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画像:デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

現職コンサルタントインタビュー

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社

2010年に事業を本格始動させたデロイト トーマツ ベンチャーサポートは、すでに全国約2000社のベンチャー企業に対し成長支援を実行。
新規事業確立に挑む大企業とのマッチングや官庁・自治体等との連携によるベンチャー支援策推進など従来発想の枠を超越した取り組みで注目を集めている。
「目指すは21世紀型の新しいシンクタンク」と語る斎藤氏は新生デロイト トーマツ ベンチャーサポートの立ち上げに関わった実質的なリーダー。組織拡大も果たしながら次なる成長ステージへと向かおうとしている今、同社の具体的ビジョンについて話してもらった。

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コンサルティングファームにもベンチャー・キャピタルにもできなかった
「純粋な支援」を可能にするエコシステム

「すべてのきっかけは父です。脱サラをしてベンチャーに乗り出し、苦労を重ねていた姿を見て私は育ちました。15歳になる頃には『こういう経営者の参謀になって役に立ちたい』と本気で考えていたんです。デロイト トーマツ ベンチャーサポート(以下、DTVS)の営みには様々な人の様々な思いが込められているわけですが、個人的な心情を言わせてもらうならば、子どもの頃からの夢がようやく形になり始めている、という感慨もまたあるんです」

20代の若さでDTVSの事業部長となり、リーダーとして現場を率いてきた斎藤氏はこう語る。そもそも公認会計士となったのも、大企業の会計監査や、IPO前提の経営支援だけがしたかったからではない。経営という難事業を相手に格闘するすべての人々に少しでも貢献したい、との思いからだった。もがき闘う経営者を支援する、という観点でいえば、起業直後から事業収益を安定させるまでの時期こそが正念場。このアーリー・ステージにいるベンチャーを是非支援したい、と望んでいた。そして2010年、待ちに待ったチャンスが巡ってきた。

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「以前からデロイトトーマツグループ内にデロイト トーマツ ベンチャーサポートがありました。しかしリーマンショックや震災などの影響もあってビジネス界が混迷を極めていたため、休眠状態だったのです。それがいよいよ動き出すことになり白羽の矢が立ったわけです。黙って見ているわけにはいきませんでした」

トーマツのトップ層もまた斎藤氏の存在と、その情熱を知っていた。そうして斎藤氏が現場の立ち上げ役に選ばれ、DTVSの実質的な起ち上げが始まったわけだ。

しかし、客観的な視点で日本におけるベンチャー支援やインキュベーションの歴史を振り返ると、決して順風満帆に拡充してきたわけではない。例えば多くのコンサルティングファームが、その事業の1つとして「有望なベンチャーの育成」を掲げてはいるが、その多くはすでに独自事業で自立しようとしているようなところが対象。ベンチャー・キャピタルなどによる資金援助も、やはり大部分は上場する可能性があってこその支援。

「実際のベンチャー経営者にお会いしてみると、経営上の課題は非常に多い。一方で優れた経営ノウハウをコンサルティングファームなどから伝授されたいと願っても、高額なフィーを払えないため、あきらめてしまう。スタートアップして間もない企業は、日々の経営を成り立たせることで手一杯です。本当の意味で純粋に支援してくれる存在と巡り逢うことは構造上なかったんです」

もちろんDTVSとてボランティアグループではない。支援事業をビジネスとして成立させなければいけない。その大前提をクリアしたうえで、ノウハウやチャンスを求めるベンチャーを支援するにはどうすればいいか? ヒントの1つはシリコンバレーなどで活躍する弁護士事務所の取り組みにあったという。

「簡単に言えば、1つひとつのベンチャー企業からのフィーでビジネスを成立させるのではなく、まとまった数の有望なベンチャーを発掘し、彼らの成長をまとめて支援しながら成果へと導いていく。その構想がハマるのならば、1社当たりの負担額は最小限に抑えることが可能になる、という仕組みです。そこで、こうしたモデルを参考にしながら、全国にある多数のベンチャーを対象にした活動をスタートさせたんです」

その代表例がモーニング・ピッチ。忙しいベンチャー経営者たちのことを考え、始業前の朝の時間帯を活用。経営ノウハウを学習したり、協業者と出会うための場として設け、参加を促す活動だ(詳細はこちら)。

ただし、これは数あるDTVSの独自活動の一端でしかない。斎藤氏と木村将之氏は、日本でベンチャー支援がうまくいっていない原因を徹底的に洗い出し、同時に先の弁護士事務所などのように海外で奏功している成功事例もまた探り出しながら、ベンチャーが成長していくためのプラットフォーム、継続的にまわり続けるエコシステムというものを構築していったという。そうして導き出したのが4本の柱だった。

「4本の柱」を軸にしながら動き出した独自の活動。
それが予想を超える規模とスピードで支持されている

「実に素晴らしい技術力を持っていたり、他にはないようなアイデアをサービス化しようとしているベンチャー企業は多数あります。ところが、例えば一時的に市場で高評価を受けても、その成長チャンスが大企業の参入によって潰えてしまったり、事業として成立させるために大企業との取引やアライアンスを求めても門前払いされてしまったり、という実態があることもわかりました。

