今回から、コラム「バイアウトファンドでの若手の仕事」で書いた若手の仕事をフェーズごとに分けて詳細を書いていこうかと思います。初回は、ソーシングフェーズについて紹介したいと思います。
ファンドに入社を希望する方々から、「若手も投資対象となる企業の発掘をするんですか?」と質問されることがあります。これに対する答えは、「ファンドによります」という回答になります。コラム「バイアウトファンドに向いている人1」に書いた通り、バイアウトファンドにはそれぞれ組織スタイルがあり、役職ごとに役割が明確でヒエラルキーがあるファンドもあれば、役職ごとの役割があまり明確になっておらず、比較的フラットなファンドもあります。前者のファンドであれば、投資先の発掘は、シニアメンバーが担当することになります。一方で、後者のファンドであれば、シニアメンバーと共に投資先の発掘に参加することになります。
具体的にどのように投資先の発掘活動をしているのでしょうか。シニアメンバーであれば、長年の付き合いの中で構築し人脈から案件開拓を行っている方もいますし、自ら経営者ネットワークから経営者同士の懇親会などに参加されている方もいます。このような経験や経営の立場を活かしたシニアメンバーのような発掘活動は若手にとって難しいです。そのため、若手が投資先を発掘する際は、まずは社内でリストアップを行い、そのリストを持って投資銀行(証券会社)、銀行、M&Aアドバイザリーファームに相談にいくことが多いです(リストアップした企業に直接にアプローチすることもできますが、あまり積極的に行っていないのが現状です)。
リストアップのアングルを例示すると、以下のようなものがあります。
● ファンドで得意とする業界・業種
● 株価が低迷している(上場意義を見出しづらい)上場企業
● 大企業のノンコア領域に属する子会社
● 創業オーナーが高齢
もちろん、開示されている情報をもとに、自分たちのファンドの投資対象となっている企業規模かどうかは、リスト作成をしながら確認しています。加えて、極めて初期的ですが、投資シナリオの仮説をリストに書くようにしています(具体的には、自分たちが投資することで投資先にどのようなメリットをもたらすのか、我々がどのようにリターンを出すのかに関して仮説を簡潔に書きます)。
若手は上記のようなアングルに沿って企業のリストアップと財務データの調査を行います。投資シナリオの仮説構築は、入社してすぐの若手には難しいですが、徐々に提案書の作成や投資実行経験を積むことでできるようになります。
実際の現場では、リストを作成して投資銀行等金融機関やM&Aアドバイザリーファームに相談し、投資候補先の意思決定者に面談できて、案件に至るケースは極めて稀です。しかしながら、このような活動を通じて、相談する金融機関やM&Aアドバイザリーファームに自分たちのファンドの関心が高い投資案件を認知してもらうことで、当該金融機関やM&Aアドバイザリーファームからの案件を受ける回数の増加につながったりしています。