皆川さんが、PEでの仕事を望んだ理由、
とりわけCLSAを選んだ理由について教えてください。
【皆川】監査法人での仕事や、投資銀行業務などを経験していく中で感じていたのが「自分自身がバッターボックスに立っていない」感覚でした。もっと事業に直接触れられるような立ち位置、役割を担いたいという気持ちが高まる中で、PEファンドという存在に関心を深めていきました。私流の解釈でいえば、金融と事業会社の中間のようなポジションにいるのがPE。「ここならば自分がバッターボックスに立てる」と思ったのです。
ではなぜCLSAだったのかといえば、メンバーに会ってみてヒエラルキーのないフラットな組織だということがわかった点や、自由闊達に言いたいことを言える環境がある点に魅力を感じました。さらに中堅企業に特化したサンライズ・キャピタルは、大企業を対象にレバレッジを活用した、いわゆる"金融プレイ"をするのではなく、中堅企業の事業に対して真正面から向き合った、ハンズオンでの事業価値向上を一つのテーマにしている点にも興味を持ちました。
ハンズオンで企業経営にも深く関わる、という部分でいえば、皆川さんは2013年から約1年に渡って投資先企業の社長をなさっていますが、そこで得た経験や価値について教えてください。
【皆川】中古車をBtoBでオークション取引していく事業を営むBCNという企業が埼玉県深谷市にあるのですが、私はこの投資先企業で社長業を経験することができました。
ファンドの人間が事業会社の経営者になる、といってもそのコミットの方法・深さは様々ですが、私がすごしたこの1年は完全にBCN社長としての1年であり、しっかりと事業会社のことを学ばせてもらう機会にもなりました。
ニッチで価値あるビジネスを展開しているこの企業には、いくつもの魅力があります。たとえば中古車を落札する企業の3〜4割が海外の事業者だという点です。日本の中堅企業が実はグローバルな可能性を備えていることを示す典型的な例だと言うこともできます。
ただし、投資当初は非常に苦労し、悩むこともしばしばでした。長年、事業に主体的に触れることを望んできたとはいえ、私は金融の世界にいた人間ですから、中古車取引というディープな業界のことを一から学習しなければいけませんでした。同じ日本人同士とはいえ、業界が違えば使う言語も違います。毎日のように膝詰めでコミュニケーションをして、少しずつ共通言語を増やしながら、わかり合える関係を作っていくところからのスタートでした。
しかし、苦労と同時に得難いものをたくさんもらい、成長することができました。たとえば理屈とは関係ないところで経験者が発揮する直感力がどれほど重要なのか。あるいは現場で働く人たち皆が納得して動けるようになるまでには、どのような時間軸で物事を決め、考え、伝えていかなければならないか。そういった事業会社の経営に必要となる様々な事柄を学ぶことができたのです。泥臭く、中堅企業の最前線の仕事にまで関わっていこうとするCLSAだからこそ手に入れることのできた貴重な体験だったと思っています。
皆川さんが考える「CLSAに向いている人。活躍する人」とは、どんな人物像なのでしょうか?