一方の大企業のかたがたにお話を聞くと、現在の熾烈な競争市場の中で生き抜くために新規事業確立を急いでいました。しかし、これがなかなかうまくいかない。社内ベンチャー制度などを始めても、もともとが大企業の風土や文化で育った人たちですから、最後の最後に詰めの甘さが出たりするというのです」

ベンチャーの成長を達成するうえで、大企業との協力体制は重要なポイント。大企業はといえば、アントレプレナーシップを社内で醸成して、イノベーションを達成したいと熱望している。斎藤氏が導き出した答えはシンプルだった。「それならば、最良の関係をマッチングすればいい」。モーニング・ピッチ参加の門戸を大企業にも広げていくと、イノベーション実現を願う大企業サイドの参加者が急増していったという。そんな中、グローバルというキーワードもまたベンチャーと大企業の双方から聞こえてきた。

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「大企業はグローバル化を推進するため、海外におけるカウンターパートとして優良な海外企業との出会いを求めていますし、国内ベンチャー企業も、グローバル市場で勝負したいと願っているところがある。幸い私たちにはデロイトトーマツグループという国際的な後ろ盾があります。ネットワークを活用すれば、ここでも従来とは異なる支援ができるんです」

事実、DTVSはすでに国内23、海外に4つの活動拠点を構え、グルーバル対応や地域活性化対応に貢献すべく陣容を整えているという。

こうして、ベンチャー、大企業、海外、という3つの軸が整っていく中で、4つめの柱も必然性をもって確立されていった。

「日本経済を活性化させるには、既存の大企業の経営を向上させるだけでなく、可能性を秘めたベンチャーが成長していかなければ......という意識は、数年前から政府や自治体の間でも根を下ろしてきました。ところが、先述のようにこれまではベンチャーの実情を代弁し、その可能性を探っていく存在自体が欠けていましたし、同じように地域経済復興を願う自治体のかたがたの情熱を具体化するような存在も不足していたわけです。もちろん私たちは迷うことなく、柱になる、と判断しました」

立場の異なる4つの存在は、実は同じポジティブな方角を目指している。だからこの4つを巡っていく流れを作りだし、プラットフォームとして確立させよう......。思惑は当たった。斎藤氏の期待や予想を上回るほどのスピードと規模で、DTVSの動きに期待する声は広がっていった。だが、もちろん現場では具体的な課題が次々に姿を現す。数人で再始動したDTVSは現在の東京のみで40名前後の陣容へと成長していったが、トライ&エラーをひたすら繰り返すことで、実質的なノウハウを蓄積していったのだという。

「原体験」に基づく「ストーリー」を明らかにし、
「腹をくくって」多くの人を「巻き込んでいく」のがDTVS

短期間で多くのベンチャー企業、大企業、官庁・自治体から期待を集めたDTVSには、すべての活動の基礎となる理念・発想があるのだと語った斎藤氏は、ホワイトボードに山の絵を描き始めた。そしてこう語った。

「どうしても登りたい山。それが何なのか? どうすれば登ることができるのか? そのために必要なものや事は何か? といった事柄をあらゆる人に問いかけていくのが、私たちの最初の仕事です」

答えを出すためにはポイントが4つあるという。「原体験」「ストーリー」「腹くくり度」「巻き込み力」。

「ベンチャーの経営者、大企業の新規事業担当者、自治体の活性化担当者などなど、それぞれのかたがたは、それぞれにうまくいかない局面にぶつかり、悩み、もがき、苦しんでいます。でも、そういう時にこそ原体験というものが生きてきます。

例えば震災の被災地で経済復興を目指している人たち。彼らにはおそらく『わが町を愛する気持ち』を決定的にした原体験がある。それならば、その町で誰がどんな働きをして、どう協力し合っていけばいいいと願っているのか、というストーリーを明確にすればいい。原体験に基づいたストーリーを共有できたなら、皆の腹のくくり方が変わります。そして、それが多くの外部の力を巻き込んでいくパワーになる。DTVSは、そのお手伝いをしていくわけです」

斎藤氏はベンチャーと大企業の協力体制についても、この4つのポイントで説明していく。

「日本の大企業の多くは、これまで自前の力でイノベーションを起こし、成長を実現してきました。しかし近年はグローバル市場での激しい競争や国内市場のシュリンクによって、経営は疲弊しています。新規事業を自前で育てていくような余裕が持てなくなっています。そのため、経営層は危機感をもって社内ベンチャー制度などを実施しているものの、長く続いた安定成長の功罪もあって、なかなか現場に必死さが生まれてこない。

それならば情熱を持って0から1を生み出しているベンチャーに『イノベーションのタネ』を求めてもいいはず。0を1にする事業R&D的要素をベンチャーに委ねる代わり、自社が誇るインフラやリソースを惜しげなく開放することで1を10や100にしていくこと役割を担っていく。これは一例に過ぎませんが、こうしたストーリーならば本気で夢が持てる、と気づいたような大企業のかたがたが、熱心にモーニング・ピッチなどに参加してくださっているんです」

