いずれのミッションでも、求められる要素は同じ。
それは前向きな姿勢、あきらめない気持ち
「当社のクライアントとなる企業には、実に高度な専門知識を持ち優秀な皆さんがいらっしゃいます。そうしたかたがたでさえ解決できない問題があったり、新しい事業を創っていくうえで自分たちにない力を求めるからこそ、私たちに話を持ってきてくださる。つまり、王道だろうと新しい役割だろうと、とにかく私たちが立ち向かうミッションは、常に難しいんだということです(笑)。では、そこで何が一番大切になるか。私は、あきらめない気持ちであったり、執拗に前向きに挑み続ける姿勢であったり、という泥臭い人間性だと考えています」
ここで椎名氏は再び、「新興国への進出」というテーマを例にして説明する。海外進出をして、そこで生産を行うという想定だ。椎名氏は「アプローチのパターンはさして多くない」と説く。1つは見知らぬ土地で一から工場用地を探し、調べ、最適な場所を最適なタイミングで確保し、その地で工場建設を実行していくというパターン。もう1つは、すでに生産を行っている優秀な現地企業を見つけ、その企業とパートナーシップを結ぶというパターン。3つ目は、その現地企業を会社ごと買ってしまうというM&Aのパターン。
「せいぜい3つか4つくらいしかパターンはない。ただし、その国にどんなライバルがどこまで進出しているかとか、自分たちに協力してくれそうな存在はどれだけあるかとか、その国の商習慣や文化はどうなのかとか、つぶさに調べぬき、掌握する必要はあります。インダストリーや製品カテゴリーやクライアント企業のリソースなどなどの条件次第で、その答えは毎回異なってくる。ですから、たゆまぬ努力が必要なんです。机の上で考えるだけでなく、汗をかいて泥臭く動かなければわからないことも多い。ですから、前向きな姿勢が問われるんです。それに、新しいチャレンジですから、失敗しますよ(笑)。1度や2度失敗したからといって、その都度くじけて悩んでいるようでは、成功なんて絶対にしない。特にグローバル案件はそうです」
そして、こう言い切る。「当社のことを知的集団だと捉えているかたがいるならば、それは違います(笑)。もちろん、高度な知識・知恵・知見を持っていると自負してはいますが、我々は非常に前向きで、非常に泥臭い集団なんですよ」と。「一緒に働きたい人材は?」との質問には「簡単に答えましょう。とにかく、やる気のある人です」。現在、コンサルタントとして活躍している人ばかりが成果を出すわけではない、ともいう。「たとえばこれまで事業会社にいたかたも大歓迎です。コンサルタントを続けてきた者には知り得ない深いナレッジを持っているはずです。これを前向きに活かしていきたいと考えている人ならば、必ず当社で活躍できます。コンサルタントのかたも同様です。大切なのはなによりも前向きな姿勢、やる気です」と。
PwCにしかできないことがある。
PwCだけが持つ強みがある
「やる気さえあれば必ず活躍できる」と言い切る椎名氏の言葉には、確かな裏付けがあるようだ。同社は、あらた監査法人、税理士法人プライスウォーターハウスクーパースと連携して、クライアントにとって最適なソリューションを提供している。椎名氏は「フュージョン型ソリューション」と呼ぶ。そして、そうした取り組みでなければ成功できないような案件が増えてきてもいる、という。
「グローバル化は大部分の企業で必須のテーマになりましたが、海外進出の成功は容易ではありません。ビジネスコンサルティングの見地から、どんな動きが必要になるのかは、先ほどお話しした通りです。しかし、どんな国にも異なる法人税率が存在している。国際会計基準で統合化していくうえでも、専門性が求められる。つまり、海外で新しい事業を打ち立てる場合には、フュージョン型の取り組みが不可欠になるのです」
数あるコンサルティングファームの中でも、同社のように、監査や税務など異なる専門性を持つ組織と連携できているところは少ない。
「PwCのグローバルネットワークには、コンサルタント、会計士、税理士で17万人近いプロフェッショナルがいる。このような集団は他にはありませんよ」と椎名氏もいうように、その違いだけでも、大きな強みとなっているのだ。「当社のメンバー1人の口から、世界中にいる17万人のプロフェッショナルの知見が出てくるのです。すごいでしょう」と、椎名氏は自信の笑みを浮かべる。
では、最後に聞いてみよう。プライスウォーターハウスクーパースとは、どんな人間の集まりなのか?
「種々様々ですよ(笑)。同じ種類の人間ばかりが集まっていても。価値は創り出せませんから。専門性、経験値、知識、知見、実行力......それぞれ持っているものの種類や質は異なります、そういう多様性の中からダイナミズムは生まれるんです。いろいろな人間が切磋琢磨することで、お客様にバリューをお届けできるのです。絶滅危惧種の動物の多くは、遺伝子の多様性が進化の過程で失われ、画一的になっているそうです。同じ環境で生き続けた結果、その土地にだけ最適化した資質を遺伝で継いでいく。その結果、変化には弱い生き物になってしまう。当社は違います。多様です。だから強いのです。だから変化の中で価値を創り出せるのです」
(2012年1月当時のインタビュー内容となります)
プロフィール
椎名 茂 氏
プライスウォーターハウスクーパース株式会社
代表取締役社長
大手コンピュータ会社の研究員として人工知能の研究に従事。
専門は制約論理言語と最適化アルゴリズム。入社後はその経験を活かし、企業のSCM最適化における戦略立案、業務およびITコンサルティングに取り組む。
この企業へのインタビュー一覧
- [注目ファームの現職コンサルタントインタビュー]
- プライスウォーターハウスクーパース株式会社/テクノロジーコンサルティングチーム
パートナー松崎 真樹 氏/パートナー山本 直樹 氏/小田原 一史 氏インタビュー
(2015.3)
コンサルティングファーム パートナーインタビューの最新記事
- PwCコンサルティング合同会社 | Strategy&リーダー 服部 真 氏(2024.4)
- アリックスパートナーズ | Partner & Managing Director 日本代表 植地 卓郎 氏(2024.1)
- マクサス・コーポレートアドバイザリー株式会社 | 代表取締役社長 森山 保 氏(2023.3)
- マーサージャパン株式会社 | 代表取締役社長 CEO 草鹿 泰士 氏(2022.6)
- シグマクシス・グループ | 株式会社シグマクシス・インベストメント 代表取締役社長 柴沼 俊一 氏(2022.1)