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株式会社HRBrain 取締役CFO 井出 翔 氏 × テックタッチ株式会社 CFO/事業開発管掌責任者 中出 昌哉 氏 CFOの仕事術 #01

CFOの仕事術

PEファンド出身CFOの「CFOらしくない」仕事術

ファイナンスはCFOの仕事の10%しかない?

スタートアップ冬の時代と言われてはや1年以上。SaaS企業を中心に厳しい評価を受ける時代になっている。市場からは「成長と利益の両立」という難題を突き付けられている中、CFOのかじ取りの重要性が増している。
今回は、投資銀行→PEファンド→SaaSスタートアップという似たキャリアを歩み、いずれも成長を続けているHRBrainとテックタッチのCFOに話を聞いた。
前半は、彼らのミッションや仕事内容、楽しさを感じている点などについて、対談形式でざっくばらんに語って頂いた。

【前編】CFOは事業の成長にコミットするべき
~成長を続けるSaaSスタートアップのCFO2人が語る、事業を伸ばすための新・CFO論〜

<キャリアの変遷と所属企業の紹介>

【中川】お二人のキャリアの変遷と現職企業のご紹介からお願いできますでしょうか?

【井出】大学卒業後、みずほフィナンシャルグループに入社しました。最初の2年半は銀行で中堅、中小企業向けの営業を担当した後、みずほ証券に異動して、M&Aのアドバイザリー業務を3年ちょっとやりました。2014年にプライベートエクイティファンドのインテグラルに転職して、投資のソーシング、エグゼキューションから、投資後の事業支援、IPO準備、ファンドレイズにも一部関与させて頂き、本当に幅広い仕事に携わって6年半ほど過ごしました。

在籍した6年半のうち5年くらいは投資先に常駐していました。製造業の会社や2022年12月に上場したスカイマークなどの投資先に週5で行っていて、その間は新規投資よりは事業支援。ファイナンスバックグラウンドではありながらも、事業会社での事業や経営にかなり深く入っていたというのが私のキャリアの一つ特徴かなと思っています。

HRBrainは2021年4月に入社して、間もなく丸2年になります。取締役CFOという立ち位置でコーポレート部門を中心に見てはいますが、プロパーの社内取締役が代表の堀と私の2人だけで、あとは社外取締役2人で構成されているので、実際はコーポレート中心といいながらも結構事業の方も含めて見ていますね。

当社の事業については、HRBrainという社名のとおり、いわゆるHR TechのSaaS企業です。もともと人事評価の領域から参入して、そこからプロダクトをどんどん拡張していて、今は6つあります。特に去年、4つ新しくプロダクトリリースして、てんやわんやな状態であるんですけど何とかやっています。プロダクトはいわゆる人事DX的な観点もありますが、いわゆる戦略人事的な、例えば離職防止や最適配置エンゲージメント向上等を実現するためのクラウドやコンサルティングサービス等を提供しています。

【中川】ありがとうございます。では中出さんお願いできますか?

【中出】2011年に野村證券に入社して、企業情報部というM&Aの部署で5年半ぐらいM&Aを担当していました。ナチュラルリソースセクターという部署にいたので、鉱山の買収案件に携わったり、石油系の企業の統合や買収等を行っていたというのがキャリアの最初ですね。

その後にMIT SloanというMITのMBAスクールに行ったのち、カーライル・グループというプライベートエクイティファンドに入りました。3年くらい所属して、リガクという検査装置などの会社に投資したり、三生医薬という健康食品のOEMメーカーのバリューアップとExitを担当したりもしました。

テックタッチに入ったのは約2年前で、井出さんと同じ時期です。役職はCFOですが、コーポレート系は資金調達以外はほとんどやっておらず、ほぼ事業を見ています。ビジネス面だけでなく、最近はプロダクトマネージャーもやっています。

【中川】ありがとうございます。数あるプライベイトエクイティファンドの中で、なぜそれぞれインテグラルとカーライルを選んだんですか?

【井出】僕が入社した2014年当時は、インテグラルが2号ファンドの資金調達をしているタイミングで、投資がしっかりできるステージにいたためです。また、インテグラルは、投資先への支援をハンズオンでしっかりやるという方針なので、金融面だけでなく、事業にもしっかり関与しながらバリューアップする点も魅力に感じました。投資先の人もハッピーになるし、インテグラルのファンドとしてもしっかりリターンを出せますから。

【中川】ご経験を、今の仕事にかなり活かされていますね。

【中出】僕がカーライルを選んだ理由も井出さんに近いです。投資チームと投資後のバリューアップチームが一緒の会社は数社しかいなくて、バリューアップとポートフォリオモニタリングがしっかりできる会社の一社でした。

外資系企業のほうがいいなとは思っていました。PEなどの金融は外国で始まった仕組みなのでナレッジがたまっているし、ファンド規模も違います。ナレッジを日本に持ってきて展開したり、日本企業が海外進出する時のサポートができることも魅力に感じました。