興味深いデータが斎藤氏の話を裏付ける。近年生まれた新規事業を、ベンチャー企業のIPOによるものと、大企業によるM&Aによるものとに分けて比率で示していくと、シリコンバレーでの実績がIPO1割・M&A9割であるのに対し、日本ではIPO9割・M&A1割という結果。

いちがいには断定できないものの、イノベーションのメッカのように思われているシリコンバレーが、実はベンチャーだけの功績で成立しているのではなく、目利きのできる投資家や大企業による買収も手伝って繁栄しているのだと解釈できる。言い換えれば、今後、優秀なベンチャーを大企業がM&Aしていきながらイノベーションをともに築き上げていけば、可能性はまだ十分にあるということになる。

ベンチャーが育ち、大企業が変われば、日本も変わる。
その動きをどこよりも加速させるのがDTVS

斎藤氏がホワイトボードに描いた山は、あらゆるプレイヤーの夢の象徴だったわけだが、当のDTVSが描く山とは何なのか?

「私たちは日本全体を1つの産業体だと捉えています。株式会社ニッポンを再び活性化させることがDTVSにとっての山の頂。ベンチャーサポートという社名を持ってはいますが、最終的に目指しているのは、日本を元気にするためのお手伝いにおいて力を発揮すること。

ベンチャーが育ち、これに呼応しながら大企業も発想や取り組みを変革し、政府や自治体もまたこれらの動きをサポートできるように変わっていく。そうすれば日本は必ず元気になります。DTVSは、そのための新しいシンクタンク集団になります。すでに、どこよりもレバレッジを効かせることのできる集団になろうとしています。私たちには自負があります」

現状、東京オフィスのスタッフは約40名で構成されているDTVSだが、今後1年の間に大きく組織を拡充しようとしている。地道な活動も多いため、これまではギリギリの陣容で忙しく動いてきたというが、ベンチャーや大企業からの期待が本格的に高まったことで、ビジネスとして次の成長ステップに突入できる目算が立ったという。だからこその規模拡大。ここからは、より具体的な成長支援、イノベーション支援の働きを強化していくという。では、どのような人材を必要としているのだろうか?

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「現状のメンバーについて説明すると、まずは私や木村のようにもともとトーマツで会計士として従事していた者が多く在籍しています。監査法人グループのメンバーというと、数字の面から経営を支えていくイメージが強いかもしれませんが、かなりの数の人間が、もっと大きな視野で企業経営に貢献したい、という情熱を抱いています。誤解を恐れずに言えば、トーマツの中でもとりわけ熱いハートの持ち主がDTVSに集まってきました。

そして、それとは別に、自ら起業をしてベンチャーを経営していた経験の持ち主や、コンサルタントという立場で企業の成長支援を担っていたような者も数多く参加しています。ですから、今後参加してくれる人たちも、特にバックボーンにこだわるつもりはありません。先に申し上げた原体験、ストーリー、腹くくり度、巻き込み力といったものに共感し、日本を活性化したいという情熱を強く持ってくれていることが最優先です」

コンサルタント、会計士、起業家、事業会社、政府・自治体......いかなるバックボーンも歓迎するという斎藤氏は「傍観者から当事者へ」「この世の中を良くしたい」といった思いの強さにはこだわりたいと話す。そのうえで、確固たる専門性やスキルを発揮してくれる人材に期待したいという。

「ベンチャーの中には、自分たちが生み出した事業にかかりきりで、経営についての認識はまるで子どものような状況のところもあります。そうした起業家には、経営という仕事に内包されている厳密な部分を伝え、支え、盛り立てていく能力の提供が不可欠になります。ベンチャーと大企業、あるいはベンチャーと自治体のコラボレーションを達成して、なおかつビジネスとして成立させとようとすれば、様々な具体的課題を解決し、その道筋を体系化していくような役割もまた必要になります。コンサルティング経験者などに、この部分で貢献してもらえれば、という期待もまた強く持っています」

ベンチャーの成長支援を起点にしながら、日本全体を活性化させるという前例のない挑戦。その険しく厳しい山登りに腹をくくって参戦してくれる実力者をDTVSは待っているのだ。

海外事業部長 木村将之氏 インタビューへ続く

インタビュー1

写真:斎藤 祐馬 氏 氏

斎藤 祐馬 氏
事業統括本部長

1983年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入社。公認会計士として企業の監査を担いながら、休日には設立後間もないベンチャー企業の経営サポートにも個人的に関わっていった。そんな中、トーマツ内で休眠状態に置かれていたベンチャーサポート株式会社の再立ち上げの現場を任される。舵取り役に就任。2010年、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社の事業を木村将之氏等とともに立ち上げ、弱冠28歳で事業部長となり、従来とは一線を画す独自のベンチャー企業経営支援モデルを確立している。

インタビュー2

写真:木村 将之 氏

木村 将之 氏
海外事業部長

写真:西山 直隆 氏

西山 直隆 氏
事業開発部長

写真:本田 知行 氏

本田 知行 氏
アドバイザリーサービス事業部長

写真:岡田 哲意 氏

岡田 哲意 氏

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