こんにちは。キャリアインキュベーションの佐竹です。
今年に入り、CITIC Capitalの日本代表である中野様、KKRの日本代表である平野様とお食事をご一緒する機会がございました。
御二方ともに大変聡明かつ魅力的なお方で、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
今後の2社の動向には注目していきたいと思います。
さて、今回は「第3回 PEファンドの実態 ~ファンドマネージャーに聞いた5つの質問~」の前編をお送りいたします。
今回は、外資系PEファンドでVPとして活躍されている、戦略コンサルティングファーム出身のCさんにお話を伺いました。
ラージキャップの外資PEの面白みや、投資先との関与の仕方について、実体験に基づきいろいろとお話頂きましたので、是非参考にしてください。
Q1.なぜPEへ転職したのでしょうか?
【INQ佐竹】Cさん今日は宜しくお願い致します。まずはCさんのプロフィールからお話頂けますでしょうか。
【Cさん】東京大学の法学部を卒業し、米系のコンサルティングファームに新卒で入社しました。
その後、MBA留学をしたのですが、その際にインターンを行ったのがきっかけで現在のファンドに入社しました。
入社時はシニアアソシエイトとして入社し、3年間経験を積んだ後、VPにプロモーションしています。
【INQ佐竹】ありがとうございます。インターン経由という事ですが、なぜPEでインターンをされたのでしょうか?また、PEへの転職の決め手は何でしょうか?
【Cさん】私は、将来的にはPEで働きたいと考えていましたので、職業体験的なノリでインターンに応募しました。
私のキャリア選択について時系列にお話ししますと、私は学生時代には、100人ほどからなる体育会系組織で、チームスポーツをやっていたのですが、その頃から、強い組織(チーム)はどうやったら作れるのかという事を考えていました。それを効率的に学べそうなのはどこかなと考え選んだのが、1社目のコンサルティングファームでした。
コンサルティングファームでの仕事は、知的好奇心が満たされ、凄く面白かったです。もちろん大きな学びも沢山ありました。特に面白いなと思ったプロジェクトは、3ヶ月とかの戦略プロジェクトではなく、1年とか時間をかけてどっぷりクライアントに入り込んでやるプロジェクトでした。
所謂、営業現場の生産性向上・行動改革プロジェクトや全社ターンアラウンドプロジェクトで、経営トップだけでなく、現場の方とも密にコミュニケーションしながら、高い目標に向かって一緒に走り、それを達成するのは非常にやりがいがありました。達成感のみならず、実際にクライアントの方の目が変わっていく、というのを間近で見られたのが楽しかったんですね。
一方で、良く言う話ですが、コンサルティンファームだと時限性があるし、どうやっても外部の第三者であるという事は覆せませんでした。そこで、将来的には実際に企業側に回って経営をして変革をリードしたいと考えたのですね。
ただ、事業会社に転職すると、経営に関与できるポジションになるまで時間がかかってしまう。その点、PEファンドであれば、事業会社ではないのですが、コンサルよりは経営の現場に近い立場でかかわれるし、比較的若くても経営陣と議論しリードできる、と考え将来的にPEへの転職を考えていました。
そうこう考えている間に、MBA留学が決まりました。ご存知の通り、ビジネススクールには長い夏休みがありますので、その期間のインターンは良い職業体験の機会だと思い、日本のPEファンドの知り合いやホームページからインターンの採用有無について問い合わせました。
インターンはしたものの、正直なところ、ビジネススクール卒業後には前職に戻ろうとも考えていました。社費だったので、金銭的な面も有りましたしね。コンサルティングファームでの仕事にやりがいも感じていましたし、もう少しコンサルで経営を学んで、かつ少しシニアになってからPEに転職した方が、投資先の経営陣とのコミュニケーションという意味でもよいだろうと思っていました。
ですので、フルタイムで働かないかと言われたときは相当迷いました。しかし、インターン時の仕事内容も非常に面白かったですし、一緒に働くメンバーもとても働きやすく、また尊敬できる人たちであったこと、また、たまたま、私がインターンしていた時のディールでうまく投資できたので、これも何かの縁かな、と思いまして入社を決意しました。
【INQ佐竹】そうなんですね。日本のPEはあまりインターンも積極的に受け入れておらず、それこそ縁が重要ですね。インターンをして実際にはどうでしたか?
