よりダイナミックな様相を呈し始めた日本企業のM&A。
その新しい動きにも対応する戦略集団がディールズストラテジー
「M&Aと積極的に向き合う動きは、日本企業の間でここ数年の内に加速してきましたが、そこに今、さらなる変化が訪れています」
こう語るのは、誕生して間もないPwCアドバイザリー合同会社にて、ディールズストラテジーのチームをリードする青木義則氏。
これまでにもプライスウォーターハウスクーパースのパートナーとして、数々のコンサルティング・イシューやM&Aディールを手がけてきた人物であり、日本におけるM&Aの位置づけやその変遷、企業サイドの思惑等々を肌で感じ取ってきた存在だ。では、そんな青木氏が指摘する新たな「変化」とは何なのか?
「これまで、多くの企業がM&Aを通じて解決しようとしていた経営課題の多くは、主に2つのタイプに分かれていました。1つはアジアをはじめとする成長著しいマーケットに出て行き、そこで成果を得ていくためのM&A。もう1つは、国内マーケットにおいて既存事業の強化や新規事業の立ち上げ等、自社の事業をより強固なものにするためのM&Aです。
しかし今、これらとは異なる思惑を持ってM&Aと向き合おうとしている企業が出てきています。その代表例が、M&Aによる業界再編への挑戦です」
これまでにも、国内のいくつかの業界においては、業界再編の必要性が叫ばれつつも、実際に状況が大きく動くことは少なかった。しかし、ここにきて、小売、エネルギー、電機などをはじめとし、大型の業界再編案件がいくつも動き出している。これまでは考えられなかったような企業(又はその一部の事業)が売りに出たり、再編後を睨んでアグレッシブに仕掛けたりといったことが起こっている。
そう語った青木氏は、これらを「今までにないほどダイナミックな動きになっている」と説明する。そして、PwCアドバイザリーのディールズストラテジーは、このようなチャレンジングなM&Aにも対応していこうとしているのだという。
「PwC Japanはこれまでにも、メンバーファームがそれぞれの強みを活かし、連携をして、クライアントの目指す戦略の実行や、成果の獲得を支援してきました。2016年に大幅な組織再編を行いましたけれども、もちろんこの姿勢は変わりません。むしろ、今まで以上にお客様へ貢献するべく実行した組織再編だったわけです。
PwCには、Strategy&(旧ブーズアンドカンパニー)という戦略チームもありますが、我々ディールズストラテジーはM&Aディールに関連する戦略イシューと向き合っていくことになります。先ほど述べたような業界再編だけでなく、M&Aを必要とするような非連続な成長にチャレンジしていくような戦略テーマについては、主に我々が携わっていくことになります」
青木氏によれば、以上のような境界線はあくまでも原則論。クライアントサイドの諸事情や、目指す効果によってケース・バイ・ケースで柔軟に役割分担していくことになるだろう、と補足するものの、「よりチャレンジング」なディール・メイクを問われる集団がディールズストラテジーだという位置づけは明快。
「お客様からの具体的な要望を受けて、専門性を発揮するような局面はもちろん多くなりますが、基本的な姿勢としては『待ち』ではなく『攻め』。ノンオーガニックな領域で新規事業を打ち立て、確立していくようなM&Aディールを『自ら創る』局面も、今後はどんどん増えていくでしょう」
最上流のディール・メイクからトランザクションまで。
一気通貫で関わっていく専門家集団
2015年、PwCはグローバルでの取り扱いM&A件数でナンバー1、国内ではクロスボーダー案件数でナンバー1となった。(CY2015 THOMSONリーグテーブルより)世界157ヵ国に及ぶグローバルネットワークで20万人以上のスタッフが従事するという圧倒的な強みが、M&Aにおいても実績を生み出している。
今後ディールズストラテジーのメンバーは、この強みを背景にしながら、新しいM&Aの潮流にも対応していくことになる。現在いる約40名のメンバーのバックボーンも幅広い。戦略ファーム出身者、投資銀行出身者、事業会社出身者らが肩を並べているという。
「たとえば、先ほど申し上げたようにチャレンジングなM&Aに取り組もうとしているお客様がいれば、経営層の方々と正面から向き合い、最上流の戦略について議論をしていかなければいけません。それを通じて新たなリレーションシップを築き上げていくのも我々のミッション。しかし、それだけでは非常にチャレンジングなM&Aを成功させることはできません。
