こんにちは。キャリアインキュベーションの佐竹です。
今回は「第4回 PEファンドの実態 ~ファンドマネージャーに聞いた5つの質問~」の後編をお送りいたします。
キャプティブ系のPEファンド(バイアウトファンド)でアソシエイトとして活躍されている、FAS系ファーム出身のDさんです。大変参考になる内容だと思いますので、是非ご一読ください。
(前編はこちら)
「第4回 PEファンドの実態 ~ファンドマネージャーに聞いた5つの質問~」 ~後編~
Q3. 他PE(PE間)と比べての違いは何かありますか?
【INQ佐竹】それではちょっと切り口を変えてお話を伺いたいと思います。
Dさんは所謂金融機関系のPEファンドに所属していらっしゃいますが、金融機関系ならではの特徴、他PEとの違いを感じる事はありますでしょうか。
【Dさん】大きな違いというか特徴は、オリジネーションの違いですね。
弊社は大手金融機関系のため、系列の銀行からは絶え間なく案件の紹介が来ます。もちろん実際に投資をするかどうかは別問題ですが、常に投資の検討は行っており、ネタに困る事はないです。
【INQ佐竹】各ファンドがソーシングに苦戦するなか、凄いお話ですね。それはなぜ実現できているのでしょうか。
【Dさん】そうですね。組織的に体制、制度が整っているというのが大きなポイントです。
例えば、弊社に案件を相談し、それが実際に実現すると支店の融資担当の方にはインセンティブがでる仕組みになっています。そのため支店担当者としては、可能性がありそうであればまずは弊社に相談してみるという流れができています。
逆に、こちらからリストを作って、支店担当から繋いでもらうという事もできます。銀行の取引先であれば、基本的にはどこでもあえるので、アプローチは楽です。
【INQ佐竹】流石ですね。大手ならではの強みですね。
【Dさん】一方で、社風とか風土は親会社の影響を受ける事は間違いないです。正直金融機関系なので、お堅い風土はあります。(笑)
最初は、こんなに書類にハンコが必要なのかとびっくりしましたね。慣れの問題ですけどね。
ちなみに、投資意思決定への関与は全くありません。そこは独立して運営されています。弊社のファンドは外部機関投資家からもお金をお預かりしているので、そこは独立していないといけませんからね。
ただ、レバレッジドファイナンスは系列銀行に声を掛けないといけません。
Q4. PEと前職での業務の違いは?また実際の労働時間はでどうでしょうか?
【INQ佐竹】次の質問に移りたいと思います。Dさんは、前職ではFASの再生チームで働いていたと思いますが、その時との違いは何かありますか?また日々はどういった業務を行っているのでしょうか?
【Dさん】FASの再生チームと言っても、私は殆ど支援先に常駐しており、あまり参考にならないと思いますので、日々どういった業務を行っているかをご説明します。
仕事を大きく分けると2つになります。一つ目は、新規の案件を取りに行く業務で、二つ目は、既存投資先の管理になります。
まず新規の案件を取りに行く業務についてです。先程お話した通り、銀行ルートが強みではあるのですが、こちらは長年弊社にいる方が顔も効きますので、ソーシングはお任せしています。もちろん、銀行等からの持ち込み案件の検討もやりますし、投資検討中の案件があれば、分析等、フェーズに応じた仕事を粛々とやっているイメージです。
それ以外の時間は、私の独自のバリューを出すために、ブティック系のM&Aファームとお付き合いをして、一緒にオリジネーションをやっています。ファンド担当の方がいらっしゃるので、そういった方々とリレーション作り、情報交換を密に行いながら、案件のネタを探す事をやっています。それから、地方の税理士事務所系のFAをやっているところとも上手くできないか模索しています。
後は、自分の担当している既存投資先のフェーズ、投資の状況に応じて支援を行っています。これは投資テーマや会社の状況、投資からどの程度時間が経っているか等によって異なり、定型化された業務ではないので、「これをやっています」というものはないです。
例えば今担当している先の1社は、資金繰りがあまり良くない状況です。(苦笑)そのため、私が入って、資金繰予測作成の仕組化、金融機関との交渉をおこなっています。
【INQ佐竹】ワークライフバランスに関しては如何でしょうか?
【Dさん】以前と比較しても思ったより良くなってないです。もっと楽になるかと思っていました。(笑)
お伝えの通り、絶え間なく案件の検討をしていますし、検討にあたりビジネスDDをはじめ、なんでも自分でやりますので、楽しいけど工数はかかりますね。正直、2つエクセキューションフェーズに入ったら回らないくらい忙しいです。
仕事の進め方にも慣れたのもあると思いますが、投資委員会が近づいてくると忙しくなりますが、それ以外は落ち着いていて、メリハリはあります。
具体的には、忙しい時期以外で終電を超える事はまずないですね。検討案件が無い時期なんかは、毎日18時に帰ったりすることもあります。
Q5. 投資銀行出身者がバリューアップ、コンサル出身者がエクセキューション(M&A)をすぐにできるようになるものでしょうか?
【INQ佐竹】それでは最後の質問に移らせて頂きます。
投資銀行出身者がバリューアップ、コンサル出身者がエクセキューション(M&A)をすぐにできるようになるものでしょうか?という質問です。この点Dさんはどのようにお考えでしょうか。
【Dさん】私は、FA的な仕事とコンサル的な仕事を両方やっていたので、どちらの立場からという事は難しいのですが、同僚などを見ていると、特に問題なくできるようになると思います。
ことミッドスモールキャップの投資では、バリューアップに関して、特異なスキルが必要という事はないと思います。物事をロジカルに整理できるかどうかが重要なポイントになります。基本的にFA系の方もPLの要素分解はできると思いますので、その応用になりますね。
ロジカルに考えて、解を出す事よりも、それをどうやって実行に移すのかという方が重要になる場面も多いと思います。特にオーナー企業の案件を担当するのであれば、所謂ソフトスキル、人柄の方が重要です。
投資先の従業員の皆さんを巻き込んで、実行する。解を出すよりも、どう進めるかがの方がよっぽど難しいと思いますよ。人間力が試されますからね。
一般論としては、スタッフ層であればM&Aエグゼキューションできる方の方が、業界的にははまりやすいと思います。
【INQ佐竹】Dさん詳しくご説明頂き、ありがとうございます。それでは最後に、候補者の皆様にメッセージをお願い致します。
【Dさん】PEファンドの仕事内容は、大変面白いと思います。オーナーや旧株主からしてみれば株を手放すという事は、もの凄い決断で、インパクトの大きな事です。売り手とコミュニケーションを取って、本当にその会社を良くできると思われないと話は進みません。その会社を良くするための仮説をぶつけて、また同時に自分という人間を売り込まないといけません。人間力を試される仕事です。
また、スキルセット的にも究極形態だと思います。M&Aのエグゼキューションもファイナンスもバリューアップも行います。色々なスキルを高次元で身に着けたいという考えがあれば申し分ない業界だと思いますので、皆さんの挑戦をお待ちしております。
(佐竹)
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