【Cさん】仰る通りですね。当時インターンの受け入れをしていたのは、3社のみだったと思います。20社くらいにはコンタクトしたのですが。そこでの縁は結構重要ですね。
インターンはとても楽しく、エキサイティングでした。
コンサルティングファームの時と比較すると、「ドライビングシートに座っている感」をより強く感じました。そう感じることができたのは、株主という立場ですので、コンサルよりも意思決定により大きな影響を及ぼすことができ、提案が実行に移る確度があがり、またタイムラグが少なくなったからだと思います。
もちろん、株主が言っているのだから、経営陣が従うということでは全くありませんし、そういう考え方は間違っていると思います。経営は経営陣に委託していますので、基本は経営陣に任せます。ただ、企業価値向上に資することであれば、提案し、よく議論し、それが正しそうだとなれば、経営陣が受け入れて実行に移してくれます。株主として経営陣と同じリスクを負っていることで、コンサルティングファームで働いていた時よりも提案を受け入れてもらいやすいなと感じました。
特に私は本当に巡り合わせが良く、一緒に働くPEのメンバーもとても相性が良かった。この考えは今も変わっていません。タイミング良く、インターンをしていた時の案件が、実際に投資につながったので、本当に縁だと思います。
【INQ佐竹】そうなんですね。他を比較せずに、よく決断ができましたね。
【Cさん】前職のコンサルティングファームから転職をする人を見ていると、外資、日系の大手をいくつか回って最終的にビックネームに行く人が多いですね。
そういった迷いがなかったかと聞かれると、ないわけではなかったのですが、ファームの名前で選ぶより、働きたいと思える人達と働く方が重要だなと考えました。
他ファームの人とは働いていないので、分からない部分は多くありますが、どのみち面接だけでは判断できないでしょうしね。
Q2. 転職時にPEを選ぶ軸はありますか?
【INQ佐竹】インターンを経由してPEに入ったCさんですが、ご自身の経験を踏まえ、PEを選ぶ軸、考え方等を候補者の人にアドバイス頂きたいと思います。如何でしょうか。
【Cさん】アドバイスというほどの事でもないと思いますが、1にも2にも働く人との相性だと思います。一部のファンドを除いて、PEは割と小さな組織です。また一部の大きなファンドといっても日本のメンバー20~30人規模だと思います。毎日顔を合わせますし、仕事をする人を選べないと思った方がいいでしょう。「一緒に仕事をしたいと思えるか?」とか、「成長できそうか?」とか、メンバーを見て自分のフィットも考えた方が良いと思います。
【INQ佐竹】ファンド側も選考ではその辺りをチェックされていますよね。それ以外にも外部から見て選択のポイントはありますか?
【Cさん】そうですね。ミッド・スモールキャップかラージキャップか、というのは働き方が変わってくるので一つの選択のポイントになると思います。また、外資か日系という軸もあるかと思います。
ミッド・スモールキャップかラージキャップという点では、日本のマーケットではやはりミッド・スモールキャップがターゲットとするサイズの案件が圧倒的に多いです。そのため、ディールの数を経験したいという方はミッド・スモールキャップが良いのではないでしょうか。案件の自由度も高いと思うので、ハンターとして、ディールを取ってくる、ディールを作る事に興味が強ければミッド・スモールキャップが向いていると思います。
一方、ラージキャップの案件は、全てとは言いませんが、基本オークションになります。相対の案件もなくはないのですが、ラージキャップがターゲットとするようなサイズになると、売主は手間のかかるオークションプロセスを行ってでも高く売りたい、またオークションプロセスを行う手間に対応できるリソースを持っていることが多いからです。
ですので、買う側としては、多少高いエントリーでも、Exitを高くできるならやるという感覚がラージキャップには必要で、投資後のバリューアップがキーになると思っています。
外資か日系かという点に関しては、日系で働いた事が無いので、イメージ論になってしまいますが、外資系ファンドであれば、海外の投資先も多く、海外の投資委員会とのやり取りも発生します。良い点としては、ポートフォリオ同士のシナジー追及等を含めた海外展開サポート等で有利な点があると感じます。ネガティブな点としては、日系と比べて意思決定に時間がかかったり、翻訳等の手間はかかるのかなと思います。それでも、私はグローバルとのつながりを持っておきたかったので、外資系にしました。
PEでも今まで述べたように、働き方や、ディールへのアプローチが異なりますので、PEに入って何がやりたいのかを整理して、それはどこが一番フィットするのかを考えた方が良いと思います。とにかくディールがしたいのか、少ないディール数でも経営陣と密にコミュニケーションしながらバリューアップをやっていきたいのか、を整理する事をお勧めします。
Q3.アソシエイトとVPの仕事には違いはありますか?