デューデリジェンス(以下、DD)のフェイズでは、PwCがネットワークに持つ専門部隊とも連携していくことになりますが、我々もまたビジネスDDなどにおいて、事業目線における専門性を発揮していきます。最終的にトランザクションに至るところまで、すべてのプロセスに関わり続ける集団ですから『戦略×ファイナンス』の知見は必須となります。
だからこそ、チーム内にも様々なバックボーンの持ち主が必要だった。異なる専門性の持ち主たちが緊密に連携し、互いに刺激や成長を促しながら成果に結びつけていく集団。それがディールズストラテジーということです」
ディールズストラテジーのこうした特徴をまさに体現しているのが青木氏自身。もともとは技術領域の開発者としてスキルを磨き、その後、戦略ファームで経営やビジネスのリアルな実態と向き合い、さらに投資会社へ転じてマネーや数字のプロフェッショナルとしても活躍した経歴の持ち主なのだ。
「M&Aの成功のためには、多様な面でリアリティのある力が必要になる」と語る青木氏だが、その言葉にリアルな説得力を感じるのも当然だといえるだろう。
「これまで、研究開発からスタートして、戦略コンサル、投資業と、ずいぶん畑違いの最前線を通り抜けてきた気がします(笑)。ディールズストラテジーでは、異なるバックボーンやキャリアの持ち主がチームで動くことによって、独自の力を蓄えていければと思っています。
ただ、私自身はこれまでにいろいろな場所から、いろいろな視点で案件と向き合ってきましたから、その経験をフルに活かして、今までになかったような新しいディールに挑んでみたいと考えていました。ですから、このチームは私自身にとっても、非常にモチベーションの上がる存在なんです」
国を超え、専門領域も超えていく新しいチーム。
それをともに形作る喜びを皆でシェアしていきたい
では、ディールズストラテジーが新たなメンバーとして迎え入れたい人材とは、どのような能力や資質の持ち主なのだろうか?
「繰り返しになりますが、まずは戦略のプロフェッショナルとしてのバックボーン、あるいはM&Aに携わってきたバックボーン、この2つの内いずれかを備えている人に期待したいですね。ただし、強調をしておきたいのは既存の知見を発揮するだけでは終わりたくない、と考えてくれるような人に参画してほしいのです。
企業の成長にとって有効な戦略の策定手法も、M&Aを成功へと結びつけるためのノウハウも、繰り返し使っていく間に必ずコモディティ化します。もちろん、成熟した知識やスキルやノウハウが活かせる場面は数多くあるでしょうけれども、最初に申し上げたように我々ディールズストラテジーは、よりアグレッシブなお客様の期待に応えていける集団にならなければいけない。
既存の手法、ありきたりなノウハウだけでは解決できない課題も必ず登場します。そんな局面で、むしろモチベーションを上げ、今まで誰もしたことがなかったようなアプローチに果敢にチャレンジしていきたい、と望んでいるかどうかが問われるわけです」
一方、先述の通り、PwCはクロスボーダー案件においても圧倒的な強みを示している。ディールズストラテジーに対しても、クライアントの多くはクロスボーダーでの成功をも期待しているという。他方で、PwCの総合力に期待するクライアントも多い。
ノンオーガニックで新規事業に打って出る時には、国境だけでなく業種の境界を超える力にも期待するとのこと。自身の専門領域に固執せず、既存の手法に依存せず、国や業種の壁も越えていこうとする意欲の持ち主。青木氏はそれを何より強く望んでいるのだ。
「幸いなことにPwCには、ありとあらゆる専門領域・業界のエキスパートがいます。そして、クロスボーダーにおいても、アジアのみならず欧州や北米、南米など世界中で成果を上げてきたプロフェッショナルも揃っています。
いざディールが立ち上がるとなれば、こうした人たちとともにプロジェクトを組み、連携して、自らを成長させていくことができます。現状は40名程度の小さな世帯ですが、PwCだけが持つスケールメリットを大いに活用できるのですから、思う存分チャレンジをして、成長を実現してほしいと思っています」
不可欠となるのは、先に示したような意欲とともに、自分とは専門性が異なるプロフェッショナルに対する「相互尊敬(mutual respect)」のマインドだと青木氏は言う。それさえあれば、他では手にできない成長を短期間の内に獲得できるというわけだ。
青木氏は最後に「もう1つ強調しておきたいことがある」という。それは自分たちで組織とチームを形成し、確立していく喜びだという。
「PwC Japanの組織再編があり、ディールズストラテジーは、2016年から新しいチームとして再スタートします。多様な人材が集まっているということは、イコール多様な価値観の持ち主の集合体でもある。それでも我々は1つのチームとして理念や価値観や姿勢を共有していくことになります。
