事業会社からコンサルティングファームへ
幅広いデータに触れて分析スキルを磨きたかった
堀越さんのご経歴をお教えください
【堀越】学生時代はプログラミングに興味があったため、組込系のプログラミングや実装に携わりたいとメーカーを中心に就職活動を行いました。結果、最初に就職したのは大手複合機メーカーでした。
当初は海外事業本部で技術サポートを手掛け、プログラムを書くのがメインの仕事ではありませんでした。その後、社内で立ち上げられたデータ分析の専門部署に異動し、ビジネスサイドの方々と事業課題を共有しながら、統計解析やモデリングなどを行う日々を過ごしました。機器から収集されるデータを中心に、生産や販売活動のデータを用いて各事業部のビジネスにどう生かすかを考えるのが仕事でした。
なぜアクセンチュアへのご入社を決めたのでしょうか
【堀越】転職のきっかけは、社内のデータのみを扱っていくことに限界を感じたからです。同じデータを扱い続けていると、どうしてもそのデータの傾向や性質がわかってくるため、新しい気付きや成長が生まれにくくなってしまいます。データサイエンティストとしての事業貢献にも限りがあると感じていました。
次第に、もっと幅広い業界の新しいデータに触れて、より分析スキルを高めたいという気持ちが強くなっていきました。転職活動では当初、データ分析に強みを持つ事業会社を中心に受けていて、大手メディア企業からオファーを頂いたりもしたのですが、縁あってアクセンチュアを受けた際、保科(学世 デジタルコンサルティング本部 アクセンチュア アプライド・インテリジェンス日本統括)の話を聞いて、率直にアクセンチュアは思ったよりも技術にも明るいと感じ、面白いプロジェクトがたくさんあることを知って、それが入社の決め手となりました。
カンファレンスでの登壇や論文採択経験のあるメンバーも
国内トップレベルのデータサイエンティストが集うAAI
データサイエンティストから見て、アクセンチュアのどんなところが魅力的でしたか
【堀越】技術的に新しい取り組みをしていることと、お客様に深くコミットしているところです。中でも分析だけでなくお客様の業務改革まで関われるところが大きな魅力でした。
それまでエンジニアの私にとってアクセンチュアは、コンサルティングに長けているイメージでした。しかしよく話を聞いてみると、統計や機械学習に関するトップレベルのプロジェクトを手掛けていることがわかりました。卓越したモデリングができるデータサイエンティストや、素晴らしいプログラムを実装できる高スキルなエンジニアが多数在籍していることも知りました。
SIやエンジニアリングができるコンサルティングファームはとても稀有な存在です。コンサルティングだけでなく業務改革まで一貫してお客様をサポートできるのは大きな強みだと感じました。
社内にはどんなエンジニアやデータサイエンティストが在籍していますか
【堀越】高い分析力とコンサルティング力を持ち合わせたメンバーが多く在籍しています。特に技術よりのメンバーでは、企業の研究所やアカデミアで高い研究実績を持つ人、専門書を執筆している人、様々なカンファレンスに登壇している人など、国内でも1、2を争うスキルの高いメンバーが集っていると感じています。
入社されて、印象に残っているプロジェクトについてお教えください
【堀越】最初に配属された地方銀行のマーケティングデータ分析プロジェクトでは、アクセンチュア流の資料作成方法やビジネスフレームワークを使ったクライアントの事業課題の整理方法を目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。これは事業会社でたった一人のデータサイエンティストだった頃にはできなかった、コンサルティングのプロの仕事を学ぶ貴重な経験だったと思います。
現在はKDDIとのジョイントベンチャーとして設立されたARISE analyticsに参加し、KDDIの持つ国内最大級のユーザーデータと、アクセンチュアの持つアルゴリズム構築力を生かしたプロジェクトに関わっています。
これまでに、センサーデータを分析して設備の故障予測をするソリューションの開発や、画像解析エンジンを用いて通行者の分析を行うソリューションのモデリングなどをKDDIと共同で推進してきました。画像解析アルゴリズムをKDDIの展示会に出展した時にはメディアでも大きく取り上げられました。KDDIと共に実地データを活用した実証を推進しており、より大きな取り組みにすべく高度化を進めているところです。