【INQ佐竹】色々と細かい点までありがとうございます。それでは、次の質問に移りたいと思います。
PEの中での業務区分についてです。PEは大きくアソシエイト等のジュニア層、VP、ディレクターのミドル層、MD等のシニア層に分けられると思います。Cさんはジュニアとミドルを両方経験していらっしゃるので、それぞれの違いについてお教え頂けますでしょうか。
【Cさん】ざっくり申し上げると、ミドル層は案件のマネージャーとしてジュニアや外部を活用して、またシニアもうまく巻き込んでプロジェクトを回します。ディールの段階でも、投資後のモニタリングフェーズでもそれは同じです。売り手や、投資先とのコミュニケーションにおいてもリードを取ります。
ジュニアは、そのミドルの下、責任をより絞って働くのが基本です。投資前の段階であれば、プロジェクト全体を回すというよりは、モデルにフォーカスしたり、投資後であれば財務関連のモニタリングにフォーカスしたりするイメージでしょうか。しかしながら、うちのファンドもそうですが、おそらく多くのファンドで人数がたくさんいるわけではないので、ジュニアもミドルのような仕事をすることは多々ありますし、堅い制限があるわけではありません。
ですので、ジュニアではいっても、プロアクティブにプロジェクト全体に関してアイデアを出していった方が良いと思いますね。その方がミドル、シニアも助かりますし、なによりもジュニアの人にとってその方が楽しいし、早く成長すると思いますし。
【INQ佐竹】アソシエイトと比較すると、案件の中心的役割で、案件を進めていく事が求められるんですね。質問とはずれてしまいますが、ポートフォリオカンパニーとの関わり方に関して、もう少し詳しくお話頂けますか?
【Cさん】うちのファンドは、結構柔軟なので、投資先によって関わり方はだいぶ変わります。
例えば、以前投資していたB2Bサービスの会社では、既存事業の成長という観点では、創業社長が力強くリードして、結果もでていたため、我々はほとんど口を出しませんでした。むしろ、邪魔したくないという感じでした。ただ、創業オーナー社長が引っ張ってきた組織だったので、管理面ではいろいろとサポートしました。加えて、やはり我々はM&Aのプロですので、追加買収は我々がリードして進めました。大きく下記3点についてイニシアチブを取って進めました。
[1]プロダクト別の粗利が出ていない状況だったので、月次管理の体制構築
[2]管理会計と財務会計の連動したパッケージを導入し、4大監査法人の監査を受けられる水準まで財務経理機能の高度化
[3]追加買収時の、M&AサポートとPMIサポート
【INQ佐竹】PEファンドの得意な経営管理体制の構築とM&Aでのロールアップ支援ですね。ビジネスそのものの支援は行わなかったのでしょうか。
【Cさん】はい、この会社は、大変優秀なリーダーがいたため、その方にビジネス面はお任せいたしました。結果も出ていましたので。
一方、今私がメインで担当している会社は、投資直前に事業環境が大きくかわったこともあり、トップラインの成長も含めてサポートしています。外部コンサルも巻き込みながら、成長戦略を描き、具体的なアクションにまで落とし込んで、それをモニタリングするKPIも一緒に作り込んでいます。さらに、ファンドのネットワークを活用して、潜在顧客のトップとのミーティングをセットしたりもしていますので、ビジネスの成長にもかなりかかわっています。
投資先のニーズや課題に応じ臨機応変に支援内容は変わります。私たちのファンドの考え方としても、投資をしたからこういったパッケージでやりますよというのは無く、個社ごとに一緒に作り上げていくという形ですね。
(後編に続く)
※「PEファンドの実態 ~ファンドマネージャーに聞いた5つの質問~」は今後も不定期でお送りする予定です。「こういった話を聞きたい」というリクエストがございましたら、遠慮なくご連絡下さい。
(佐竹)
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