お客様とともにM&Aを成功に導き、新たな組織や事業を打ち立てることをミッションとしながら、自分たちの組織もまた自ら確立していくことができる。それが今というタイミングです。この絶好のチャンスを活かしてやろうという意欲の持ち主が参画してくれることを、私たちは期待しています」
プロフィール
青木 義則 氏
PwCアドバイザリー合同会社 ディールズ ストラテジー
パートナー
大学院修了後、IBM東京基礎研究所に入所。ソフトウェア技術の研究開発を担った後、技術をビジネスに活かすための知見を求めて外資系戦略コンサルティングファームへ転じ、多様な案件に携わった。その後は、独立系投資会社に入社し、今度は投資家の視点からビジネスと向き合う経験を得た上で、プライスウォーターハウスクーパースへ。独特のキャリア形成で獲得した幅広い知見を活かし、M&A戦略、事業戦略、成長戦略、企業再生からオペレーション改革、R&D改革に至る多様なプロジェクトを率いてきた。PwCアドバイザリー合同会社ディールズストラテジーには、起ち上げ時からパートナーとして参画している。
菅田 一基 氏
PwCアドバイザリー合同会社 ディールズ ストラテジー
シニアマネージャー
大学院修了後、大手米系コンサルティング会社の戦略グループに参画。在籍期間中に多数の事業戦略策定やクロスボーダーM&A案件などに携わった後、M&A関連領域の知見を極めるべく金融機関に入行。その後、欧州系コンサルティング会社にて英国やドイツなどのグローバル案件等を担当し、プライスウォーターハウスクーパース入社。幅広い業種と向き合い、多くのM&A案件に携わってきた。そしてPwCアドバイザリー合同会社ディールズストラテジー設立にともない、起ち上げメンバーの1人として参画した。
この企業へのインタビュー一覧
- [コンサルティングファーム パートナーインタビュー]
- 【事業再生サービス(BRS)】ディレクター 鵜澤 覚 氏 / ディレクター 齋藤 良司 氏 【ディールズ ストラテジー】ディレクター 松田 克信 氏 / ディレクター 大屋 直洋 氏 / マネージャー 長谷山 京佑 氏
(2018.4) - [注目ファームのコンサルタントインタビュー ]
- プライスウォーターハウスクーパース株式会社 パートナー テクノロジープラクティスリーダー 松崎 真樹 氏 テクノロジーグループ/サイバーセキュリティセンター パートナー 山本 直樹 氏 戦略コンサルティンググループ パートナー/戦略コンサルティングリーダー 新興国展開戦略支援室長 坂野 俊哉 氏 戦略コンサルティンググループ パートナー 小田原 一史 氏
(2015.3)
注目ファームの現職コンサルタントインタビューの最新記事
- デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(モニター デロイト) | アソシエイトディレクター 藤井 麻野 氏 / マネジャー 加藤 彰 氏 / スペシャリストリード(サステナビリティ) 山田 太雲 氏(2021.4)
- デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(モニター デロイト) | デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/執行役員 モニター デロイト M&A/Reorganization 汐谷 俊彦 氏 / デロイト トーマツ コンサルティング シニアコンサルタント モニター デロイト M&A/Reorganization 平野 樹 氏(2021.2)
- ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド | マネージャー 宮沢 悠介 氏 / コンサルタント 箕浦 慶 氏(2020.5)
- 株式会社KPMG FAS | 執行役員 パートナー ディールアドバイザリー 伊藤 勇次 氏 / ディレクター ディールアドバイザリー 名畑 志帆 氏(2020.3)
- EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(旧:EYトランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社) | EYパルテノン パートナー 小林 暢子 氏 / オペレーショナル リストラクチャリング(OR) ディレクター 中山 貴司 氏 / バリュエーション、モデリング アンド エコノミクス(VME) マネジャー 奥山 浩平 氏(2019.8)