【中川】現職企業のご紹介もお願いします。

【中出】提供しているのは、どんなwebブラウザ上のシステムでもガイダンスを出せる「テックタッチ」というツールで、三つの用途があります。一つは大企業さん向けです。難しいシステムを導入する時代になり、従業員の方はなかなか使いこなせない。今まではマニュアル見て操作方法を覚えて使いこなそうとユーザーが頑張っていましたが、それもできないぐらい分岐も多くて条件も複雑になっています。

テックタッチは、使いこなすためのストレスを下げるためのソリューションを提供しています。次に何をすればいいのかの案内を画面上に出して、スムーズに操作できる「デジタルガイダンス」のツールを提供、販売しています。三菱UFJ銀行さんやトヨタ自動車さんなど、本当に名だたる大企業さんのDXのラストワンマイルを支えています。これが一つ目の軸です。

【中川】他にはどんな用途があるんですか?

【中出】SaaSメーカーさんに使っていただいて、CSの方が手取り足取り行っているオンボーディングを、テックの力で完了できるようにしています。人間の代わりに「テックタッチ」自体が操作方法を教えてくれることでSaaSを効率的に運営していくというドメインです。

最後に、公共セクター向けのドメインで、デジタル庁さんなどにも使っていただいています。「誰もが簡単に、誰一人取り残さないDXをしていこう」という発想で複雑なシステムに使っていただいています。プロダクトは一つですが、使われ方によって使う機能が違うので、大企業・SaaS・公共セクターとドメインを分けています。

<自身のミッションについて>

【中川】入社したときを振り返っていただいて、入社時に置いたご自身のミッションと、なぜそのようなミッションを置かれたか教えてください。

【中出】入社時のミッションはCFOでしたが、「ファイナンスは得意ですが、CFO自体のロールに興味はないです」って言っていました。それは今でもそうです。僕のミッションは事業を育てること。営業もCSも、事業を伸ばすために何でもやろうと思って転職しています。鬼のように営業して、自分で取ってきて自分でCSもやり、創業期の会社の一人目社員みたいな感じですね。営業担当よりも売り上げを立てたくらい、やりました(笑)。今は自分でセールスやCSをやることはなくなっていますが、引き続きSaaSと公共の二つの事業ドメインは自分で見ています。自分で営業したことで事業のペインや売り方が分かるので、その点は非常に良かったと思っています。今はプロダクトのほうにも軸足を置いていて、PMM(プロダクトマーケティングマネージャー)と呼ばれるロールを持っています。多分CFOの業務としては特殊なのであまり参考にならないかもしれないですけど(笑)。

【中川】CFOとは思えない業務範囲ですね。今、何という役職なんですか?

【中出】役職の長さだけはすごくて(笑)。CFOと、二つ持っている事業ドメインのヘッドと、BizDevと、プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)ですね。

【井出】聞いたことない長さですね(笑)。

【中出】当初はいろんな人に「CFOに専念したほうがいいんじゃない?」と言われました。

【中川】今は事業に近い立ち位置で事業を伸ばせるCFOが求められているので、本当に素晴らしい業務内容だと思います。井出さんはいかがですか?

【井出】あまりミッションとして堅苦しく置いたものはないんですが、入社前に代表の堀と話していたのは、「5年も10年も先じゃない数年内にユニコーン企業にするために、とにかく引っ張ってほしい」ということを強い思いと言葉で言われていました。ユニコーンは通過点として、それ以上にしたいと考えています。

自分の役割も、資金調達だけではなく、足りないところがあればどこでも入っていくつもりで入社しています。実際のところ、ファイナンスだけだと業務量はそこまで多くないですよね。僕は、中出さんほど事業に関わって自ら動いているわけではありませんが、今は事業責任者たちがどんどん立ち上がっているので、彼らに伴走しながら、戦略の構築とかエグゼキューションのサポートをしていますね。

<具体的な業務内容について>

【中川】ではお二人の業務内容をもう少し深掘りしたいと思うのですが、中出さんの業務内容をもう少し詳しくお話頂いてもよろしいでしょうか?

【中出】調達があればもちろん増えるんですが、いわゆるCFO業務は10%ぐらいですね。
あとは、自分が見ている事業で40~50%の時間を使っています。事業責任者がやっているように、必要に応じて自分で顧客接点を持ったり、みんなと方向性などを考えて話し合ったり、予算に対しての具体的な実行のモニタリングをしたり、ですかね。
10~20%は事業戦略を立てて、FP&A(Financial Planning & Analysis)と呼ばれる数字の見える化と、戦略から照らし合わせて今やるべきことを考えるいわゆる「逆引き系」です。残りの20~30%はプロダクトで、ロードマップを決める議論もしています。

【中川】現場仕事をやっているかどうかで具体的にどんな議論の違いがありますか?

【中出】例えば、価格設定についてお客さんの層による設定の変え方とか、新機能についてこの機能を作ればCSが楽になりそうとか、営業にとってためになるとか、イメージがつくようになりますね。社内リソースから考えてプロダクトを描けるようになったりもします。戦略を考えるにあたってプロダクトとBizは勿論どっちも大事なので、それをお客さんの視点をベースに考えられるようになったというのは良かったなと思いますね。

【中川】どうしていきなり未経験でできるんですか?

