手探りの末に見えてきたのは、「お客様のビジネスを理解した上で体験をデザインできる」点において業界随一であること
『UX STUDIO』とは、具体的にはどんなチームなのですか?
【番所】一般消費者向けだけでなく、企業で働く従業員が活用するモバイルアプリやウェブ、IoTを活用した『体験』をデザインする専門のチームです。サービスデザイナーやUXデザイナーが所属しています。
実際のプロジェクトでは、UX STUDIOのメンバーだけではなく、他部門の戦略コンサルタントやテクノロジーコンサルタントなど様々なメンバーと一緒にサービスをつくっていきます。
UX STUDIO発足の経緯としては、アクセンチュアでモバイルアプリのビジネスを始めたことがきっかけです。モバイルアプリをビジネスで活かすためには、手のひらに収まるこの小さな画面に、何の情報を表示し、ユーザーにどのような意思決定・アクションをさせるのか、緻密な情報設計が必要になります。また、そこに使いやすさ、魅力的なクリエイティブを適用することで、お客様に継続的に利用されるサービスをデザインしています。
チーム発足から5年。UX STUDIOの特色が見えてきた頃でしょうか
そうですね。コンシューマ向けの領域だけでなく、店舗の従業員が接客や業務で活用するモバイルアプリや、外回りの営業マンが活用するモバイルアプリなど、働き方改革を推進しているエンタープライズの領域では業界随一だと思っています。
アクセンチュアでは他部門の戦略コンサルタントや、業界特化型コンサルタントのメンバーが、お客様の経営層と日常的にコミュニケーションしており、ビジネス課題を的確に理解しています。つまりは、他社では知り得ないお客様のビジネス課題をインプットした上で、新たなサービスをつくることができるのはUX STUDIOならではの強みです。エンドユーザーに寄り添うサービスをつくることだけではありません。そのデザイン経験ができるのは、アクセンチュアだけかと思いますね。
UX STUDIO発足当初は、グローバルで確立された方法論がまだ数少なかったので、自分たちなりに手探りでやってきました。成功も失敗も繰り返し、グローバルの方法論をうまく取り入れながら、ようやく今の形ができてきたと思います。
苦労の末につくり上げた、コンサルタントとデザイナーが協働できるチーム
コンサルティングのメンバーとクリエイティブのメンバーが協働するからこそ良いプロジェクトになるのでしょうが、ハレーションはなかったのですか
コンサルタントとデザイナーが互いにリスペクトし合って、プロジェクトを進めていくことができるようになるまでには、苦労をしたメンバーも多くいたようです。
というのも、コンサルタントとデザイナーの仕事の進め方が少し違うときがあります。コンサルタントは、お客様の抱えている多くの課題を整理し、それぞれに対してソリューションを提案していくアプローチをとります。一方でデザイナーは、ある種のひらめきから、クリエイティブを制作することもあり、それがエンドユーザーに受け入れられ、魅力的なサービスに発展していくことが多くあります。アウトプットを制作していくアプローチが異なるため、お互いの意見をぶつけあうことがあり、最初は苦労したと思いますね。
どうやって協働関係はつくられていったのでしょうか
「お互いの長所を合わせてサービスを共創することができれば、より良いサービスを構想することできる」という成功体験を積み重ねられたことが、一番の理由だと思います。後は、両者が自分の領域にプライドを持ちながらも、「エンドユーザーに支持され、お客様のビジネス課題を解決するサービスをつくりたい」という共通の情熱があったからだと思います。
今後一層拡大をしていっても、UX STUDIOはアットホームであり続けたい
UX STUDIOはどんな雰囲気ですか
アクセンチュア社内からは「UX STUDIOは家族みたいで、アットホームですよね」と言われることが多いです。この文化や雰囲気は、今後更に組織が大きくなっても、ずっと大切にしていきたいなと思っています。
