シーメンスグループ内でのジャパンオフィスの評価も一気に上がったと聞きました。
シーメンスは、数ある世界的企業グループの中でも際だってフェアなグループだと私は考えます。遠く離れた極東のジャパンオフィスでも、目に見える成果を上げればストレートに評価してくれる。しかも、昨日や今日、海外拠点を設けたばかりというような企業ではなく、世界各地に長年根をおろしている企業です。どの地域がどういった固有の課題を抱えているかまで、グループ全体が理解しています。医療機器のセールスにおいて、日本は世界有数の激戦区なんです。市場成長率は低く、その上多くの競合がいる。その事実をドイツのヘッドクォーターのみならず、各地の主要メンバーが理解していましたから、今回の成果については本当に高く評価をしてもらいました。
とはいえ、佃さんは「まだ道半ば」だとおっしゃっているそうですね?
はい、本当の勝負はこれからです。SFE戦略の実行によって、量的な部分の問題解決は進みましたが、今大急ぎで進めようとしているのが質の部分の強化です。セールスを成功させるための1つの型のようなものは出来てきましたが、あくまでも大まかなプロセスを作っただけのこと。実際の最前線では1人のセールス担当者が多くのお客様を担当しています。そのお客様それぞれに異なる課題や問題があり、解決をしていかなければいけません。
先に申し上げた通り、お客様の側の意思決定プロセスはマチュア化しています。似たような課題が複数のお客様から見えてきたとしても、必要となる解決策はそれぞれの事情で異なってきます。常にフレキシブルに考え、適切な判断を即座に下していくことの重要性が高まっています。これらはトップダウンでは対応し切れません。各エリアや営業拠点に優秀な営業・マネージャーがいなければいけない。言い換えれば、営業・マネージャーのコンピテンシー向上を急がなければ、質的な成果は上がっていきません。
ですから、量的改革に一定の成功をおさめた今、私たちが注力している質的改革とは、人と組織の再強化です。その鍵を握るのがSales Competency Development Managerと呼んでいる組織能力開発を担う優れたリーダーの獲得・育成なのです。
経験と実績のある社内人材の育成と同時に、社外人材の登用にも積極的だと聞いています。やはり医療関連の業界経験は必須なのでしょうか?
私は業界経験にはこだわっていません。その一要因となっているのが、繰り返し申し上げている病院経営のマチュア化です。かつてのように、それぞれの医療施設に意思決定の全権を任された特定の個人がいて、その人にセールスをしていけば良い状況だったならば、経験が持つ意義や意味は大きくなります。しかし、お客様の側はどんどん集団による意思決定のスタイルに変わっています。見方を変えれば、以前よりもずっと一般的なB to Bビジネスの環境に近づいてきているんです。
ですから、「どれだけこの業界に長くいたか」あるいは「いたことがあるのか、ないのか」は問いません。むしろ、異業種であってもB to Bビジネスで成果を上げてきた方に魅力を感じます。組織的な意思決定プロセスを前にした時、どれだけ頭を柔らかくして「何が問題なのか」「それを解き明かすにはどのような対応がベストなのか」を考え、チームとしての行動のあり方を見定め、実行に移してきた方は、必ず成功できると確信しています。
良い意味で業界固有の特異性が薄れてきているからこそ、今がチャンスといえるわけですね?
はい。チャンスだと感じ取ってくれるメンタリティの方が医療業界経験の有無に関わらず数多く現れていただけたなら嬉しいです。
あらためて伺います。今、シーメンスが求めているSales Competency Development Managerとは具体的にどのような人物像なのでしょう?
必ず伝えている条件があります。それは「科学の目と、人の心を併せ持った人」です。もしくは、この2つを伸ばしていきたいと考えている人に是非参画してほしいと思います。問題解決や目標達成のための策を科学的かつ論理的に考え、作っていける人。そして、策を練るだけでは終わらずにインプリメント、つまり実行・実現にまでコミットしようという気構えを持つ人であってほしい。
具体的には、シーメンスの高品質・高性能な製品をお客様にご評価頂き、ひいては患者様の利益につなげるための高い志を持ち、知力と情熱を傾けて自ら動くことで相手の心に火をつけることができる「熱きリーダー」を目指す方こそ、このポジションにふさわしいと思います。
また、営業・マネージャーのコンピテンシー向上には、彼ら一人一人に自らの成長に向けての高い意識を持ってもらうことが必要です。そのように人の心を動かす存在になるためには「情熱」「知的タフネス」「誠実さ」の3つが不可欠なのだと、私は社内でも常々主張しています。この3つを併せ持ち、先の「科学の目」「人の心」を持ち合わせている人ならば、必ず成功します。
私たちシーメンスはそのような高い志を持つ可能性のある方を大事にし、責任をもって支えます。どうか多くの熱意ある方々に参画していただきたい、そう願っています。
(※2016年1月1日にシーメンスヘルスケア株式会社に社名変更しました)
プロフィール
佃 浩一氏
ヘルスケアセクター
CRM部 部長
国立理工系大学院修了後、銀行系シンクタンクおよび大手SIerを経て、2003年、ボストン・コンサルティング・グループに入社。多様な業種のプロジェクトを手がける中、医薬系SFEプロジェクトにも数多く参画。独自の問題解決手法に磨きをかけながら実績を築いた。2006年、外資系大手医療機器メーカーに入社。医療機器営業の最前線を経験した後、営業企画部門、新規事業開発部門で成果を上げた。2011年、シーメンス・ジャパンに入社。以来、ヘルスケアセクターでのCRM部門を統括しながら、ジャパンオフィスならではのSFEプロセスを開発して成果を上げ、グローバルで高い評価を獲得。現在は更なる成長へのKeyとなる営業組織のコンピテンシー向上に向けた取り組みに注力している。
この企業へのインタビュー一覧
- 「プロ経営者」になる。〜経営者インタビュー]
- 代表取締役社長兼CEO シーメンスグループ日本代表 兼 ヘルスケアセクター リード 織畠 潤一 氏
(2013.11)
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