キャリアインキュベーションを介してPEファンドへご転職した方に、PEファンドを志した経緯、転職活動で苦労したこと、選考準備等について具体的にお話を伺いましたのでぜひ参考にしてみてください。
【転職前】日系投資銀行
【現在】独立系スモールキャップPEファンド
自己紹介お願いします
大学は関西の学校で経済学部卒業です。
新卒で大手製造業の会社に入社し、数年間コーポレート関係の部署で勤務していました。
その後、日系証券会社の投資銀行部門に転職しています。
投資銀行ではカバレッジバンカーとして約3年間勤務し、アナリストとアソシエイトロールを経験しました。主に人材セクターとITサービスセクターを担当し、M&AやIPO等の経験を積むことができ、現在はPEファンドに勤務しております。
事業会社からカバレッジバンカーへの転職はユニークな経歴ですが、どのようなきっかけがあったのですか
1番はファイナンスの専門性を高めたかったという気持ちがあったからです。
経理等の会計を軸とする仕事では、将来設計よりも、元々立てた予算に対して実績はどうか、といった分析がメインとなります。
また、予算策定と言っても中長期的なものではなくて、今年をベースにして来年はどうるすか、のような短期的な視点の仕事が多く、それはそれで面白い業務ではあったのですが、自分で得た経理や会計の知見を使い、より中長期的な視点で仕事がしてみたいなと思い、ファイナンス領域でのキャリアに関心を持ちました。
当初はFASをメインで検討していたのですがM&Aというプロダクトのみならず、M&A含めてファイナンス全般にしっかりと関われるという意味で投資銀行を志望し、中でも幅広い経験が積めるカバレッジに行きたいなと思っていました。
事業会社、投資銀行勤務時代にPEファンドと接点を持ったことはありましたか
直接的な関わりで言うと投資銀行時代のみありました。
案件ベースで日系大手PEファンドと深く関わったのですが、EXITでIPOとM&Aを両方メインで携わっていたということもあって、そこでPEファンドの方々と仕事上の接点を持つことができました。その案件でPEファンドの思考回路など、色々なことに触れ、深い関りを持つことが出来ました。
ただ、思い起こせば1社目の事業会社でも直接仕事上の関りは無かったのですが『あれはファンド案件だった』みたいなケースがありました。
例えば、新卒1年目にもかかわらず、人事異動があり大きな事業部の担当になったのですが、あるファンドの買収案件が関与していたみたいで、間接的に関わりはあったという風に今考えれば思っています。
PEファンドに興味を持ったタイミングはいつ頃ですか
投資銀行に入社して3年目ぐらいが1番興味を持ったタイミングでした。
実は1、2年目はほぼ興味はなかったです。
3年目のPEファンド案件時にMBOから入って、EXITとしてそれぞれM&AとIPOを経験したのですが、EXITに至るまでの色々なバリューアップの施策であったり、投資後魅力的な会社になったことで、IPO市場で評価され、あるいはM&Aにおいて様々な買い手から関心を寄せられるなど、ダイナミクスに憧れたこともあり、関心を抱きました。
PEファンドに興味を持ってから、転職活動までの時間軸を教えて下さい
興味を持ったタイミングで案件が佳境に差し掛かっていたため、数カ月間準備が出来ず、落ち着いてから活動の準備に取り掛かり凡そ3ヶ月です。
実は、案件が一区切り付いたタイミングで異動の話があり、異動先はWLBが相対的に担保されていたため、ある意味転職活動を本腰入れてやるには今しかないという風に思ったのがきっかけです。
特に転職活動で苦労した点を教えてください
自分自身が受けていて感じた点は、大きく2つありました。
1つが、PEファンドに対する関心、自分自身の本当の熱意みたいなのが、最後まで腹落ちしきれた点です。PE業務に長年携わっていたことも無く、業界の造詣が深かった訳でもないので、面接では付け焼き刃のものは割と見破られたという印象があります。
