ヘルスケア業界各社の状況:【製薬大手企業】編
日系製薬大手企業
1. 武田薬品工業(http://www.takeda.co.jp/)
【概要】 江戸時代から続く日本の製薬トップ企業。2019年、米国のシャイアー社を買収し、念願のグローバル売り上げトップ10企業の仲間入りを果たす。 現在は19名いるエグゼクティブチームのうち、日本人は5名のみ。日本発の外資系企業の様相を呈している。 オンコロジー・希少疾患・ニューロサイエンス・消化器系疾患・血漿分画製剤・ワクチンの6つを重点領域としている。それ以外の事業は売却を推し進め、事業の選択と集中を強化している。2021年4月には長く自社ブランドとして保持していた「アリナミン」を中心とする一般用医薬品事業をブラックストーンに売却している。また、2011年に完成した湘南研究所は現在湘南ヘルスイノベーションパークとして、多数のベンチャーや研究機関が入居する知の集積地となっている。
2.大塚ホールディングス(http://www.otsuka.com/jp/)
【概要】 大塚HDは大塚製薬、大鵬薬品、大塚化学等からなるホールディングスである。基幹企業である大塚製薬は医薬品関連事業と健康食品・化粧品などを扱うニュートラシューティカルズ関連事業を事業の両輪としている。研究開発は日本、米国、中国に、臨床のネットワークを欧、米、日、韓、中に有しているグローバル企業。医薬品関連事業の重点領域は中枢神経、がん、結核、眼科、消化器・循環器である。自社の代表的製品だった中枢神経では「エピリファイ」は2015年に特許切れ。売り上げは減少傾向にあるが、後続品の「レキサルティ」や持効性筋肉注射製剤として双極性障害の追加効能が承認された「エビリファイメンテナ」が好調。
3.アステラス製薬(https://www.astellas.com/jp/)
【概要】 2005年に業界3位の山之内製薬、5位の藤沢薬品が合併しアステラスが誕生。同社は早くから海外進出に積極的で多くの大型医薬品を持っていた。しかし主力品の「ミカルディス」の特許切れ等苦しい時期もあったが、イクスタンジ等のがん領域製品や米国での売り上げが好調。現在は日本よりも米国の売り上げ比率が高まる等、海外進出が加速している。 がん、泌尿器、移植領域の既存疾患領域に加え、筋疾患、眼科などの新疾患領域及び再生医療(ips細胞、ES細胞)などの新技術も取り込んでいく。
4.第一三共(http://www.daiichisankyo.co.jp/)
【概要】 三共と第一製薬の合併で2005年に誕生。イノベーティブ医薬品、OTC医薬品、ワクチン、国内後発薬事業を展開している。連結売上の3割以上を占めた高血圧治療薬オルメルサルタンの特許切れ等もあるが、それに代わる画期的な新薬のがんを中心としたパイプラインが揃いだしている。2022年度に1500億円を掲げるがん領域の売り上げ達成は確実視され、またCAR-Tを用いた再生医療にも着手。
5.エーザイ(http://www.eisai.co.jp/)
【概要】 昭和11年に15人の研究者が起こしたベンチャー企業がグローバル企業へ発展。新薬開発型企業として認知症や抗潰瘍薬の主力製品を開発したが特許切れがあり業績が谷間に。中国及びアジアでは大きく伸ばしている。 注力はやはりがんとアルツハイマー。抗がん薬「レンビマ」は現在甲状腺がんの治療薬として主力製品に成長。アルツハイマー治療薬は開発の進捗が国内外から注目を集めている。 ジェネリック事業も持っていたが、2019年に日医工に譲渡。
外資製薬大手企業
1.ファイザー(http://www.pfizer.co.jp/pfizer/)
【概要】 1849年発祥の製薬グローバル大手企業。日本には田辺製薬と合弁で1953年に事業を開始した。その後米国の完全子会社を設立し1997年には売上1000億円を越えた。その後、ワーナー・ランバート、ファルマシア、ワイスを買収し、大型の特許切れ製品の売上減を補ってきた。近年は乳がん治療薬イブランスや免疫炎症領域のゼルヤンツが好調。特許の切れたエッセンシャルヘルス製品は新会社のアップジョンを設立移管ののちに、グローバルジェネリック大手マイランと統合してViatrisとして出発。
2.MSD(http://www.msd.co.jp/)
【概要】 125年の歴史を持つグローバルヘルスケア企業。米国・カナダではメルク、その2か国以外はMSDを名乗っている。2009年にシェリング・プラウを買収し2010年には萬有製薬を吸収し現在の姿に。 近年は抗がん剤領域の進捗が大きく、PD-1阻害剤の「キイトルーダ」は併用療法も次々に承認され、同社の売り上げの20%を占める大型製品に成長。子宮頸がんワクチン「ガーシタル」等のワクチン領域も堅調。