アクセンチュアに入社して、どのような経験やスキルを得られましたか
【堀越】事業会社のデータサイエンティストとして一人で統計解析を行っていた時とは、プロジェクトの規模がまったく違います。業務を熟知したコンサルタントと共にお客様の事業課題を整理し、それに基づいてモデリングを行います。そしてそれをアナリティクス・コンサルタントやデジタルエンジニアと共に最適な形で業務へ適用していきます。
自分とは違うスキルを研鑽してきたエキスパートと協働することで、一人では出せないアウトプットを生み出すのはとても面白い経験です。転職後はこうしたプロジェクトを通じて、アナリティクス・コンサルタントが持つ考え方の「型」が身につき、圧倒的に「考え方の引き出し」が増えたことを実感しています。
とはいえ、アクセンチュアのカルチャーは「CoachはするがTeachはしない」。誤解を恐れずに言えばエキスパートとして採用される中途採用の皆さんにとって、黙っていても手取り足取り教えてもらえる環境ではありません。ですが、助けを求める人には皆応えてくれますし、事業課題の整理の仕方や物事の見方といったコンサルティングのスキルなど、自ら学ぶ姿勢のある人は大きく成長できる環境だと思います。
まずは自らの専門性を発揮すること。
それが新しいメンバーと信頼関係を築く最短ルート
エンジニアやデータサイエンティストがコンサルティング会社でとして働くにあたり、コミュニケーション能力はどれぐらい必要でしょうか
【堀越】常に同じメンバーと働いていた事業会社の頃とは違い、コンサルティングファームでは大勢の新しいメンバーと接して、すばやくリレーションを構築しなければなりません。正直言って、私は初めてのメンバーとすぐに信頼を築くのが得意なタイプではないので、最初のうちは大きな負荷がかかりました。誰がどんなプロジェクトに向いているのか、何に秀でているのかを一から知り、それに合わせたプロジェクトの進め方ができるようになるまでは苦労しましたね。
その時心がけたのは、たとえうまくできなくても誠実に対応すること。目の前のプロジェクトでまずは自分自身がその専門性を存分に発揮することが、初めてのメンバーの多い場ですばやく認めてもらう秘訣です。その上で相手の専門性を知る姿勢を示し、認めることがとても重要です。
私の場合、入社前からカンファレンスへの登壇経験があったため、社内には既に私のことを知ってくれているメンバーがたくさんいたのは心強かったですね。専門性の高い人に対する敬意を存分に払ってくれるカルチャーなので、安心してスキルを発揮できるでしょう。
エンジニアやデータサイエンティストに対して、どのような評価制度がありますか
【堀越】「プリンシパルライン」という技術・専門職向けのキャリアパスがあります。「プリンシパルライン」ではコンサルタントと違い手掛けるビジネス規模やコンサルティング能力よりも、技術力や専門性、それを用いた社外へのプレゼンスで評価されます。
個々人の能力を正統に評価しようという会社の姿勢が嬉しいですし、事業会社にいた時よりも評価に納得感がありますね。
プロジェクトの進め方は事業会社で働いていたときとの違いを感じますか
【堀越】スピード感は早いものの、クオリティへの強いこだわりがあると感じます。プロジェクトのメンバーで議論したり相互にレビューすることで、常に細部までお客様の要望を超える高い水準のアウトプットを出すことを心がけています。
pandasやDaskのOSSコミッターとしても活躍。
アクセンチュアでのキャリアパスを存分に楽しんで
堀越さんご自身も、OSSコミッターとして活躍していらっしゃいます。具体的にはどのような活動をしていらっしゃいますか
【堀越】PythonライブラリのpandasとDaskのコア開発メンバーを務めています。Pythonのユーザーカンファレンスの中で最も大きい「Pycon JP」では、基調講演に登壇したこともあります。他にはPythonをデータ分析に活用するコミュニティ「PyDATA.Tokyo」やR言語の勉強会「Tokyo .R」といったカンファレンスにも登壇経験があります。
こうしたプライベートでの活動にも制約はなく、比較的自由に活動させてもらっているのは、とてもありがたいですね。
エンジニアやアカデミアからコンサルタントとして転身する方の、どこを見ていらっしゃいますか