【皆川】「PEファンドって投資銀行に近い業界ですよね?」と言われることが時々あるのですが、私は「全く違うと思う」と答えます。もちろん投資先企業の成長を支え、牽引する、という役割だけ見れば似ているように思うかもしれませんが、PEファンドは投資銀行と違い、事業会社に寄り添って、その役割を発揮していく存在です。少なくともCLSAはそういう動き方をします。
「この企業はどこに成長のポテンシャルがあるのか。それを最大化するには何をしたらいいのか」ということをとことん突き詰めていきます。特に中堅の事業会社が持っているポテンシャルについて言えば、数字だけ追いかけていても見つけることは不可能です。日々のオペレーションや、そこで働く人たちのモチベーションや思いを肌で感じ取る中から、成長の可能性が見えてくるものなんです。
当然、投資先企業との関わり方は泥臭いものになっていきます。ですから、そういうプロセスを面白いと感じるメンタリティを持っていることが、まず最初に問われてくる資質なのだと思います。
CLSAが向き合っている中堅企業には「熱い想い」を胸に抱いている人が多数います。そういう人と膝詰めで話し合い、時には議論を交わし、理解を深めていくことになりますから、そのような熱い想いを持った方々に負けない、強くさらに熱い気持ちを持っている人が当社には向いているし、当社の持つ醍醐味を感じ取って活躍できるのだと思います。
もちろん、数字についてのプロでなければいけない側面もありますが、その場合も単なるテクニカルな知識の量だけでは有効ではありません。泥臭い経営に直結するのは、数字を直感的に捉え、事業に活かしていく感覚です。そういう意味も含めた「数字に対する鋭さ」と、先に申しあげた「強く熱い気持ち」、その両方を持っている人、もしくは持ちたいと強く欲している人というのがCLSAでは真価を発揮し、成長していくのだと考えています。
皆川さんご自身の今後について、思うところがあれば教えてください。
【皆川】一年間携わってきたBCNがソフトランディングの段階を迎えていますので、適切なタイミングで後任社長を立て、私自身は会長職のようなポジションから、経営者兼資本家として、BCNに関わっていくことになると思います。
私自身はこの案件のおかげで、PEプロフェッショナルとして、また人間として成長することができたと自負していますので、その成果を次なるディールに活かしていくことができたらいいな、と思っているところです。
プロフィール
清塚 徳 氏
マネージングディレクター(日本総責任者)
滋賀大学経済学部卒業
カリフォルニア大学バークレー校 ハース・スクール・オブ・ビジネス修了(MBA 経営学修士号取得)
大学卒業後、1985年より三菱銀行(現 三菱東京UFJ銀行)に入行。16年間の在籍期間の内約10年間に渡って、日本や東南アジア諸国でのM&Aアドバイザリー業務や、シンジケートローンアレンジ業務を担ってきた。2001年、カーライル・グループへ転じ、ディレクターとして主に消費財、ヘルスケア、化学、製造業等を中心とした企業のバイアウト投資に従事。そして2006年4月、CLSAキャピタルパートナーズジャパンに入社。中堅企業向けバイアウトファンド「サンライズ・キャピタル」の立ち上げに参画し、そのまま日本総責任者として企業活動全般の統括・指揮にあたっている。
中 俊二 氏
マネージングディレクター
上智大学経営学部卒
大学卒業後、1991 年より三井住友銀行に入行。様々な役割を経験した後、M&Aアドバイザリー業務、コマーシャルバンキング業務を担い、LBO、MBO、PIPEs及びエグジットなどなどプライベート・エクイティの幅広い分野のアドバイザーを務めた。2004年からは同じ三井住友フィナンシャルグループの大和証券SMBC(現 大和証券)に籍を移し、M&Aアドバイザリー業務を引き続き担当。そして2007年10月、CLSAキャピタルパートナーズジャパンに入社。トラステックスホールディングス及びエバーライフへの投資に関与。エバーライフにおいては投資期間中監査役を務めた。
皆川 亮一郎 氏
ディレクター
神戸大学経営学部卒
公認会計士
大学卒業後、1998年より新日本有限責任監査法人に入社。クライアント企業の会計監査や上場準備のコンサルティングに従事。2006年からは日興シティグループ証券(現 シティグループ証券)へ転じ、投資銀行部門においてMBOを含む各種M&A案件や株式公開等コーポレート・ファイナンスの案件を担った。そして2008年6月、CLSAキャピタルパートナーズジャパンに入社。日本インテグランドホールディングス及びBCNへの投資に関与。BCNでは代表取締役(現任)を務めている。
前田 泰典 氏
シニア バイス プレジデント
京都大学工学部卒
京都大学大学院工学研究科修了
大学院修了後、2004年より日興シティグループ証券(現 シティグループ証券)に入社。M&Aアドバイザリーや資本市場を活用した上場企業の各種資金調達・新規上場に従事。2009年からはKKRジャパンに転じ、日本における投資案件のオリジネーション及び投資先のモニタリングを担った。そして2011年4月、CLSAキャピタルパートナーズジャパンに入社。エバーライフ及びBCNへの投資に関与。エバーライフにおいては投資期間中取締役営業本部長を務めた。BCNでは取締役(現任)を務めている。
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