2つ目が、M&Aをするにあたってエグゼキューション能力は要求されるのですが、カバレッジをメインでやっていたことから、いわゆるFAとしての取りまとめや、税務・法務等の個別論点まですべて網羅できているかというとそうではなかったので、単純に他の候補者と比べた時に劣後した局面というのも相応にあったと思っています。
熱意や、エグゼキューション力のアピールに向けてどのような準備をしましたか
エグゼキューションの部分がアピールしやすかったのですが、様々なM&A案件に携わったほか、案件化する前のピッチの段階から色々関わってはいたので、自分が経験した話をベースに、足りない知識・能力が『これだ』という風に特定できるため、こういった書籍で補足しているなど、入社後もそのようなキャッチアップ能力を示すことができる点は、自分の経験ベースで話すことができました。
熱意の部分は、最後まで埋めきれなかったと思います。ただ、ファンド案件に自分がコアに関与したので、他の人とは並ばないような志望動機は作れたと思います。自分だったらこうするや、ファンドの方のこういった言動が印象に残っているみたいな話が出来ました。いずれも自分の経験に根差した形で話したのは良かったと思っています。
面接を受けて大変だったこととかはありますか
1番は対面面接が多かったことです。Q&Aについては、自分自身がやってきたことをしっかり整理できていれば、それに沿って話すだけなので、そこまで大変な印象は無かったです。
また、あえて挙げるとすれば、モデルテスト・ピッチ作成も一部ありましたが、フリーフォーマット形式の自分自身で作成する課題はかなり対応しやすかった反面、指定のフォーマットで用意されたものは苦戦しました。これはカバレッジ部門から転職した友人も同様の印象を持ったようです。個人的な感想ですが、ある程度ファームで使われている様式に慣れていることが原因な気がします。モデル作成においてベースとなる考えが悪く言うと固定化してしまっており、結果的に面接を受ける会社で独自性の高いフォーマットが出た場合は苦労するのかなと感じました
PEファンドの選考は大変だったと思いますが、どのようなマインドで面接を乗り越えましたか
いわゆる大手ならどこでもいいみたいな感じではなかったので、自分が選ばれるのもそうですが、自分も選ぶみたいなスタンスで臨んでいました。結果的に落ちるファンドもたくさんありましたが、すごくへこんだかというと、そうではなかったと思います。終わってみればどこか引っかかるだろうみたいな、それぐらいのメンタルでやっていました。ただ、本来ファンドに行きたいという思いが先にあって、それに向けてどこのファンドにエントリーしていくかなど設計していく進め方が良いと思います。
どのような選定軸でエントリー先を選んだのですか
1番は実際に通過する可能性があるかどうかを大事に見ていたので、経歴や経験が多く求められるラージキャップは全く検討していませんでした。その上でミッドスモールが選択肢に上がりましたが、その中で特に好みを絞ったわけではありません。少しでも関心を持ったら応募してみて、自分が大切にしていることを基準に見ていきました。例えば、自主的に動ける環境や、人数が少なくて経験を積める機会が多いことなどです。自分の中で持っている仮説を検証していくような意味合いだと思います。
何社ぐらいエントリーされましたか
最終検討先含めてエントリーは合計すると15社くらいだと思います。
半分ぐらいが面接に進みました。入口でだいぶ絞っていたので、FA経験がないからお見送りという理由で書類が落ちたのが数社あるくらいでした。結果的に書類選考は結構通ったのかなと思っています。
エントリーした中で今回のファンドに決められた理由は何ですか
入社を決めたファンドは所帯が小さく人数が限られていたので、明らかに他のファンドと比べて経験が積めるだろうと思いました。投資実績もしっかりしていますが、ファンドに入っても投資の経験を積めないのでは本末転倒だと思っていたので、案件数の多さと人数の少なさのバランスがマッチしていました。選考過程で出会った方々とも自分の中ではフィット感があったので、他社ファンドも選考していましたが早々に現在のファンドに気持ちが向いていました。