【堀越】「アクセンチュアで働いて幸せになれそうかどうか」ということです。アクセンチュアから見て価値を発揮できそうかということはもちろん、ご自身の志向がアクセンチュアでの働き方に向いているか、アクセンチュアで働くことを楽しめそうかということも重視しています。
様々な業界のプロジェクトに関わり、新たな領域のモデリングや統計解析にチャレンジしたいという方にとっては、AAIは活躍の幅を広げられる最適な環境です。しかしコアなある一つの分野だけを突き詰めたい方にとっては、あまり向いていないかも知れません。ご自身の志向とAAIでできることを充分に照らし合わせてみて欲しいと思います。
お客様の事業課題解決にコミットできることも大切な要素です。私がエンジニアの皆さんと採用面接をする際に確認するのは、技術面のスキルについてももちろんですが、関わったプロジェクトの事業課題や、その技術を採用した理由、そしてその時に生じた問題をどう解決したのかということ。あくまでもお客様の事業課題を解決することが最優先です。そこにやりたいことが合致する方が望ましいですね。
転職を考えている方へのメッセージをお願いします
【堀越】コンサルティング業界で幅広い種類のデータに触れ、課題解決のスキルを高めた後は、また事業会社に戻りたいと考えているデータサイエンティストもいるかも知れません。アクセンチュアの場合は退職者にも優しい会社です。一度スキルが身について事業会社に戻ったとしても、また新たに関わりたいプロジェクトや身につけたいスキルが出てくれば、いつでもウェルカムです。
例えば世界的データサイエンティストとして米シアトル本社で活躍している工藤(卓哉 Accenture USA Data Science Center of Excellence グローバル統括 兼 ARISE analytics 取締役 Chief Science Officer)も、一度退職して留学やニューヨーク市の統計ディレクターを経験しながら、アメリカの大学院で修士号を取得した後、再びアクセンチュアに戻ってきた経歴の持ち主です。
アクセンチュアのプロジェクトでは、クライアントから経営課題の解決を任せていただけることが多いので、企業の重要な取り組みに関わりやすいと思います。
私自身も、もっと課題解決やコンサルティングのスキルを身につけて、ビジネス開発に腰を据えて関わっていきたいですね。自分の手掛けたソリューションをグローバルで発表できる経験もできたらと考えています。
プロフィール
堀越 真映 氏
デジタルコンサルティング本部 アクセンチュア アプライド・インテリジェンス シニア・プリンシパル
大学院で情報処理や機械学習のモデリングなどを研究後、新卒で大手複合機メーカーに入社。海外向け技術サポートや自社プロダクトのデータ解析に関わった後、2016年アクセンチュア入社。pandasやRなどのOSSコミッターとしても活躍。
宮地 謙輔 氏
デジタルコンサルティング本部 アクセンチュア アプライド・インテリジェンス マネジング・ディレクタ
早稲田大学在学中からWebマーケティング会社など複数のベンチャー企業を創業。企業経営に携わった後、30代で外資系コンサルティングファームへ。2社のコンサルティングファームでデジタルアナリティクスを経験した後、2018年アクセンチュア入社。
デジタルコンサルファームインタビューの最新記事
- PwCコンサルティング合同会社 Technology Laboratory | 所長・上席執行役員 パートナー 三治 信一朗 氏 / 執行役員 パートナー 岩花 修平 氏(2024.3)
- BCG Digital Ventures | Lead Product Manager 伊藤 嘉英 氏 / Lead Product Manager 丸山 由莉 氏(2021.8)
- NTTコミュニケーションズ 「KOEL」 | デザイン部門「KOEL」クリエイティブ・アドバイザー 石川 俊祐 氏/デザイン部門「KOEL」UXデザイナー 金 智之 氏/デザイン部門「KOEL」 Head of Experience Design 田中 友美子 氏(2021.4)
- NTTデータ Tangity | Tangity ADP Service Designer 村岸 史隆 氏(2020.11)
- BCG Digital Ventures | Engineering Director 山家 匠 氏(2020.6)