【中出】本気度合いじゃないですか(笑)。やれば誰だって、大なり小なり絶対できるはずです。本当に事業を伸ばしたいと思えば、PDCAサイクルを高速に回せると思います。金融業界って要は営業なので、経験から学んでいるとも言えますが、自分で予算を持って営業したことはなかったですから。

あとは、うちの会社がベンチャーなので、「やってみようぜ」という風土があるのも良かったですね。

【井出】すごく分かりますね。ファンドもM&Aのアドバイザーもある種営業だし、マーケティングみたいなところもあると思います。売っているものや相手が違うだけで、実はやってることや考え方はあんまり変わらない気がします。ある意味、資金調達も営業とマーケティングですし。

【中川】井出さんの具体的な業務内容や業務範囲をお話しください。また、前職の経験をどのように活かされていますか?

【井出】中出さんの関わり方からしたらちょっとだけ、という感じになってしまうかもしれないですが、入社した当初はお客さんの商談同席をして、営業の提案やデモの様子を頻繁に見て勉強しました。
ちなみに、インテグラルで常駐した2社で人事を経験しました。1社目は150名ぐらいの製造業の地方の会社、2社目はスカイマークで社員数2500名ぐらいと、全然規模感やエリア、企業ステージが違っていたこともあって、人事業務の解像度が上がったと思います。企業の人事部の業務、予算組み、人材配置の検討、各種手続きなど、ファイナンスバックグラウンドの割には、知見があって解像度が高かったのは良かったと思います。そういった経験を活かして、当社のHR Techの事業と関わっています。

事業との関わり方でいうと、ファンド在籍時代に投資検討やDDのプロセスを数はこなしているので、戦略の構築や考え方、数字や現場のKPIへの落としこみは、これまでの経験が結構生きていると思っています。

それから、僕の場合はコーポレート部門も見ています。基本的には執行役員に任せるようにしていますが、社員数も今150名ぐらいまで増えてきてるので、やっぱり種々雑多なことが発生しますね。

【中川】インテグラルで投資検討、投資したのは結構マチュアな産業ですね。SaaSのCFOが務まる共通点は何かあるんですか?

【井出】僕はSaaSの方が相対的には数値管理や戦略設計は、簡単だと思っています。製造業と航空会社はめちゃくちゃ難易度が高かったですね。実際の物があるし、例えば製造業であればサプライチェーン、歩留まり、材料の調達、リードタイムなど色々な変数がありますから。

ただ、当社もプロダクトが増えてきてはいるので、難易度が今どんどん上がってきている。とは言え、SaaSだから特別難しいとか、特殊な何かが必要というわけでもないと思います。

【中川】組織戦略や採用戦略には関わっていますか?

【井出】採用戦略は細かい戦術的なところは任せていて、組織戦略には入ってますね。今マルチプロダクト化を進めていますが、いろいろ課題が出てきているので、そこを解消するための組織体制づくりに今まさに音頭を取って取り組んでいます。

これまで経験はありませんが、経験の有無はあまり関係がなくて、単純に問題や課題を解決するにあたって、ゴールから逆算して何が必要かを突き詰めていく。すると、おのずと結果が出る、というやり方です。

<課題や悩みについて>

【中川】課題や悩んでいることはありますか?

【中出】目下の課題は、SaaSのマーケットが崩れていて、世界経済の先行きが全然読めないことです。シリコンバレーバンクの話もありますし、そこを読むことは難しい。ただ、SaaSは相対的に簡単だという井出さんの言葉は、まさにその通りだと思っています。SaaSがここまで広がっている理由は、簡単に始めやすくて模倣しやすいから。それゆえに、売上高をがんがん上げていくことやアクセルを踏んでプロダクトを差別化して「攻める」ことが必要ですが、今の市況感だと調達も厳しいし、バーンマルチプルも見られます。「経営を筋肉質にする守りも重要」という市場からのメッセージが飛んできている。

SaaSは誰も知らない局面に入ってきていると思っていて、バランスをとりながら、いかにうまくかじ取りをするかが、目下の課題感ですね。

【中川】ようやくCFO的な観点が出ましたね(笑)。

【中出】ようやく出てきました(笑)。

【中川】井出さんはいかがですか?

【井出】事業責任者やリーダー層に現場寄りのメンバーが多いので、戦略的な思考や構造化、中長期を見据えて考えるべきところが視野が手前になりがちなときがあります。中長期を見据えてモート(競合優位性や企業の強み)をいかに築き、グロースさせていくか、戦略的な観点で考える習慣がまだあまりないメンバーもいたりするので、そこの意識付け、俯瞰的に見るための時間をとっています。

今後もプロダクトを増やしていくので、今いるメンバーの意識、目線を変えていくことが自分の課題ですかね。

--- 後編は、CFOの腕の見せ所である「資金調達」についてと、調達後の資金の使い方について、二人が語ります。

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