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CxOインタビュー

伊東 奈津子 氏

[6]専門的スキルは主にどこで獲得したのですか?

CMOは、言うまでもなく経営に深く関わっていく立場ですが、そういう部分での専門スキルや知識を多くの人はビジネススクールなどで得ているのかと思います。けれども私は、あえてMBAではなく社会心理学の学位を取りました。どこか天の邪鬼な性格もあってそうなったのですが(笑)、それでも経営に関する勉強もアメリカ駐在時代にしていました。

とはいえ、やっぱり本物のスキルは人を通じて、業務を通じて、初めて身につくものだと思います。マーケティング領域の専門スキルにしても同様です。企業の状況や時代の状況次第で大きく変容する領域でもありますから、いずれにしても私はその多くを、これまで在籍した企業の実務から、少しずつ手に入れていったと思っています。

[7]リーダーシップやマネージメントに関する経験やスキルは、いつ、どこで獲得したのでしょう?

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リーダーシップの重みを痛感した大きな経験が2つあります。どちらもボーズに在籍していた時ですが、第1の経験はマーケティング・ダイレクターに就任して、日本オフィスのマーケティング全般を任された時です。第2の経験は、ボーズですごした後半5年ほど。ローカル主体から本格的なグローバライゼーションへと大きくシフトした時期です。

経営上の基本的な考え方はもちろん、それまでの文化や価値観まで変えてしまう動きの中で、具体的な業務内容も変化がありましたし、何よりも人の気持ちが揺れ動く様と直面する体験をしたわけです。マーケティングの実務絡みもあって、頻繁に米国本社とやりとりしていた私は、この大きな変化の流れの中で「本社と日本との間」に立つような役割になりました。苦しい思いもしましたが、経営とマーケティングがいかに密接につながっているかを知る機会にもなりました。

[8]キャリア形成上の転機があったとすれば、それはいつのことですか?

最大の転機は、ティアックへ来てCMOを任された時です。ボーズ時代にリーダーの役割の重みを知り、経営とのつながりの大きさも学んだわけですけれども、正式なCMOとなれば、それこそが最大の役割ということになります。マーケティングの最前線を掌握し、そのためにマーケティング以外の部門で何が起きているかも掴み取り、そのうえでこうした現実を経営に具体的に活かしていくのがCMOです。ですから、ティアックに来てからまだ日は浅いのですが、日々、試行錯誤しながら学んでいるところです。

[9]強く印象に残っている試練やストレッチの経験について教えてください

広告代理店に入って、初めて広告の実務に携わった時にも、圧倒された記憶はありますが、最大の試練はいつだったかといえば、繰り返しになりますけれども、ボーズでの最後の5年間ですね。ボーズはもとからグローバル企業でしたし、日本に限らずどの拠点でもその製品に誇りを持ってビジネスをしていましたが、やはり当時の日本の社員には「日本のマーケットではこうしてきた」という自負がありました。

製品や理念は不変でも、方針が変わればやり方も変わります。「納得いかない」という声も出ます。その一方で日本のトップが短期間の内に複数変わったりもしましたから、会社全体が落ち着かない状況。そんな中、「本社と日本の橋渡し役」みたいな立場になった私自身も、葛藤を感じていました。

ただ、どうやら逆境に自分から突っ込んでいく性分のようなものもありますし、おかげでその都度、人に助けていただきました。やっぱり大事なのは人。だったら自分は何をすべきなのか、という姿勢を、周囲の方々の助けのおかげで手に入れることができたのではないかと思っています。

[10]影響を受けた先輩や、師匠といえるかたはいらっしゃいますか?

今も申し上げた通り、私は常に周りの人に助けてもらってここまできましたから、すべてのかたが師匠だと言えるのですが、特に強烈な1人を、ということであれば、当時のボーズの社長だった佐倉さんです。グローバルなボーズが大切にする理念を体現する一方で、それを日本で成功につなげるべく、独特のビジョンや発想を示す方でした。

「商売(あきない)」における感覚の鋭さと、人に対する温かさを併せ持っていて、とりわけ「人を巻き込んでいく力」には驚きました。憧れましたし、「盗んでやろう」とも思いました(笑)。

[11]座右の銘や、独自の哲学などをお持ちですか?

とりたてて座右の銘を持ち合わせてはいませんが、大好きな言葉に「和敬清寂(わけいせいじゃく)」というのがあります。茶道の世界で使われる言葉で、茶の湯の心得として使われます。和を以て人を敬い、心清らかに寂然(静かで動じない)と振る舞う、というような意味合い。私にとっては生きていく上でのポリシーにもリンクしますし、CMOの役割を果たしていく上でも、とても有意義な姿勢だと思っているのです。

母が茶道を教える立場にいたこともあり、小さい頃からこういう言葉というか思想に触れたのですが、大人になってリーダー役を任されたりするようになってから、つくづく身に染みる言葉だと思うようになりました。また、誰しも留学や仕事を通じて外国で過ごしたりすると、かえって日本古来のものの良さに気づくことがあるかと思うのですが、私の場合もそうでした。