チーム発足当初、10人くらいの規模の時には、全てのメンバーの状況を私が把握できていたので、例えば「あのプロジェクトは参考になるんじゃないか」とか、「この取り組みだったらAさんに聞いてみて」と言えました。その後、人数もプロジェクト数も増え、それが難しくなってきたこともあり、今は、UX STUDIOで定期的なコミュニティを開催しています。
各プロジェクトでどんな取り組みをしているのか、どんなアプローチで推進しているのかを発表してもらい、メンバー同士で、意見や感想を交換してもらう活動も積極的にやっています。組織としての、レバレッジを効かせるためにはじめた施策ですが、デザイナー同士の状況が分かることはもちろん、活発で率直なコミュニケーションを交わす機会にもなるので、こういった取り組みも組織の雰囲気づくりに寄与しているのかなと思います。
実際にメンバーたちからも「自分のプロジェクトに活かすことができそうだ」とか「皆の仕事を知る機会になっていい」といった声があるので、これからも進化させながら、続けていこうかなと思います。
最後に改めて、デザイナーとしてUX STUDIOで働く魅力をお聞かせください
1つは、戦略コンサルタントや業界特化型コンサルタントのメンバーと一緒に仕事をするので、『お客様の経営層が抱えているビジネス課題を的確に捉えた上で、クリエイティブを制作できること』。他部門とのコラボレーションは他社ではできないことです。
2つ目は、グローバル視点で仕事ができることですね。アクセンチュアのナレッジ、世界中の先進事例を参考にしながらデザインができ、FjordやDroga5など、アクセンチュア・グルーブになったクリエイティブ・エージェンシーのメンバーと情報交換をしたり、一緒に仕事ができることもあります。
3つ目は、表層的なデザインではなく、お客様のビジネス課題を解決すること(=デザイン)に貢献できることですかね。デザインという言葉は、どちらかと言うと上流フェーズ、サービス企画フェーズのイメージがあるかもしれませんが、アクセンチュアにはテクノロジーのメンバーもいるので、実際に自分たちが構想したサービスを自分たちで開発し、お客様の手の中に届けるところまで携われる。エンドユーザーに最高の顧客体験を提供し、結果として収益を生み出すところまで付き合える。クライアントのビジネスと愚直に向き合っているアクセンチュアだからこそできることですね。
この3つが、UX STUDIOで、アクセンチュアでデザイナーとして働く醍醐味だと思っています。
プロフィール
番所 浩平 氏
UX STUDIO統括シニア・マネージャー
前職ではエンターテインメント企業向けのコンサルティングに従事した後、2012年よりモバイルアプリのサービス戦略におけるエキスパートとしてアクセンチュアへ入社。2014年にUX STUDIOを立ち上げ、同チームを統括している。
会田 光浩 氏
UX STUDIO マネジャー UXデザイナー
大学卒業後、渡英。グラフィックデザインを学んだ後、フリーランスのデザイナーに。2年間イギリスで働いた後、帰国し、ソーシャルゲーム会社へ。その後、アクセンチュアに転職。
デジタルコンサルファームインタビューの最新記事
- PwCコンサルティング合同会社 Technology Laboratory | 所長・上席執行役員 パートナー 三治 信一朗 氏 / 執行役員 パートナー 岩花 修平 氏(2024.3)
- BCG Digital Ventures | Lead Product Manager 伊藤 嘉英 氏 / Lead Product Manager 丸山 由莉 氏(2021.8)
- NTTコミュニケーションズ 「KOEL」 | デザイン部門「KOEL」クリエイティブ・アドバイザー 石川 俊祐 氏/デザイン部門「KOEL」UXデザイナー 金 智之 氏/デザイン部門「KOEL」 Head of Experience Design 田中 友美子 氏(2021.4)
- NTTデータ Tangity | Tangity ADP Service Designer 村岸 史隆 氏(2020.11)
- BCG Digital Ventures | Engineering Director 山家 匠 氏(2020.6)