実際に入社して、業務内容はいかがですか
オリジネーションとエグゼキューションを両方バランスよくやっています。一案件に責任者1名、担当者1名がアサインされるので、自分の仕事が直接シニアに上がっていきます。シニアによっては担当者に裁量を与えることもあるため、自分と外部の境目が薄いのが特徴です。これは私が求めていたものなので、とても良いと思っています。前職の投資銀行と比べると、階層が少なく直接外部とやり取りするのは、プレッシャーはありますが面白いと感じています。
大手の事業会社、投資銀行という大きな組織から、PEファンドという小規模な組織に移られて、想定と違っていた点はありますか
小さい組織なので組織に馴染むことがいかに大事かという点です。最終的にはファンドによりますが、普通の会社以上に自分が馴染めそうかどうかという点は見極める必要があると思います。
就業環境についてですが、出勤、リモートの割合はどうですか
ほぼ出勤です。体調不良や直行直帰の場合は在宅勤務が許可されますが、基本的には出社です。ただ、在宅勤務を希望する際の手続きは簡単で、メール1本で済みます。
また、出社時間は厳密ではありません。
キャリアINQ以外にもエージェントを利用されましたか
PEに関しては利用していませんでした。ベンチャーのCFO等も少し検討していましたので、そこは他のエージェントを使っていました。
事業会社とPEファンドへのキャリアは悩みましたか
悩んでいるようで、ほぼ悩んでいませんでした。やはり投資をすることに対してかなり興味があったので、PEファンドへの熱意は7割ぐらいでした。一方で、CFOのような立場で事業全体を見る経験も面白いと思いましたが、現時点でやりたい事業自体に確信が持てなかったこともあり、最終的にPEファンドを選びました。
PEファンド転職に限定しての質問ですが、弊社をご利用いただいたきっかけを教えてださい
本当に個人的なつながりです。以前ご支援いただいた担当者からメールをいただいたというのがきっかけです。
エージェントを増やそうと思いませんでしたか
思いませんでした。外形的に見ると、エージェントの違いは分かりづらくPE業界に限っては特定のエージェントに集約されている印象があったので、担当者で決めるだろうと思っていましたし、そもそも人材紹介というサービス自体が人に依拠したものだと思うので、特に迷いはありませんでした。
弊社をご利用頂き、使ってみてよかった点は何ですか
サービスの開始直後からずっと思っていましたが、特に選考情報を色々とご共有いただいた点や、コミュニケーションもかなり素早く、不安に感じることなく完遂できたと思っています。それは前職の転職で培ったやり取りの経験もあるでしょうし、その辺りを含めての人柄で選んでよかったと思う点です。
エージェントに何を求めますか
内部の事情ですね。どれだけ企業と関わっているかということだと思います。ざっくり言うと、コンサルバックが欲しいのか、金融バックが欲しいのか、金融バックの中でもプロダクトなのか、カバレッジなのかといった情報です。もちろん自分の経歴やキャラクターを偽ることはできませんが、全く可能性の薄そうなところにエントリーするのも時間の無駄だと思うので、この辺りの情報を取れるだけ取ってくださる方はすごくありがたいです。一方で、面接対策という意味では、結局モデルにせよ想定Q&Aにせよ、自分でやる話だと思うので、直接コンタクトがあることを存分に活用してくださるという点が最も大事だと思っています。
中長期的なキャリアについて何かイメージを持たれていますか
まずは何よりも経験を積むことなので、あまり中長期的の具体的なイメージを持っていないのが正直なところです。ただ、自分の動き方次第でいろんな道が考えられてくるとは思うので、常に幅広い視野を持っていろんな仕事に当たっていければなと思います。
そういうキャリアの幅の広さは、PEファンドで経験を積むからこそ得られる選択肢の広さですね。
有難う御座いました。