[12]感動し、影響を受けた本や映画などがあれば教えてください

実は母だけでなく、父も教育者なので、我が家には昔から本がたくさんありました。私が子どもの頃には、父が我が娘に読ませたい本を並べておくための本棚もあって(笑)、結構いろいろな本と出会ってきました。例えば影響を受けた書物の一つは『龍馬がゆく』です。言わずもがなでしょうけれど、司馬遼太郎さんが坂本龍馬を主人公にして書き上げた幕末の時代小説です。私が初めて読んだのは高校生の頃ですが、当時は「へえ、面白い。痛快だなあ」くらいの感想でした。

でも、その後、社会に出て仕事で様々な思いを募らせている時に読み返してみると、そのたびに違う教訓をくれる本だということに気づいていったのです。例えば、リーダーを任されて「人を巻き込んでいくにはどうすればいいんだろう」などと悩んでいる時には、龍馬が実行したやり方に舌を巻きました。「人というのは無理に追い込んで何かをやらせようとしても動かない。どこかに逃げ場も用意しておく必要があるし、結局のところ人を動かすのはビジョンや夢の部分なんだ」というような教えを、この本の龍馬は示していたのです。

[13]CxOというキャリアの将来性や、今後期待される役割について、どうお考えですか?

今後ますます重要になっていくと確信しています。CMOについていえば、先述の通り、マーケティングは会社の状況で変わっていくもの。状況とはつまり、社内環境の社外環境の両方です。社員がどういう組織で、どういう価値観のもと働いているのか。社会や市場やエンドユーザーの人々がどんな状況にいるのか。デジタルなどをはじめ、マーケティングに結びつく技術や手法が今どうなっているのか......などなど、あらゆる「状況」によって、マーケティングは変化しますし、変化しなければいけません。

ティアックは歴史ある素晴らしい会社ですが、マーケティング本部という組織さえありませんでした。社内のあらゆる部門を横串で刺すようなマーケティング部門を構築し、その組織の使命や果たすべき役割を明確にし、そこで必要になる仕組み、システム、フローを用意していく。それを内部・外部環境の変化に応じて変えていき、経営に貢献していく。それが現在の私の役割です。

CMOは、マーケティング部門の長になる、というだけでなく、経営を変革する影の原動力を会社中から集めてくる役目。CFOやCTO、CHROなど他のCxOも、根本の使命は同じだと思います。いかにその会社の皆が持つ力を経営の原動力に変換していくか。その重責がCxOにかかっているわけですから、これからはより明確にその重要性が浸透していくと考えています。

[14]ご自身の今後のキャリアビジョンについて教えてください

ティアックには今「新しい成長軌道」が示されています。その軌道にこの会社を乗せて行く役割をマーケティングに軸足を置きながら達成していきたいと思います。これが私のティアックの一員としてのビジョンですが、それとは別にもう1つ、私は「GAISHIKEI LEADERS」というコミュニティに参画しています。「外資系企業での仕事を通じて日本の未来に貢献していこう」という志でつながっているこのコミュニティからも、次世代の皆さんに何かしら伝えていければと願っています。

[15]若い方々へメッセージ、アドバイスをお願いします

伝えたいことが3つあります。1つは「自分の領域」を自分で狭めてしまわないでほしい、というメッセージ。かつて私は、まだ仕事のことがよくわかってもいないのに入社4ヵ月で退職願を出しました(苦笑)。けれども、懐の深い大人の皆さんのおかげで、チャレンジすることの意義を教えてもらいました。

広告代理店へ入った時も、留学後事業会社に入った時も、「初めて」づくしでしたが、チャレンジをしたおかげで、それまで知らなかったことをたくさん学びました。強みとなる武器、自らの専門領域を持つことは素晴らしいことですけれども、「自分はこれとこれをやればいい」と狭く考えていたら、大きく成長する機会を逃してしまうと思います。

2つめは、目の前の仕事で結果を出すだけでなく、同時に「5年後、10年後の自分」をイメージして、そのためにやるべきことを考えていくようなビジョンを備えてほしい、というメッセージです。私だって、はじめはビジョンなど持ち合わせていませんでしたから偉そうなことは言えません。けれども夢中でチャレンジをしていく内に、見えてきたのです。闇雲に目の前のことだけにぶつかっていくだけでなく、少し先の自分をイメージして行動することの意味や面白さが。現時点ではまだ明確なビジョンがなくたっていいと思います。ただ、自分が歩んでいくキャリアの道筋にマイルストーンを置いていくような発想や行動を実践すると、しだいに未来へのビジョンが開けていく。私はそう信じています。

最後の3つめは、常に自分を客観視してほしい、というメッセージ。
例えば、会社の中での自分の立ち位置、自分が所属するプロジェクトやチームでの役割。例えば、自分が今後歩んでいくキャリアパスの道のりにおける「今の自分」。例えば、この社会に属している個人としての自分......こうした様々な「自分」をそれぞれ客観的に見て、捉えていくことができたなら、最初に挙げた「自分の領域を狭めていないかどうか」も、2番目に挙げた「ビジョンを持って行動しているかどうか」も、しっかり把握できるようになるはず。そうなれば、きっとチャレンジすることが面白くなっていきます。どうか自分の可能性を信じて、励んでほしいと思います。

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