今年も残るところあと2週間となりました。2015年のPEファンド業界は大変な盛り上がりで、案件数は過去5年間で最高数を記録しそうです。
特に事業承継案件が目立った1年だったと思います。2016年もこの勢いで、案件が増え、業界全体が盛り上がっていくといいですね。
さて、先日公開した「第2回 PEファンドの実態 ~ファンドマネージャーに聞いた5つの質問~」の後篇を公開致します。是非ご一読下さい。(前編はこちら)
お話は引き続き、独立系PEファンドでVPとして活躍される戦略コンサルティングファーム出身のBさんに伺っております。
Q4コンサルティングファームとPEの業務の違いはなんですか?
【INQ佐竹】PE業界に興味があるが、踏み出せない方々も多くいらっしゃいます。理由を聞くと、現職との違いについてイメージが湧かないためと返答されることが多いです。先程の話しですと、コンサルティングファームでのオペレーション系のプロジェクトや実行支援型のコンサルティングファームと大きく違わないように思いますが、如何でしょうか?
【Bさん】まずは、PEファンドの業務がどういったフェーズに分けられるかから整理したいと思います。PEファンドでは、投資、バリューアップ、Exitの大きく3つフェーズがあり、先程ご説明差し上げたのは、バリューアップの部分の更に1パーツにしかすぎません。
そのため、まずは投資のフェーズ、Exitのフェーズは、コンサルティングファームでは体験できない新しい業務です。
またバリューアップでの業務に関してご説明するとPLの改善は、1つの要素にしかすぎません。PEファンドはプロデューサー業が主なので、外部の専門家にお任せした方が良い事はアウトソースします。もちろん私たち自身が行う事もありますが、全体設計を行い、意思決定をするのが主な役割なのです。ただ、仰る通りパーツ毎には、コンサルティングファームと同じ業務をやる事もあります。
【INQ佐竹】PEファンドの仕事は総合格闘技などとも言いますが、プロデューサー業というのは分かりやすい表現ですね。それ以外にも違いはありますか?
【Bさん】先程申し上げたのは具体的な業務範囲の違いですが、立ち位置もコンサルティングファームとは大きく異なります。言葉だけではなく、PEファンドはオーナーの立場、かつ経営者の視点で物事を見ていかなければならないという事です。
具体的には、PEファンドは投資ストーリーを描いて、投資を行います。対象会社がどのように、成長していきどういう出口に持って行くかというストーリーです。そのストーリーに沿って、文字通りその会社を背負ってコミットしてやっていきます。もちろん上手くいかない事も有りますので、その際にはどうすればリカバリーできるかを考え実行していく事も求められます。
コンサルティングファームは、あくまでもアドバイザーという立場で、比較的短い時限性が存在します。PEファンドも時限性は存在しますが4~5年と長く、対象会社を売却するまで付き合う事になります。
ビジネスモデルとしてもそうですよね。コンサルティングファームはプロジェクトを受注する事で報酬を得ますが、PEファンドはリターンを創出しないと報酬は得られません。
【INQ佐竹】業務と、立場と両方違うという事ですね。話はそれてしまいますが、出口を考えるという点では短期的な施策に走るのではないかという疑問もあると思いますが、その点は如何でしょうか?
【Bさん】その点は無きにしも非ずでしょう。ただ1つ言える事は、我々ファンドマネージャーは、「対象会社の本質的な価値は何か」を突き詰めて考えているという事です。つまり、近視眼的な施策、例えば無理なコストカットや人員削減ばかり行い、表面上のPL改善を行う事は考えていないという事です。
まず私たちは対象会社を5年間は保有するという前提で買収し、加えて、次のオーナーがフィナンシャルバイヤーであれば少なくともその後5年、ストラテジックバイヤーであればその後継続的に成長するストーリーが描けなければ、良い価格での売却ができません。
そのため、対象会社が私たちの手を離れても成長できるよう、短期的な施策ばかり行うという事はありません。
【INQ佐竹】投資対象の会社と長い期間一緒するからこその辛い点等はありますか?
【Bさん】先程申し上げた通り、コミットするという点ですね。コミットするという事は、逃げられないという事でもあります。プロジェクトも長いですし、チームメンバーも変わりません。
上手くいっているプロジェクトであれば良いのですが、そんな案件ばっかりではないです。状況が悪い案件も終わりが見えない中、ずっとやり続ける。これは大変つらい事です。コンサルティングファームだと、面白くない案件でも終わりが見えているので頑張れるという事もあると思いますが、PEファンドだとそうもいかない事もあります。
また、どうしてもPEファンドのプロジェクトは長いので、ゆるくなってしまう部分はあります。コンサルティングファームは短距離を数多くやるイメージで常に全力疾走ですが、PEファンドの投資はマラソン的で途中ペース配分してしまう所も出てきてしまいます。
Q5面接官としてどういったポイントで候補者を見ていますか?
【INQ佐竹】Bさんは、現職の採用で面接官もされていると思います。候補者をどのように見ているかについて、伺えますか?
【Bさん】私はスキルセット等も見ますが、ファンドマネージャーとして活躍できる人かどうかというポイントを重要視しています。その人が、将来的に案件リーダーとして投資案件を実現できる人になるかどうかという事です。
もう少し具体的に落とし込むと3つのポイントを面接で見ています。
1つ目は、頭の良さ、スマートさ
2つ目は、プロアクティブさ、行動力
3つ目は、人柄、人格
というポイントです。
【INQ佐竹】それぞれについて、もう少し詳しく教えて頂けますか?
【Bさん】1つ目は、案件リーダーとして対象企業の本質的価値を見極められるファンドマネージャーになれる素質があるかという観点で見ています。地頭や投資センスといった所でしょうか。
2つ目は、周りを巻き込んで、難しい事でも諦めずにトライしていけるかという観点です。ファンドマネージャーは投資時も投資後も多くのハードルを自ら超えていく必要があります。そのような業務を本当にやり切れるのか、その素養があるかという点です。
3つ目は、オーナーや対象会社の社員の皆さんと円滑にコミュニケーションを取れるか、そして信頼関係を築いていける人間力があるかという観点です。
【INQ佐竹】そうなんですね。通常の面接のQAで見極めていくのでしょうか?
【Bさん】その方が今までどういったキャリアをどう考え歩んできたのか、そこで何を実現して何を学んできたか、そしてなぜこのタイミングでPEを志望するのかという一連の話しを聞くと、だいたい見えてきますね。
通常のQA以外では、簡単なケースを行ったりもします。四季報を持ってきて、投資したい会社を選んでもらい、なんで投資をしたいかを話してもらう。
論理的な思考能力を見る事も出来ますし、投資センスがあるかなんかもある程度分かります。
【INQ佐竹】Bさん今回は長時間、大変興味深い話を頂きありがとうございました。最後にPEファンド業界を志望する方々に一言メッセージをお願い致します。
【Bさん】PEファンドの仕事は、様々な経験ができ、様々なスキルが身に着けられる面白い仕事だと思いますので、共感された方がいらっしゃればぜひご志望頂ければ幸いです。
※「PEファンドの実態 ~ファンドマネージャーに聞いた5つの質問~」は今後も不定期でお送りする予定です。「こういった話を聞きたい」というリクエストがございましたら、遠慮なくご連絡下さい。
(佐竹)
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