「事業の成長を支援するDTVS」にとって「海外」というものが、どう鍵を握っているのか教えてください。
【木村】大企業であろうとベンチャーであろうと、今まで達成できなかったブレークスルーのチャンスが海外にはあります。全世界で展開しているデロイトトーマツグループが持つリソース、ネットワークを有効活用し、海外への進出、海外との連携を考える企業にとっての出島になる。そのためには、DTVSに2つの機能が求められているように感じます。
1つ目の機能は、海外市場への進出を望んでいる日本企業に具体的な情報、進出ノウハウ、ネットワークを提供する機能です。中には自力で課題を解決している企業もありますが、ほとんどの企業は海外に出て行く上での基本情報すら得るのが難しく、現地でのネットワーク構築も困難であるように思います。
例えば、海外現地での資金調達を望んでいる日系ベンチャー企業に対し、現地で資金調達をする際にどの程度の条件やどのようなスキームで調達すべきかという資金調達ノウハウを提供し、ベンチャーキャピタルや事業会社との実際のネットワークを提供する機能がサポート側に足りないように思います。
教科書的な情報だけでなく、ビジネス拡大に資する実質的な情報、ノウハウ、ネットワークに進出を希望する企業が簡単にアクセスできる状況を作ることが重要であると考えています。
2つ目の機能は世界各国にある優れた成長ベンチャーと日本企業との協業を促進する機能。成長中のベンチャーに対しては、事業及び技術目利きのリスクが高く、日本企業との間で求める品質、スピード感のギャップもあるため、海外ベンチャーと日本企業との協業は進んで来ませんでした。しかし、実際には日本企業が想像もしたことがないような有効なサービスを展開している海外企業がいくつもあります。目利きリスクをコントロールし、品質、コミュニケーションの問題をクリアし、適切な関係を築くことで、協業が促進され大きな成果を呼び込むことも可能になると考えています。
外部と連携した具体的なアクションとしては、どのような取り組みが進んでいますか?
【木村】ベンチャー企業の海外進出、海外ベンチャーと日本企業の協業の双方で具体的な取組を進めています。
日本ベンチャーの海外進出面では、2014年の終わりから英国政府が開催している「イギリスで成功しそうな日本のベンチャー企業」を表彰する「日英テックアワード」に協力させていただいています。高度な技術と独創性を持ち、なおかつ英国の現在のビジネスシーンを把握した上で、成功の可能性を持っている企業を着実に送り出していくことができれば、他のベンチャーにも好影響が出ます。
海外のベンチャーと日本企業のコラボレーションの面では、例えば、日本のJETRO(日本貿易振興機構)と同様の役割を担う韓国のKOTRA(大韓貿易投資振興公社)や、フランスでデジタル分野の起業支援機関として力を持つNUMAやシリコンバレーの有望ベンチャーに投資を行いアジア進出をサポートしているScrumVenturesと協力し、日本進出意向のある海外ベンチャーと日本の大企業との協業サポートを行っています。
日本企業と海外ベンチャーの協業を加速するためのポイントをどのように考えますか?
【木村】すでに海外拠点も設けていて、そこに駐在員も送り込んでいるような大企業では、現地から届く情報を本社が適切に把握し、経営判断に役立てていてもいいはずなのですが、うまくいっていないところが非常に多いように感じます。優秀な駐在員のかたが素晴らしいアンテナを持っていて、現地で有効な情報をキャッチし、東京の経営陣に伝えても、現地にいない経営陣にはなかなか理解してもらえない、というような話は珍しくありません。駐在員と本社のコミュニケーションの問題を解決することが重要だと考えています。海外でタフに活動しているようなかたがいれば、応援していくのも我々の務め。"Go Globally Act Locally"な日本の人材を応援し、増やしていくことができれば、彼ら一人ひとりの存在も情報やネットワークの中心となる「出島」になると考えています。
今年より立ち上げた海外チームですが、年内には10名規模に拡大し、さらに大きな可能性を目指していくのだと聞きました。では、DTVSの海外チームが望んでいる人材とは、どのような能力や資質の持ち主なのでしょうか?
【木村】具体的に希望している人材像は3つのタイプに分かれます。
1つはビジネスを創り出せる人です。海外チームの場合、外国へ出向いて、そこで人に出会い、つながりを広げつつ、時にはビジネスをゼロから創り上げていくような局面にも立たされます。ですから、多様性を受け容れることができて、なおかつ独力で突破していける実行力も兼ね備えている人を必要としています。
もう1つ求めているのは、情報を収集し、集約し、体系化していける人です。海外とのつながりが増えるに従い、リサーチャー的な役割を担ってくれる人の重要性が高まっています。日本語だけでなく英語をきちんとビジネスレベルで使いこなし、情報を集約していけるスキルの持ち主に期待しています。
最後に、ビジネスへの理解が高く、調整力のある人です。協業やマッチングの実行段階では、日本企業と海外企業の間に入り、通訳となる必要があります。言語的な通訳だけではなく、お互いのビジネスモデル、状況、文化的背景等を考慮した上で、適切な調整を行う事が求められます。現場での判断力を求められる場面が多く出てきますので、主体的に考えることができて柔軟性を持って調整する力が必要になると考えています。
チームに関係なく、DTVSの一員となってくれる人に共通して備えていてほしい条件は、「社会を変えたい、日本を元気にしたい」という思いを強く胸に抱いていること。そして、DTVSもまたベンチャーですから、この会社の未来を自ら創り出そうと燃えてくれる人であってほしいですね。
大企業もベンチャーも、今は急激に変化し、進化しています。あらゆる業界で、コーポレートベンチャーキャピタルが設立され、アクセラレーションプログラムが実施されるようになったのも、その1つの表れかと思います。今後もどんどん情勢は変わるはずですから、新しい動きをどんなベンチャーよりも早く察知し、それを事業にして、成果を出していかなければいけません。こうした部分にも共感し、意気に感じてくれる人が参加してくれたら嬉しく思います。
インタビュー1
木村 将之 氏
海外事業部長
一橋大学大学院商学研究科修了後、監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入社。M&Aや損益改善、KPI改善等に関わる多様な業務に携わった後、2010年のデロイト トーマツ ベンチャーサポートの再スタート時に参画し、斎藤氏とともに同社の基礎を築き上げてきた。その後、大企業サイドでグローバル戦略の実行を急ぐ動きと、ベンチャー企業の中に海外進出を望む声が高まる動きを早期に察知し、DTVSの新たな柱とするべく海外チームのリーダーに就任した。目指しているのは、日本発で世界を席巻する事業を生み出すことへの貢献。
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