。
一原 祐介 氏
バイスプレジデント
慶應義塾大学経済学部卒業
2014年に新卒で三菱UFJモルガン・スタンレー証券に入社。2018年まで投資銀行部門にてフィナンシャルアドバイザリー業務に従事。自動車業界および自動車部品業界を中心に、ものづくり・エンジニアリング、ITビジネス・サービス、社会インフラ/サービスなどでM&Aアドバイザリーに携わった。2018年、INCJの存在に魅力を覚えて転職。国内外のバイアウト、業界再編、カーブアウト、グロースキャピタル等5案件に関与し、2020年、JICキャピタルに参画した。
池内 省五 氏
代表取締役社長 CEO
京都大学大学院工学研究科修了 内閣府「構造改革評価報告書」タスクフォース委員、経済産業省「経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会」委員等を歴任
大学院を修了後、リクルートに入社。経営企画、グローバル事業、人事など幅広い領域で実績を重ね、2012年にはリクルートホールディングスの取締役に就任。その後、同社常務執行役員、専務執行役員を歴任する中で、クロスボーダー投資やグローバル組織のマネジメント、デジタルトランスフォーメーションの実行等々に携わり、2020年の6月末に退任。同年9月に設立されたJICキャピタルの初代社長として招かれた。
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