コアバリューを徹頭徹尾共有しつつ、"How"については多様性を重視
ここで1つ気になる点がある。先に梅澤氏は、A.T. カーニーがモノカルチャー化という落とし穴にはまっていないことを、強みの1つとして示した。価値観をグローバルに共有することと、モノカルチャーとは違うのだろうか?
「高い"志"を持って、クライアントに提供する価値に徹底して拘る、という意味では確かに統一されています。しかし、『価値観は共通でも、方法論は多様』というのがA.T. カーニーの強みです。クライアント企業を取り巻く状況、そしてその経営課題は会社によって異なります。問題の本質が異なれば、最適な解も当然ながら異なるのです。従って、コンサルタントがみな同じような発想しかできず、○○ウェイや○○メソッドといった特定の方法論に固執していては、真の問題解決はできません。それぞれの問題に最適な"How"を、その都度考え抜かねばならないのです」
「当然のことながら、A.T. カーニーも様々なテーマに関して、独自の方法論を開発し、活用しています。しかし、コンサルタントはそれらの適用を強制されるわけではなく、そうした"How"がいくつも収められたツールボックスを共有しているにすぎません。目の前の顧客企業の問題解決に、どんなツールをどのように使うかは、各プロジェクトチームの判断に委ねられています。そうした多様性を重んじるカルチャーが、A.T. カーニーには根付いています」と梅澤氏は言う。
それでは、「名実ともに日本におけるベスト・ファームとなる」ことを目指すA.T. カーニー・ジャパンは、現状の日本をどう見ているのだろうか。
日本企業の成長をさらに加速すべき時期が来ている
「'03年ごろまで日本企業の大部分は、『収益性の回復』というテーマを軸に経営改善に努めてきました。その結果として、収益性や資本効率を改善し、ようやく世界市場に再び打って出る入場券を手にするところまで復活してきました。しかし、日本企業がグローバル競争に再参入しようとしている間にも、世界の市場とコンペティターは、さらなる成長と進化を遂げています。つまり、『レースには復帰したけれど、ライバルはずっと先を走っている』ような状況。現状に安住するのではなく、今まで以上にアクセルを踏み込んで、追いつかなければいけない。では、どうすれば成長を大胆に加速していけるか。それが、クライアント企業と私たちの現在の大きなテーマになっています」
中長期でのグローバル市場における地位を大きく向上するために、「取り組みやすい市場」だけでなく「将来の大市場」に果敢に挑戦していく。純血主義を捨てて、M&Aも含めた非連続な成長を追求していく。同時に、これらを実現できる組織能力を構築していく。成長を加速する上で、これらが必要となる、と梅澤氏。
また、「"How"を作り込むことも大事な仕事だが、"What"をクライアントに提起することはさらに重要」と梅澤氏は言う。「リストラの時代には、What(=何をすべきか)はある程度明確でした。しかし、成長の時代になると、Whatの定義にクライアントも迷うようになります。私たちコンサルタントも、『クライアントから依頼された課題を解決する』にとどまらず、クライアント企業と一緒に『新たなアジェンダ、すなわち戦略課題を定義する』ことが重要です。そうした面での我々の付加価値も、今まで以上に高めていかなければいけないと考えています」
さらに、梅澤氏は基本に立ち返って指摘する。「経営の変革を行う主体はあくまでその企業自身」なのだと。経営コンサルタントは1つひとつの問題すべてを解くのが仕事ではない。そんなことは不可能だ、とも言う。「大切なのは、クライアントの『根本的な経営課題』の提示と解決にプロジェクトチームのエネルギーを集中し、最大のインパクトを実現することです。その目的に向かって顧客との共同プロジェクトを進めながら、関連する諸問題については、なるべく主体である企業が自分で解決できるようなケイパビリティの構築を支援していくのです。これが、コンサルタントの仕事の本質です」と梅澤氏は語った。
では最後に、A.T. カーニーが求めている人材像について聞いておこう。
「A.T. カーニーがコンサルタントに求める資質は4つです。経営視点、専門性、実行力、そして志です。すべてを高度に備えている人はそうそういないでしょう。私たちは日々、この4つの資質をさらに高めていこうと努力をしています。ですから、これらの資質を本気で高めたいと思い、努力を続けられるかどうか。つまり仕事における姿勢を何よりも重視しています。私たちと一緒に志をもって成長を目指していく姿勢があれば、Tangible Resultsを実現することはできます」
やはり大事なのは"志"あるいは"想い"というわけである。高い志が自分の中にあるかどうか、「Tangible Results」を本気で実現したいと思っているかどうか。それを再確認し、YESという答が出たならば、その人にとってA.T. カーニーこそが最も相応しい仕事の場だといえるだろう。
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