3.ノバルティスファーマ(http://www.novartis.co.jp/)
【概要】 スイスに本社を置く世界180か国に展開するヘルスケアのグローバルリーダー企業。ノバルティスファーマは新薬で世界トップを常にファイザーやロシュと争う。がん領域事業をグラクソから買収したがん領域は順調に成長し今や売り上げの4分の1を占めるまでに成長。また2019年に承認を得た「キムリア」は国内初のCAR-Tを用いた細胞療法として注目を集める一方、3000万円をこえる非常に高額な薬剤としても話題に。
4.サノフィ(http://www.sanofi.co.jp)
【概要】 フランス・パリに本社を置くグローバルファーマ。糖尿病、がん、循環器疾患、内科系疾患、希少疾患、ヒト用ワクチン等が主要領域。2017年にはベーリンガーとの事業交換でエスエス製薬を傘下に収め、一般用医薬品事業も強化。
5.アストラゼネカ(http://www.astrazeneca.co.jp/)
【概要】 イギリスに本社を置く医療用医薬品の創薬・開発・製造・販売を行うグローバル展開するバイオ・医薬品企業。重点領域は、がん、循環器・代謝疾患、呼吸器・炎症・自己免疫疾患。これまで循環器・代謝領域および呼吸器領域の医薬品が主力だったが、相次ぐ特許切れに伴い、がん領域の薬の売り上げシェアが向上。シムビコートやクレストールに代わってタグリッソといったがん領域の売り上げ成長が著しい。
6.グラクソスミスクライン(https://jp.gsk.com/jp/)
【概要】 イギリスに本社を置くグローバル企業。医療用医薬品事業、コンシューマヘルス事業、ワクチン事業を手掛ける。医療用医薬品事業では呼吸器領域、HIV領域に強みを持つ。また、ノバルティスからワクチンおよびコンシューマーヘルス領域を取得。コンシューマー領域は別会社化し、さらにファイザーの大衆薬事業も総合し世界でも最大規模のビジネスとなっている。ワクチン領域は帯状疱疹ワクチンが売り上げ好調。 ちなみに、グローバルアクセスに非常に熱心な会社としても有名。
7.日本ベーリンガーインゲルハイム(http://www.boehringer-ingelheim.jp/)
【概要】 ドイツに本社を置く製薬企業。非公開企業の製薬会社としては世界最大。世界145の関連会社で4万7500人の従業員が働いている。フランスサノフィと事業交換を行うと報道されている。医療用医薬品分野では心血管・代謝、腫瘍、中枢神経、呼吸器の領域で医薬品を販売している。外資系企業で唯一、日本国内に研究所と工場をいずれも持っており、日本マーケットに対する本国の期待値は高い。
8.日本イーライリリー(https://www.lilly.co.jp/)
【概要】 1876年に創業。米国インディアナポリスに本社を置くグローバル企業。外資系製薬メーカーでは唯一神戸に本社を置く。世界で初めてインシュリンの製剤実用化に成功した。売り上げに対する研究開発費の割合が高く20%程度を毎年投資している。通常は15%前後。がん、糖尿病、筋骨格、中枢、自己免疫疾患、成長障害、疼痛等の領域医薬品事業を展開。長年事業部であった、動物薬のエランコ事業部は分社独立。
9.ブリストル・マイヤーズ スクイブ(http://www.bms.co.jp/)
【概要】 米国に本社を置くグローバル企業。がん領域に圧倒的に強みを持ち、話題となったオプチーボを国外で販売。また、8兆円を投じセルジーンを買収。武田とシャイアーを上回る買収劇となり、世間を驚かせた。この買収によって、さらにがん領域の製品群が拡充。売り上げランクも世界トップ10の仲間入りを果たす見込み。
10.アッヴィ合同会社(http://www.abbvie.co.jp/)
【概要】 米国アボットの医薬品事業の新薬部門が2013年に独立しスタートした企業。125年の歴史を持つ会社。前年比16%の売り上げの伸びを見せ、グローバルではメルクを抜き世界6位。関節リウマチ薬のヒュミラ以外にもイムブルビカ、マヴィレット等大型新薬を複数抱えている。また、ボトックスで有名なアラガンを買収する予定であり、売り上げランキングはさらに上がりトップ5の仲間入りを果たす予定。
11.ギリアド・サイエンシズ(http://www.gilead.co.jp/)
【概要】 1987年に創業。米国カリフォルニア州に本社を置く。感染症領域に強みを持つグローバル2位のバイオ医薬品企業。日本は2012年に法人設立。C型肝炎の薬、ハーボニーは副作用が少なく、96%以上の治癒率を誇る画期的な医薬品。この製品群で1兆円を売り上げた。 ハーボニーの売り上げはピークアウトしたが、HIV治療薬が今後の主力として期待されている。エボラ出血熱用に開発した、レムデシビルがコロナウィルスに対抗できる薬剤として承認を取得。